「お元気ですか?」
最近、相談援助技術について、「質問力」をテーマに話してもらえないかという研修の依頼が増えています。先日の愛媛県松山市のケアマネジャー研修会(介護保険課主催)もそうでした。
このような依頼があると、まず私は、研修の目的を明確にするために、「その人らしさ」に着目してはどうでしょうか、と提案します。
つまり、相談援助技術は、「その人らしさ」を浮き彫りにするための技術であり、そしてそのために、質問力を活用しようというわけです。
今回は、その松山市の研修会の様子を再現してみたいと思います。テーマは「その人らしさに着目した相談援助技術 ~活かせ!質問力~」。約5時間の研修会でした。
「質問力」はなぜ効果的か…
それは、人は質問をすると考えるからです。
そして、人は質問に対し、正直に「答えよう」とするからです。
例えば、どのような人であっても、いきなり「昨日は夜更かしをして、深夜1時に床につきました」と話し始めることはありません。
何時に眠ったかを聞きたい場合、本人の前に座り、「さあ、話せ!」と念力(?)を送るだけでは、相手は話してくれないのです。
「昨日は何時に眠りましたか?」
そう質問するから、上記の答えが返ってくるわけです。
もしかすると、利用者(家族)に語ってもらいたいのに、「抽象的なわかりにくい質問」をしてしまい、ケアマネジャーの皆さんと利用者(家族)さんが双方で四苦八苦している…そんな場面があるのではないでしょうか?
そこで研修では、私たちの多くが常套句になってしまっているやりとりを取り上げました。
「皆さんのなかで、『お元気ですか? お変わりありませんか?』と質問している人は手を上げてください」
そう促すと、会場の7~8割ほどの人が挙手をしてくれます。
次に畳みかけるように、「では、そう質問すると、利用者の方はどのように答えてくれますか?」と尋ねます。
すると、会場からは、「利用者の方は『ええ、元気ですよ。特に変わったことはないよ』と返してくれます」とのリアクション。
これって全国的に同じです。実に不思議なことですよね。
だって、皆さんのかかわる利用者さんは、何らかの疾患を持っている方々です。介護が必要となった生活はとても不便なもの。体力も使いますし、体調だって日々変化していきます。特に今の梅雨時期は雨が多く、ジメジメしていますから、身体がだるかったり、動くのがおっくうになりがちです。
つまり、極端にいえば、「元気なはずではない」ということです。そして「日々、体調は変わっている」ということです。
しかし、質問に対し、『元気ですよ。特に変わったことはないよ』との答えが返ってくるのは、ケアマネジャーや周囲の人に、負担をかけたくないという思いがあるからだと私は考えます。
そしてもう1つ大事なことは、皆さんの質問自体が、元気であることを前提とした「確認質問」になっているからです。
体調の変化を把握したいなら、「お元気ですか?」ではなく、「体調(調子)はいかがでしたか?」「最近、おっくうになってきたことは何ですか?」などと質問してはどうでしょうか?
そうすれば、「実はね、ここ1週間くらい、頭痛がひどくてね」などと、具体的な回答が返ってくることでしょう。
また、「ご家族との関係はうまくいっていますか?」ではなく、「ここひと月、ご家族とどれくらい会話をされていますか?」「ご家族に頼みごとをするのを、ためらうことはありますか?」などの質問の方が、具体的な回答を引き出すことができるのではないでしょうか。
人は質問されるから、話し始めます。
質問は、話を始めるための「きっかけ」なのです。
そして、話し始めたら、傾聴の技術でさらに引き出すことになります。うなずき・相づちなどは、話し手にはとても心地よいものです。
さらに、反復する、要約をする、小まとめを入れるなどを行いながら、利用者(家族)の思いや本音を引き出していきます。
質問を、「ドアのノック」に例える人がいます。
皆さんは、利用者(家族)の心のドアに、どのようなノックをしていますか?
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【研修会場・写メ日記】
静岡県牧之原・吉田町ケアマネジャー連絡協議会の研修会です。昨年に引き続き2回目となりました。
静岡県ホームヘルパー協会の研修会。テーマは「モチベーションアップ」です。
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