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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

故・池田省三氏を偲ぶ会

 先の日曜日、私は市ヶ谷にいました。故・池田省三氏を偲ぶ会に参加するためです。
 皆さんの中にも、ご存知の方がいらっしゃるかと思いますが、平成25年4月23日、池田省三氏(龍谷大学名誉教授)が永眠されました。享年66歳でした。

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 大腸がんを発症されてからも、厚生労働省の「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」などに参加され、おなじみの毒舌な発言をされていました。
 その激しい「論調」のおかげで、ケアマネジャーの皆さんのなかにも、反発を感じる人が一部いらっしゃるほどでした。


 介護保険制度創設の準備は、1990年代のゴールドプラン、新ゴールドプランにさかのぼることができます。
 池田先生は、当時、自治労のシンクタンクの地方自治総合研究所で、政策研究部長の立場から積極的に関わり、2000年以降は、龍谷大学の社会保障論の研究者としてご活躍でした。

 享年66歳ということは、23年前は43歳。
 つまり、40代~50代の働き盛りを、介護保険の準備・創設・構築にかけられたことになります。

介護保険論、池田省三

 池田先生のアイデンティティは、「団塊世代」の高齢化問題にあると思います。

 「介護の社会化」を掲げて始まった介護保険制度は、「家族介護」「嫁の介護」という従来の介護への意識を大きく変えました。
 これは、つまり、介護のなかに「自己決定」という概念をしっかりと持ちこんだことになります。
 「寄らば大樹の陰」「多勢に無勢」「長いものには巻かれろ」が当たり前の日本人に、自己決定という「個の意識」を植えつけ、そしてそれを制度化したという画期的な意味を持つものでした。

 まさに団塊世代にとって、一歩も引けない「哲学」であったと私は考えます。


 その時の思いを、池田先生は生前、鎌田實先生との対談で次のように述べられています(出典は、がんサポート情報センター

池田:なぜ私が介護保険にこんなにこだわったのか。人間の尊厳という部分に惹かれたのです。人間の尊厳とは何か。それは、自分のことは自分ですることから始まる。歳を取り、介護を受けるために、それができなくなるというのは、本来、人間にとって耐えられないことです。しかし、自分で決定することはできる。その決定を実現に移す過程で、社会が支援することによって、人間として矜持ある晩年を過ごすことができる。それは素晴らしい社会です。それが、私が介護保険に託そうとした目標でした。
鎌田:よくわかります。


 「人間としての矜持ある晩年」…

 これは1年前の対談ですが、振り返れば、池田省三としての「矜持ある晩年」という意味だけでなく、介護保険の制度設計に関わった一人の研究者として、団塊世代の代表者として、「走りきられた」ようにも感じます。

 ただ、日本人の平均寿命より20年も短く終焉を迎えられことは、とても無念であったろうと心痛みます。その反動なのでしょう。この数年の発言の厳しさは、並大抵のものではありませんでした。
 その思いの底にあるもの…それは次のような発言からも読み解くことができます。


池田:しかし、最近、国がやってくれない、社会がやってくれない、介護保険がやってくれないといった“くれない族”が横行しています。私は今年65歳の高齢者になりますが、“くれない族”というのは、高齢者の誇りを失わせるのではないかと思っているから、昨今の風潮とぶつかるんです。


 厚労省の官僚とぶつかり、介護現場の専門職とぶつかり、国民の意識の中に「くれない族」が生まれてきたことにぶつかり…。
 まさに、学生運動を戦った「闘士」としての池田省三という人を見る思いがします。

 個人的には、池田先生と部分的には異なる論を持つ私ですが、池田省三という人が目指した「大義」には、共感し尊敬してやまない人間の一人です。

 6年前、丹波篠山市の研修会の懇親会の後、約1時間、酒を酌み交わしながらじっくり本音ベースでお話をしたときが、いまはなつかしく思い出されます。

 ご冥福を祈ります…


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【研修会場・写メ日記】

 飯田市ケアマネジャー研修会「利用者本位のケアマネジメント」の研修風景。畳敷きの会場は、とてもアットホームな雰囲気でした。
写真2


 おなじみのサイン会。『ケアマネジャーの質問力』が完売しました!
写真3


 平成25年度の横浜市地域福祉コーディネーター養成研修の上級編Cコースの初日です。課題図書『ファシリテーション入門』をもとに、コーディネート&ファシリテーションの手法を実践的に講義中。
写真4


コメント


池田省三氏を偲ぶ会で検索していたら、高室さんのブログに到達でした。
当日は、私も市ヶ谷に行くつもりでしたが、家庭の事情で、行くつもりで終わってしまいました。

私にとっての一番の思い出は、特養に身を置く私が、特養の発展的姿(現状からの脱却)について、秋田のど田舎にお呼びし、一施設の園内研修でお話しをしていただいたことです。
謝礼は日本酒を飲むことで、来ていただきました。

あなたは、住まいをどのように考えているの?
尊厳をどう捉えている?
他人の人生に踏み込みながら、本人不在のケアプランになっていない?どうかな?
特養はこのままでいいと思っている?
保険でどこまでカバーできるものか?
ところで、あなたの特養は報酬改定でどれぐらいマイナスになったの?剰余金があるんでしょう?
僕を恨んでいる?
人材養成は?社会還元は?財源について考えたことがある?

話題がありすぎて、病気だって言うのに、手加減無くお酒を酌み交わしてしまいました。

思えば、反発から知り合うことになった先生でした。
私が愛着を感じている在宅介護支援センターに対し、地域包括支援センターが誕生しても、まだ生きながらえている、ゾンビだと言われたときもあったなと、その辛口が忘れられません。

タイムリーな投稿でなくて、お許し下さい。

高室さん、偲ぶ会へのご出席、ありがとうございました。


投稿者: 快互朗人(秋田) | 2013年06月17日 17:16

快互朗人(秋田)さんへ・・・

 書き込み、ありがとうございます。池田先生は特養の職員研修にも行かれていたんですね。職員のみなさんにとってはかなり舌鋒鋭い話し方なので、さぞや圧倒された方も多かったのではないでしょうか。
 地域包括支援センターを「ゾンビのような生き残り」ですか・・・皮肉と揶揄と批判が混在した表現をされるのでいたずらに敵を作ってしまったり、誤解をされたり、正直言い過ぎてしまわれるのが残念でした。

 まさに「介護保険」の闘志散る・・・それが私の印象です。池田先生が示した宿題をどうこなしていくかが、私たちに問われていることは深く重いです。

 ※返事が遅れてすみませんでした
 


投稿者: たかむろ | 2013年06月21日 19:51

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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