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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

交渉という技術

 5月から、横浜市の地域ケアプラザや区の社会福祉協議会の地域福祉担当を対象にした地域コーディネーター研修をお手伝いしています。私の担当はCコース。Aコースは統計、Bコースは制度・政策なのですが、Cコースは実践的な仕事力に関わるものです。ファシリテーション、コーディネーション(調整・交渉)、プレゼンテーションを実践的に学びます。
 そこで、今週月曜日に講義をした「交渉力」について話したいと思います。

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横浜市地域コーディネーター研修Cコースの様子

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 「交渉術」というとかなりモノモノしい印象ですが、わりと、いえいえ、頻繁に交渉事をやっていますよ、私たちは。
 たとえば…
 「この130円のリンゴ、もう少し安くならない?ダメなの?…いいじゃない、ダメ?ケチだなぁ…そんなことしていたら潰れるよ、この店。ねえ、イチゴも買うから」
 どうでしょうか、このやりとり。このように、買い物などでは主婦と店主が日常茶飯事に交渉をしています。
 だいたい、仕事、夫婦、親子でおたがいの主張が一致しているなど、本当に稀です。主婦の側は「安く買いたい」、店側は「高く売りたい、たくさん売りたい」です。つまりベクトルがぶつかり合います。
 双方が納得する売買を成立させるためには、お互いが相手に働きかけることになります。
 まさに、それが「交渉」なのです。

 交渉のポイントはどこにあるのか? 主張のぶつけあいは対立を生みます。対立は葛藤を生み、やがて勝ち負けを決めることで解消されます。ところが、勝ったほうには満足が、負けたほうには不満が生まれます。このように「勝ち負け」を交渉と思ったらそれは勘違いです。
 ほかにどのような言葉があるかといえば「折り合いをつける」…これは7割が正解でしょうか。おたがいが「納得」をする…かなり重い印象がします。むしろ、相手と「合意」すると考えてみてはどうでしょうか?

 では、交渉を上手に進めるためにはどうしたらよいでしょうか? みなさんのなかに「Win-Winの関係」という言葉を耳にした人はいるでしょうか? これは「双方が勝者」になるにはどうすればよいか、を考えましょうということです。
 つまり、自分のメリットが相手のデメリットでは、相手は乗ってきません。相手のメリットが自分のデメリットでは当然嫌ですよね?
 双方にとってメリットを探すわけです。
 これが交渉の勘所の1つです。

 そうなると、先のやりとりも次のように変わります。
主婦 この130円のリンゴ、もう少し安くならない?ダメなの?…だったら5個ならどう?
店主 奥さん、5個買ってくれんの?(本音:たくさん買ってくれるんだ。売れ残ったら鮮度落ちるしな。よし決めた)奥さん、600円でいいよ
主婦 えっ?650円を600円にしてくれるの?だったら550円はだめ?
店主 ご、550円?(本音:オイオイ、そりゃないだろう)
主婦 (あ、まだマケナイんだ。よーし、これと付けちゃえ)こっちのイチゴを1パックもらうからさ。どう?
店主 (イチゴも明日になったら下げなくちゃいけないしな。)いいよ、奥さん
主婦 ホント、いいの?やった~!みんなにここいいお店だって宣伝しておくからね!

 最後の主婦の「宣伝しておくからね」は、口コミがどれだけ効果があるかを知っている店主の心をわしづかみにするでしょう。
 交渉とは「相手のメリット」に着目することから始まります。

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【研修会場・写メ日記】
東京都足立区「地域ケア会議の開き方・進め方」です。
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静岡県共同作業所連絡協議会・わ管理者研修会「人材マネジメント~職員の働く意欲と動機づけ」です。
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みえ福祉連携プロジェクト第1回研修会「アクターズケア」です。
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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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著者:高室成幸
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発行:中央法規出版
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