介護電話相談の現場から
先週は、『月刊ケアマネジャー』2013年9月号の認知症特集に登場されたもう一人の方に取材をしました。その方は、角田とよ子さん。角田さんは、社会福祉法人浴風会の「介護支え合い電話相談室」の室長です。
電話相談を始めて9年…これまでの実践を『介護家族を支える電話相談ハンドブック』(中央法規出版)にまとめられました。
私が角田さんに会いたいと思ったの理由の1つは、電話相談では、介護家族のみなさんが率直な姿を見せているということ。それに対して、助言でなく傾聴という姿勢で真摯に向き合われている生の声にふれたいと思ったからです。
相談を受ける時にどのようなことに注意をされているのか、そこから話は始まりました。
「相談の内容が、認知症を診てくれるいい先生はいないでしょうかだったとしても、相談者が困っているのは認知症の症状がひどくなってどう対処すればよいかわからない、アドバイスがもらえないことだったりするわけです。ですから、その方の本当のQ(質問の意味)は何かに寄り添います」
認知症の親を抱えた子どもの方からの相談です。3月のひな祭りの話題で盛り上がろうと子どもが話し始めると、母親は自分の子どもの頃の質素な雛祭りの話題を話し始めること…。そしてそれは、母の 苦労話へ…初めて聞く母の子ども時代の話に、どう向き合えばいいか、わからない。
「認知症になった親を子どもたちが、なぜ受け入れられないか。それは、子どもの側にかつての親との関係性を忘れられない恐怖があるからです。つまり、親の記憶の中から子どもの存在が消えている、そのことがたまらないんです」
1回の電話はどれくらいの時間なのですか?とたずねました。
「多くが30分から40分くらいですね。ちょっと長いと50分。最長は80分という方もいました」
電話相談は「一期一会」、かかってきた時が勝負と角田さんはいいます。
「人は、話すことで力を取り戻すのでしょうね。世の中に、自分の話を否定せずに聴いてくれる人がいる。1人じゃないという実感が大切なのだと思います。なかには、同じ話を違う相談員にかけてくる方もたまにいらっしゃいます。それは、同じ話をいろんな人に聞いてもらいたい。つまり認めてもらいたい、共感してもらいたいという叫びなのでしょう」
たまに同じ方から同じ相談を受けることもあるといいます。その場合にも、初めて聴く話としてポーカーフェイスで傾聴するといいます。それだけ吐き出したいものがある、受けとめてもらいたいものがあるからです。
「驚くのは、みなさん意外と相談員の声を覚えてらっしゃらないんですよ。それほど話すことだけで精いっぱいなのでしょうね」
1コール30分から50分。その間、受話器を握りながら、顔も見えない、名前もわからない、もちろん年齢もわからない方の延々と語られる介護の悩みを聴き続ける。心の叫びやグチに耳を傾ける相談員の方の心の疲労は相当なものではないでしょうか。
率直に質問しました。
「それは本当に大変です。だから、帰る前にたくさん話を聴くようにしています。絶対に持ち帰らない。これを原則にしています」
悩みを抱えた相談者だけでなく、相談ボランティアのみなさんにもしっかりと寄り添っている角田さんの言葉が印象的でした。
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【研修会場・写メ日記】
新潟県「ケアプランの質の向上」推進支援研修(フォローアップ研修)長岡会場
埼玉県本庄市の有限会社らいふぷらん主催「多職種連携とチームケア」
豊中市地域包括支援センター研修会「包括職員のキャリアマネジメント」
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