支援困難ケースへのアウトリーチ
今年も最後となりました。みなさんにとって、この1年はどのような年でしたか?
私にとっては、年末のクリスマス・イブイブがとても収穫の多い学びの機会をもつことができました。
この22日(土)~23日(日)は、名古屋市の日本福祉大学大学院(鶴舞キャンパス)にいました。それは、第8回となる日本福祉大学ケアマネジメント研究セミナーに参加するためです。毎年参加していますが、今回のテーマは「支援困難ケースへのアウトリーチ」でした。
支援困難ケースについては、地域包括支援センター職員研修でも求められるテーマなので、ぜひ学びたいと思っていたテーマでもありました。
まずは大学側から、平野隆之教授があいさつ。続いて野中猛元日本福祉大学教授(現在は日本福祉大学フェロー)から「ケアマネジメントにおけるアウトリーチの重要性」について、問題提議も含めた記念講義がありました。
野中先生の講義風景
野中先生は、日本福祉大学の教授に就任した翌年から「ケアマネジメント技術研究会」を始められ、現場の相談支援職やケアマネジャーの育成に取り組まれてきました。
講義の最初に紹介された一節です。
「すべての幸福な家庭は、互いに似通っているが、不幸な家庭はどれもが、それぞれの流儀で不幸である」
(トルストイ著「アンナ・カレーニナ」)
幸福な家庭は、両親がいて、子どもたちが仲良く、経済的にも恵まれていて、笑顔が絶えない…まあ、このような家庭がどれほど多いかはさておき(笑)、「不幸の形はまさに多様で個性的である」という話をされました。そして、野中先生の話は明解でした。
研修レジュメのアップ!(1)
「複雑な事例がケアマネジメントの対象なのです」
支援困難ケースは、(1)利用者ニーズが複雑か、(2)必要な介入方法が複雑かで分類ができると…なるほどです。
わかりやいケースとしてホームレス支援を例にあげ、「ニーズは食・住まい・入浴・仕事などがあり、いざ介入となると住まい確保に保証人が必要となり、仕事では就労支援として職探しが必要となる」「だから専門職が連携することが必要となる」と、説明はさらに続きます。
これからの支援スタイルは、施設でなく「生活の場」でのサービス展開が必要となり、支援スタイルは制度への依存型でなく、制度が自立を促す(ここが重要ですね)「トランポリン型」が求められていると説かれました。その例として「外来ニート」の増加(外来通院しているが社会参加していない人で、その7割が家族と同居)を紹介されました。
研修レジュメのアップ!(2)
ですから、そこで重要となってくるのが、アウトリーチという手法なのです。外部からの「手の差し伸べ手法」といわれ、福祉・介護分野、子育て分野、医療分野なども積極的に取り入れるべき技術の1つであり、その基本となるのが「エンゲイジメント」というステージです。
「エンゲイジメントは関係づくりです。本人の緊張をほぐす、言葉を引き出す、居場所をつくる、自己決定を支援するなどです」
関係づくりの技術として保健師の手法(例:心配している・味方だと伝える、さっさと引き上げるが頻回に訪問する)や看護師の手法(例:具合が悪い時に助ける、試行錯誤につきあう)なども紹介されました。
研修レジュメのアップ!(3)
その後のパネルディスカッションでは、支援困難ケースの分析(ホームレス、高齢者、障害者、精神疾患)とともに、支援側の問題(課題)として専門職の力量・組織を含む環境・制度の脆弱さなどが深められました。
パネルディスカッションの様子
「時代は、病院医療から地域医療へ、福祉は措置から契約へ、介護は家族介護から社会的介護に向かっています」
自立を支援するためのアウトリーチ(関わりづくり)は専門職ごとに特徴があり、互いの能力と限界を知ることでチームケアはより強いものになる。生活支援をするために、専門職が「専門家」であり「社会人」として自立していなければならない…そう野中先生は結ばれました。
ではみなさん、よいお年をお迎えください<(_ _)>
フェイスブック始めました!(^^)!
http://www.facebook.com/shigeyuki.takamuro
【ムロさんの写メ日記】
大阪府地域福祉推進財団主催「ケアマネジャーの質問力~利用者(家族)のニーズと思いを引き出す~」
この研修参加者の8割は今年の試験合格者のみなさん。インテークやアセスメント、モニタリングにおける利用者(家族)との関係づくりとして質問力をどう活用すればよいかを研修しました。
今週のメールマガジン「元気いっぱい」第360号(無料)は「支援困難ケースとアウトリーチ~アウトリーチという「関わりづくり」~」(木曜日配信)です。メルマガは随時登録受付中です。
ケアタウンの公式HPではバックナンバーまで見ることができます。
※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。