「利用者(家族)の意向」で困るのは、なぜ?
「利用者(家族)の方の意向を把握する際に、困ることはありますか?」
研修後のアンケートでそんな質問をすると、たいてい次のような悩みが書いてあります。
「今のままの生活がずっと続けばよい。夫より1日でも長く生きて、夫を見送ってからあの世に行きたい。それが一番の願いです」と言われた時、どう返してよいか悩んでしまいます。
「このままでいい。何のサービスも必要ない。必要なときはこちらから言うから連絡は必要ないと拒絶されました」
「特にない、今のままでいい、という方がほとんどです。どんな暮らしをしたいですか?と尋ねても、このままいられれば、という方が多いです」 (S.Sさん 介護福祉士)
この他には、「利用者ご本人と家族の意向が真っ向から違う場合に困る」「家族が利用者ご本人の話をさえぎってしまい、家族の意向にどうしても流れがちになる」「協力体制のない家族とのやりとりに苦労する」等々…
どなたの文章を読んでも、皆さんの苦労の大変さが伝わってきます。
このように、多くのケアマネジャーが悩んでしまうのは、一体なぜか。たとえば「家族の協力体制がない」であれば、このことについて、どうして悩むのでしょうか。
「家族は協力し合うものだと思っているから?」
「協力し合わないことで、サービス利用が増えてしまうから?」
「利用者ご本人が気の毒だから?」
「家族に変わるインフォーマル資源がないから?」
もしかして、そこに身を置く自分に、そして、次の一手が見えない自分に、悩んでいるのかもしれません。
「どんな暮らしをしたいですか?」と尋ねて答えられないのは、むしろ当たり前のことではないでしょうか。
人の手助けがないと暮らせない状況は、ご本人にとっては、相当な戸惑いがあることでしょう。
誰に何を頼んでよいかわからない、当てにしてもうまくいかない、当てが外れるくらいなら高望みはしたくない、またお金もいろいろかかる、あきらめてしまうほうが楽だ……など、複雑な思いが頭の中を巡っているときに、「何をしたいですか?」と尋ねられても、答えに窮するのが普通の反応なのかもしれません。
ですから、「これから」を一緒に考えるために、まずはご本人の「これまで」を丁寧に聴き取りましょう。そこにはきっと、ご本人なりに大切にしたい生活習慣や取り戻したい暮らし方があるはずです。
誰もが悩んだり、迷ったり、困ったりするのは、おそらく、イメージがわかない(想像がつかない)、やり方がわからない、誰も説明してくれない、選択肢を示してくれない、自分の身体がどうなるかわからない、いつまで寿命があるかわからない、医師から見放されている、家族から疎まれている、そして、自分の人生に疲れてしまっている……
このような方に対し、皆さんはどのような支援をするでしょうか?
「支援」という用語は、とても便利で抽象的です。実際、「支える」と言い換えてもよいのですが、では具体的にどういうことなのかと考えると、はたとわからなくなります。
「支援」という用語に含まれる「言葉」を調べました(何と30数種類もありました)。その中のいくつかを紹介しましょう。
・やり方がわからない……説明する、教える、導く、声がけする
・想像ができない……いくつかのエピソードをお話する
・このやり方でよいのか不安……評価する、認める、ほめる
皆さんが困っているのは、「どのように支援していけばよいか」がわからないからでしょう。
実は、支援する中味が整理できていないから、その方に合った支援が、ただ聴くだけ、ただ寄り添うだけ、ただ介護サービスをあてがうだけに、なっているのではないでしょうか。
「私はなぜ困っているのだろうか?」自問自答を繰り返すこともあるでしょう。
また、事業所内のカンファレンスや事例検討会に出すことで、「次の一手」が見えてくることもあるでしょう。
悩んだままにしないこと。それがプロなのではないでしょうか。
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【研修会場・写メ日記】
島根県大田市のケアマネジャー研修会。今回は午後と夜のダブルヘッダーです。
午後の部は、民生委員の方々を対象とした介護予防教室。全国の予防教室の取り組み紹介から、男性高齢者の巻き込み方まで、実践的なお話をさせていただきました。
夜はケアマネジャーやサービス事業所の方々を対象とした「ケアプラン作成術」です。CADLの視点に基づいた講義も行いました。「自信を持って歩く」→「庭の剪定や釣り・パチンコに行きたい」に変化しました。
準備にあたった大田市地域包括支援センターの皆さんとケアマネジャー連絡会の皆さんです。
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