医療は「地域完結型」へ向かうのか?
去る2月12日、4月からの医療報酬の金額が発表されました。中央社会保険医療協議会が改定内容をまとめての発表でした。
「超高齢・多死社会」をにらんだ内容がいくつも盛り込まれているのも、その背景には、2025年ごろには1年間に現在の1.3倍の154万人が死亡するからです。つまり、今のように約8割が病院で亡くなる状況が続けば、保険財政がパンクするからです。
病気になれば、体調が悪くなれば、とにかく入院して面倒をみてもらう「病院完結型」となっているのを、地域(自宅)で診療する「地域(在宅)完結型」をめざす内容になっています。
それを、朝日新聞は「時々、入院。ほぼ、在宅」という見出しをつけました。なるほど、言い得て妙です。
今回の報酬改定をめぐって医療関係者、とくに在宅医療を積極的に行っている医師のみなさんのメーリングリストのなかで、喧々諤々の論争が起こっています。
従来の診療所は「患者の通院」が前提です。しかし、90歳の寝たきりの患者に通院を強いるのは無理というもの。当然、訪問診療になります。しかし、それを可能とするには、医師も看護師も足りないのが現実です。それを誘導しているかどうかは、報酬改定を分析することでみえることがあります。
特徴的なのは、まずは病院です。
・急変時の受け入れをすると報酬アップ
・退院率が高いと報酬アップ
・重症患者向けベッドを減らし、回復期向け患者ベッドを増やす
つまり、「入院」したら「早めの退院」を促がすものになっています。
では、病院から自宅に戻った高齢患者、病院から施設に戻った(映った)高齢患者を、医療はどう支えるのか。報酬上の特徴です。
まずはかかりつけ医です。看取りや急な往診などに積極的に対応すると、報酬アップとなっています。訪問看護も、重症患者の24時間対応ならば報酬アップとなっています。
しかし現実は、医師にとっての定期訪問や24時間対応は相当な負担です。訪問看護も、報酬アップといっても、まずは訪問看護師の人材が確保できるかが問題です。なぜなら「病院との奪い合い」で現場は汲々としているからです。
さらに今回、新しい算定基準が生まれました。「地域包括診療料」というものです。外来通院される患者さんを包括的に診療した場合に算定することを前提としたもののようですが、その実体は今の時点では定かではありません。算定要件も「常勤医3名以上の診療所」とか。医師1人の在宅療養支援診療所が連携して対応することは想定していないようです。
そして「施設在宅」という用語?と、そこへの訪問診療への4分の1以下の減額措置です。これはどうやら、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームなどのように、医師が定期的に訪問診療をする場合の算定です。本来、通院困難な在宅高齢者に行うべき訪問診療を、そうでない患者に行ってきた「不適切な事例」への「きついお灸」なのでしょう。この方針を厚生労働省は「変えるつもりはない」と言っているようです。
患者紹介ビジネス?が暗躍し、患者の囲い込みと揶揄されてきた施設在宅への集中訪問診療ですが、この措置により、多くの提携診療所は二の足を踏むことになるでしょう。では、「いつでも訪問診療」をウリにしてきた施設側はどうでるか?通院の送迎バスを出すのか、通院困難な状態をあくまで主張するのか、それとも「仕方ない」と医療過疎状態になることを受け入れるのか。
いずれにしても、今回の診療報酬改定と介護保険制度の改定が絡み合い、医療・介護大改革が進む予感がします。
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