ページの先頭です。

ホーム >> 福祉専門職サポーターズ >> プロフェッショナルブログ
高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

医療は「地域完結型」へ向かうのか?

 去る2月12日、4月からの医療報酬の金額が発表されました。中央社会保険医療協議会が改定内容をまとめての発表でした。
 「超高齢・多死社会」をにらんだ内容がいくつも盛り込まれているのも、その背景には、2025年ごろには1年間に現在の1.3倍の154万人が死亡するからです。つまり、今のように約8割が病院で亡くなる状況が続けば、保険財政がパンクするからです。
 病気になれば、体調が悪くなれば、とにかく入院して面倒をみてもらう「病院完結型」となっているのを、地域(自宅)で診療する「地域(在宅)完結型」をめざす内容になっています。
 それを、朝日新聞は「時々、入院。ほぼ、在宅」という見出しをつけました。なるほど、言い得て妙です。
 
20140221_taka1.jpg

続きを読む

 今回の報酬改定をめぐって医療関係者、とくに在宅医療を積極的に行っている医師のみなさんのメーリングリストのなかで、喧々諤々の論争が起こっています。
 従来の診療所は「患者の通院」が前提です。しかし、90歳の寝たきりの患者に通院を強いるのは無理というもの。当然、訪問診療になります。しかし、それを可能とするには、医師も看護師も足りないのが現実です。それを誘導しているかどうかは、報酬改定を分析することでみえることがあります。

 特徴的なのは、まずは病院です。
 ・急変時の受け入れをすると報酬アップ
 ・退院率が高いと報酬アップ
 ・重症患者向けベッドを減らし、回復期向け患者ベッドを増やす
 つまり、「入院」したら「早めの退院」を促がすものになっています。

 では、病院から自宅に戻った高齢患者、病院から施設に戻った(映った)高齢患者を、医療はどう支えるのか。報酬上の特徴です。
 まずはかかりつけ医です。看取りや急な往診などに積極的に対応すると、報酬アップとなっています。訪問看護も、重症患者の24時間対応ならば報酬アップとなっています。
 しかし現実は、医師にとっての定期訪問や24時間対応は相当な負担です。訪問看護も、報酬アップといっても、まずは訪問看護師の人材が確保できるかが問題です。なぜなら「病院との奪い合い」で現場は汲々としているからです。

 さらに今回、新しい算定基準が生まれました。「地域包括診療料」というものです。外来通院される患者さんを包括的に診療した場合に算定することを前提としたもののようですが、その実体は今の時点では定かではありません。算定要件も「常勤医3名以上の診療所」とか。医師1人の在宅療養支援診療所が連携して対応することは想定していないようです。

 そして「施設在宅」という用語?と、そこへの訪問診療への4分の1以下の減額措置です。これはどうやら、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームなどのように、医師が定期的に訪問診療をする場合の算定です。本来、通院困難な在宅高齢者に行うべき訪問診療を、そうでない患者に行ってきた「不適切な事例」への「きついお灸」なのでしょう。この方針を厚生労働省は「変えるつもりはない」と言っているようです。

 患者紹介ビジネス?が暗躍し、患者の囲い込みと揶揄されてきた施設在宅への集中訪問診療ですが、この措置により、多くの提携診療所は二の足を踏むことになるでしょう。では、「いつでも訪問診療」をウリにしてきた施設側はどうでるか?通院の送迎バスを出すのか、通院困難な状態をあくまで主張するのか、それとも「仕方ない」と医療過疎状態になることを受け入れるのか。

 いずれにしても、今回の診療報酬改定と介護保険制度の改定が絡み合い、医療・介護大改革が進む予感がします。

 今週のメールマガジン「元気いっぱい」第398号(無料)は「ムロさんの感動 名著「夜と霧」に「人生の意味づけ」を学ぶ」(第1・3木曜日に配信)です。メルマガは随時登録受付中です。
 ケアタウンの公式HPではバックナンバーまで見ることができます。⇒  
 研修の様子はケアタウン総合研究所の公式Facebookをご覧ください。


【研修会場・写メ日記】

北海道江差町 地域ケア会議活動推進事業
「地域ケア会議の開き方・進め方」研修
20140221_taka2.jpg

北海道江差町 地域ケア会議活動推進事業
民生委員・町内会長対象「地域の力と地域ケア会議」研修
20140221_taka3.jpg

北海道檜山振興局保健環境部社会福祉課 第2回地域包括支援センター連絡会 「地域包括ケアシステムと介護予防事業」
20140221_taka4.jpg

東京都社会福祉協議会主催介護保険居宅事業者連絡会 研修委員会
「介護現場」で活かす文章と記録の書き方
20140221_taka5.jpg

広島市安佐北区介護支援専門員連絡協議会・安佐南区ケアプラン作成機関連絡会
「ケアマネジャーのコミュニケーション術」~伝える力を磨く~
20140221_taka6.jpg


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

コメントを投稿する




ページトップへ
プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

【高室成幸さんの最新刊】
『ケアマネジャーの質問力』
著者:高室成幸
定価:¥2,100(税込)
発行:中央法規出版
ご注文はe-booksから
3172.jpg


bn_caretown.jpg
メニュー
バックナンバー
その他のブログ

文字の拡大
災害情報
おすすめコンテンツ
福祉資格受験サポーターズ 3福祉士・ケアマネジャー 受験対策講座・今日の一問一答 実施中
福祉専門職サポーターズ 和田行男の「婆さんとともに」
家庭介護サポーターズ 野田明宏の「俺流オトコの介護」
アクティブシニアサポーターズ 立川談慶の「談論慶発」
アクティブシニアサポーターズ 金哲彦の「50代からのジョギング入門」
誰でもできるらくらく相続シミュレーション
e-books