シニア劇団の元気
みなさんは「シニア劇団」がブームになっているのをご存知ですか? 60歳以上の方たちが集まって演劇に取り組むというものです。
有名な演出家・蜷川幸雄さんが、埼玉県の芸術文化センターの企画で10年前に始められたのがきっかけだったかと思います。
高齢者ばかりを集めて演劇が成り立つのか…。
多くの人が心配になるのが「セリフを覚えられるのか」ということです。ただでさえ記憶力が落ちる年代になって、その記憶力に挑戦するチャレンジ精神はすごい。まさに介護予防教室のようです。
さて、どのような方が参加されるのか、なぜ参加されるのかについて、大阪府箕面市を拠点とする「シニア劇団すずしろ」(代表:秋田啓子さん。写真中央)の演出をされている倉田操さん(俳優&演出家、元富良野塾卒業生。写真向かって左)に聞いてみました。
「いろいろな方がいらっしゃいます。定年後にときめくものがほしいと思った、いつかやってみたいと思っていた、などさまざまです。なにより新しい人間関係が生まれるのが楽しいようです」
練習するみなさん
ネットで調べるとかなり検索できます。北海道から九州まで、すべての県のどこかの市町村でやっているという印象です。そこからいくつかをひろってみると…シニア劇団の特徴はまず、その名称です。
「かんじゅく座」「劇団笑劇」「劇団まんざら」「劇団鶴亀」など、劇団名がユニークで、いわゆる演劇してない? というのが1つですね。
加えて、加入資格です。
・60歳以上~(上限を決めていないのもいいですね)
・自分で稽古場まで歩いてくることができる
この2つだけです。多少のもの忘れは折りこみ済みですから問わないという点がいいですね。
シニア劇団は人間関係も生まれるし、介護予防にもなるし、いいことづくめですが、加入されたみなさんがすべて続くというわけでもないようです。倉田さんに聞きました。
「お芝居ですから、いろんな役をやらなくてはいけない。するとどうしても、自分とは距離のある役も出てきます。それをおもしろがってやれればいいのですが、自分のこだわりを壊せない方が一部いらっしゃいます。どちらかというと男性がそうですね」
男性は、それまで社会的存在として生きてきているために、なかなか「殻」を脱ぎ捨てられないようです。
演出を受ける2人
さらに続けるポイントは「プロフェッショナルにかかわってもらうこと」だとも。劇団すずしろの代表・秋田啓子さんは言います。
「素人ばかりだと、どうしてもレベルが低くなりますね。やはりプロの演出家や俳優さんにかかわってもらうことで、緊張感が生まれ、つねに上をめざすことができます」
やはり、仲良しの雰囲気だけでは人生のベテランには物足りないのかもしれません。そして、さまざまな決め事をプロに担ってもらうことで、人間関係に余計な摩擦を生まないようにしているのも「大人の知恵」ですね。さすがです。
かんじゅく座(新宿)では、団員さんから「もし車いすになったらどうすればいいですか?」の質問に、「そうなれば、その役を作ります」と返事をされているようです。
シニア劇団にかかわってきた方が要介護になった時に、ケアプランの課題欄に「歩けるようになる」ではなく「歩けるようになり、劇団〇〇の秋の舞台に立つ」と書かれるようになればと思った次第です。
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