月刊ケアマネジャー連載裏話:「事例検討会」での学び方~事例提出者編~
月刊ケアマネジャーでの連載、『高室流“自分育て”の学び術』の新年号(1月)は、「事例検討会」での学び方(事例提出者編)です。
前回の12月号では参加者としての学び方を書きましたが、今回は事例提出者編となります。
いま、全国では、事例検討会がかなりの数、行われています。そのなかで、地域包括支援センターの主任介護支援専門員の方とも話すのですが、「その事例を提出してくれる人を探すのがひと苦労なんです」ということがあるようです。今回は、この悩みについて取り上げてみます。
多くの人は、提出ケースは、皆の参考になるものでなければいけない、という思い込み(^_^;)があるようで、「いえいえ私なんかはまだまだです」と断られることも多いよう。
どうやら本音は、ケースを出すということは、自分の仕事ぶりを見せることになり、その評価がこわいというのがあるようです。それに、「〇〇さんはこんなこともできていないの?」と自分のレベルを見られてしまうのでは? と思う人もいるようです。
しかし、しかし…
事例検討会にケースを提出した人は、ほぼ異口同音に、「提出する機会を持ててよかった。さまざまな意見や違う視点からの提案は参考になった」と述べています。そしてお決まり(?)の「目からウロコが落ちました」というセリフもしっかりと用意されています。
もちろん、事例検討会に参加してくれたケアマネジャーや他の専門職への社交辞令(?)的意味合いも一部あるかもしれませんが(失礼<(_ _)>)、実際にはかなりいい経験になっていることが多いと思います。
なぜなら…
事例を事業所でカンファレンスする機会がほとんど持てていないからです。ケアマネジャーの多くは3~5人の事業所であり、わざわざその手の時間を確保するということがあまりされていない。
何しろ、居宅介護支援事業所特定加算IIの条件の1つが「毎週、会議をすること」ということなのですからね。それに1~2人の事業所もまだまだザラにありますから。
ということを、まずは脇に置いておきましょう。
さて、事例提出者となれば、これまでを振り返り、参加者の皆さんにわかるように利用者(家族)情報の整理を行います。ここで「第1の振り返り」ができているのですね。
そして本番…聞き手の反応を見ながら、事例をプレゼンテーションするプロセスで、これまた、その時点での気づきがあります。
そして、そして…自分が思いもしなかった視点からの質問、話したつもりがないのに実は引っかかっていた質問、専門職ならではの濃~い質問などなどに答える中で、さらなる「発見と気づき」が生まれます。
「〇〇という関わり方なら、Aさんは、どのような態度をとられると思われますか?」「もし仮に~だったとするなら、長男の方の介護の仕方はどうだったでしょうか?」などなど、手立てに関わる質問に「ハッ」とする瞬間が生まれたりします。「そうか、その手があったんだ」と脳内で何かが弾ける瞬間があったりするのです。
まさに、事例検討会では、提出者自身がもっとも「お得な立場」にいることを実感する瞬間です。これほど学習効果の高いワークショップは他にありませんね。だって、自分のケースで、約1時間も、20人前後の頭と心を使えるわけですからね。
でも、皆さんには、「何か言われるのでは…」という不安があるようです。でも、でもですよ…参加者の中に、提出した人を吊し上げたり、質問攻めにして困らせてしまおうとする「底意地の悪い人」はいません。
ただ質問の仕方が詰問調だったり、ファシリテーション(進行)が慣れていなかったりするために、そのような空気になってしまうことが、今でも少しはあるようです。
が、それも、この10年でずいぶんと改善されてきたという実感があります。「気づき」を大切にする事例検討会が、「傷つき」の事例検討会になっては、本末転倒ですからね…(^_^;)。
まずは「私のケース」と思わずに「ケアチームの代表」としての立ち位置で事例提出をすること。これも大切な勘所です。
最後に…上の写真は、昨年12月に行われた日本福祉大学第8回ケアマネジメントセミナーC分科会のときのもの。「地域精神保健をすすめるケアマネジメント~積極的訪問チームAOTの取り組み~」の講師&ファシリテーターである植田俊幸医師(鳥取県立精神保健福祉センター医長)です。この日は、植田先生が担当しているケースの事例検討会でした。
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