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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

「ADL」とは何者か?

 アセスメントというと、「ADL」のことが必ず取り上げられます。英文表記では「activities of daily living」、日本語では「日常生活動作」と訳します。具体的には、「食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴」と説明されますね。
 そして、「料理、買物、掃除」などは「IADL」です。これは「日常生活関連動作」のことです。

 さて、この「日常生活動作」という翻訳ですが、果たしてこれは正確なのか、という疑問をずっと抱いています。
 いわゆる“直訳”としては正しいのでしょうが、現場の理解を考えると、若干の意訳が必要なのではないでしょうか。ちなみに意訳とは、「意を汲み取った翻訳」という意味です。

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 ちょうど、昨日、愛知県碧南市の社会福祉法人「川口みんなの家」のオープンカレッジなる研修会に呼ばれました。午後と夜のダブルヘッダーです。
 午後の「チームアセスメント」の講義の際に、ふとある表現がひらめきました。それがこのADLの意訳です。

 私はその時点まで、ADLを日常生活動作ではなく、「生命・生活動作」と意訳して説明してきましたが、どうもしっくりときていませんでした。

 どういうことかと言いますと、

 食事・排泄などは、行うことができなければ生命に支障をきたすので、「生命動作」と定義づけていました。
 では、入浴・整容・更衣は生命動作なのか……いずれを行わなくても死ぬわけではありません。しかし、生きていることの快適さには影響してきます。

 そんなことを説明している最中にひらめいたので、
 「すみません、そこの表記を、『生命・快適動作』と書き換えてください」とお願いをしました。

 ただ生きているだけでなく、快適に(心地よく)生きていくうえで、入浴・整容・更衣はとても大切なかけがえのない要素といえます。


 実は、かなり以前から、このADLに大切な要素が抜けていることに気がついていました。生命動作であり、快適動作である、「ある要素」です。

 何だと想像されますか? 意図的に外しているのではと、いぶかってしまいます。

 その1つが、20代~50代の成人なら、ほとんど誰もが持っている性行動(セックス)です。中途障害者を含む精神・知的・身体障害のある人にとっては無視できない、とても大切な要素と理解してくださる方は多いと思います。

 これを恋人願望や結婚願望と捉えてしまうと、話はややこしくなります。恋人願望は人間関係願望であり、結婚願望は社会的認知願望だからです。
 性行動(性衝動)は、DNAそのものが持っている細胞拡散行動の1つと私は理解しています。

 それともう1つ。それは「睡眠」です。これは生命活動として、とても重要な要素です。眠れない、眠りが浅いとなると、日中の活動に影響し、重症になれば精神に重大な影響を及ぼします。


 これらが案外と抜けているのですよね。一体なぜなのでしょうか?
 「要介護で体を動かさない」→「睡眠を常時とっている」などと、勝手な思い込みをしていないでしょうか?

 睡眠にはとても個人差があります。どれだけ眠るとよいのかは、人それぞれ……。
 5時間で十分な方は、8時間では逆につらいといいます。また、8時間眠らなければすっきりしない方は、不眠が続いたり、仕事の都合で6時間程度しか睡眠がとれないと体調に深刻な影響を及ぼします。

 身体が動かせない、起居動作がとれなく寝たきりの方にとっては、横になっている状態は苦痛なのではないでしょうか?
 寝たきりだからといって、睡眠が十分とれているとは限らないのです。

 ADLを「生命・快適動作」と位置づけるなら、どの範囲まで捉えればよいのか。
 皆さんの中に、さらなる知見をお持ちの方、ぜひとも教えを乞いたいテーマです。<(_ _)>


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【研修会場・写メ日記
宮崎県介護支援専門員協会 延岡・西臼杵ブロック研修会主催「元気出そう、ケアマネジャー! 心の元気とモチベーション」
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岩手県遠野市社会福祉協議会主催「伝える力~話し方・まとめ方~」
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愛媛県社会福祉協議会主催 市町社会福祉協議会職員テーマ別研修「伝える力~話し方・まとめ方~」
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愛知県碧南市 社会福祉法人碧晴会・川口結いの家 オープンカレッジ「チームアセスメント」&「伝える力」
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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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著者:高室成幸
定価:¥2,100(税込)
発行:中央法規出版
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