ページの先頭です。

ホーム >> 福祉専門職サポーターズ >> プロフェッショナルブログ
高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

「若年性認知症の集いin習志野」に行ってきた!

先日の土曜日、私は千葉県習志野市にいました。それは「若年性認知症の集いin習志野」に参加するためです。サブテーマは、「働きたい!を叶え、地域をつなぐ介護のプロフェッショナル」でした。

続きを読む

この集いの発起人は、宅老所「いしいさん家」の代表・石井英寿さん。福岡県大牟田市での実践を見て、“認知症になっても安心して暮らせる習志野を作りたい”という思いから、開催を決断したそうです。

12.12.10-1.gif


第1部は事例発表です。3人が登壇されました。

最初の事例は、町田市で次世代型のデイサービス「DAYS BLG!」を展開する前田隆行さんです。「仕事づくり」をキーワードに、若年性認知症の方へのケアを進めています。

「ここでは、利用者と呼ばずにメンバーと呼んでいます」
「今の高齢者は、忍耐が美徳の人たちですが、これからの団塊高齢者は、選べる自由と満足度が求められると思います。いかに動機づけるか。その1つが送迎車です。ついこの間まで、車を運転してきた方々なので、送迎車も「オッ!」と思ってもらい動機づけになるようにと、外車のBMWで行っています。もちろん中古ですけど(笑)」
 
「DAYS BLG!」では、認知症ケアを、仕事づくりの視点からさまざまな試みで行っています。

「元植木職人の人が、また庭の剪定をやりたいとおっしゃるので、事務所の大家さんの庭の剪定をお願いしました。すると、はしごを使って、一番てっぺんまで上がってしまいました」
「玉ねぎの薄皮むきも仕事になっています。60個をむいて約600円。レストランや給食センターからの要望で始めました」
「元学校の美術の先生は、似顔絵描きが得意なんです。子どもたちの要望に合わせて、持参したアイドルの写真と一緒に2人の似顔絵を描くので、大評判になっています」

まさに仕事が「ケア」になっています。


2番目の事例は、大牟田市の大谷るみ子さん。「まちで、みんなで認知症の人を包む」がタイトルです。

大牟田市が始めて、今では全国で一大ブーム(?)となっている「徘徊模擬訓練」について発表されました。
“明日は我が身”のための訓練となっていて、徘徊SOSネットワークの愛情ネットには4000人が登録。ひとたび、誰かが徘徊で行方不明となると、全員にメールが配信されるといいます。

また、若年性認知症の方々を中心に活動している「ぼやき・つぶやき・元気になる会」についても紹介。このすばらしいネーミングは、参加されている当事者の方々が命名したそうです。
集まりの「場づくり」は「笑える」場づくりでもあり、当事者の方にとっても、心のリハビリになっているという発表がありました。


続く第2部は、トークセッション。パネリストは、若年性認知症の当事者の方たち3名と蒔田隆二さん(医師)、古川雅子さん(ジャーナリスト)、そして前田さんと大谷さんです。

当事者はいずれも男性で、Nさん(60代前半:元行政職員)、Sさん(60代半ば:元システムエンジニア)、Aさん(60代前半:元塗装職人)と、バリバリ仕事をされてきた方たちです。

当事者の方たちが語られた、印象的な言葉を紹介します。
Sさん「私は毎日、パソコンで日記を書いています。フェイスブックもやっています。糖尿病で自己注射をしているので、お薬カレンダーに注射針を入れて自分で管理しています」
Nさん「私は趣味の写真を撮りに行くのがとても楽しみです。他には、施設の有償ボランティアに5年通っています」

“先回りされるケア”はとても嫌だ、困ると、3人は話されます。
Sさん「いいケアというのは、できないことをさりげなくするケアだと思います」
Nさん「もっと本人の願っていることに着目してほしい。折り紙や風船バレー、子どもがやるドリルの計算なんかつまんないです」
Aさん「できることはたくさんあるんです。でも自分でやろうとすると後ろから手を出される……これが嫌なんです。特に若年性認知症とわかると、皆さんがよってたかって手助けをしようとするのは困ります」

認知症の方への声かけのヒントとして、Sさんが勢いよく話されました。
「認知症の人に対し、『~しましょう』ではダメです。『~をやってはどうですか?』『~を試してみませんか?』でないと」
まさに“決めつけのケア”でなく、本人に提案して“選んでもらうケア”を、当事者たちが求めていることを話されたのでした。


若年性認知症の方へのケアは、「お世話型」「お楽しみ型」「勉強型」ではなく、「仕事型」であることで、より積極的な動機づけができるわけです。
働くことが「ケアになる」のは、何より、自分が身につけた能力を発揮できるからなのでしょう。そして、そのことが周囲に役に立ち、周囲から「感謝」が生まれることで、社会の一員であることを自覚できるのだと思います。


第3部では、ドキュメンタリー映画「ただいま~それぞれの居場所~」が上映されるなど、テンコ盛りのシンポジウムでした。


【ムロさんの写メ日記】


東京都府中市のケアマネジャー勉強会「質問力と分析力」。ついつい力が入る私です。

12.12.10-2.gif

広島市西区のケアマネジメント勉強会「伝える力~書き方編」。ちなみに前回は「話し方編」でした。広島県介護支援専門員協会では「生涯学習手帳」を作成し、研修ごとに押印をしています。

12.12.10-3.gif


今週のメールマガジン「元気いっぱい」第358号(無料)は「ケアと働くこと」(木曜日配信)です。メルマガは随時登録受付中です。
ケアタウンの公式HPではバックナンバーまで見ることができます。
Facebook始めました!(^^)!


コメント


高室先生、お久しぶりです。

いつも先生のブログ楽しみに読ませていただいています。
今回の若年性認知症の取り組み、とても興味深く読ませていただきました。


来年、私自身、認知症地域支援推進員の研修を受けます。
その中で、若年性認知症の取り組みなどの講義もあるそうです。
その予習で書籍などでどんな取り組みが全国的に行われているのか調べているところでした。

【働くことが「ケアになる」のは、何より、自分が身につけた能力を発揮できるから。
そして、そのことが周囲に役に立ち、周囲から「感謝」が生まれることで、社会の一員であることを自覚できる。】

これはどんな人を支援する際にも大切なことになるようにあらためて感じました。

ありがとうございました。



投稿者: 北海道砂川のノグチです。 | 2012年12月12日 14:56

砂川のノグチさん、お久しぶりです!

砂川市研修会のこと、いまでもよく覚えています。

認知症地域支援推進員の研修を受けられるのですね。頑張ってください。

若年性認知症と「仕事」はとても親和性があるように思います。

ぜひとも砂川から、新しい認知症ケアの実践を発信してください。期待しています!(^^)!


投稿者: たかむろ | 2012年12月18日 12:20

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

コメントを投稿する




ページトップへ
プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

【高室成幸さんの最新刊】
『ケアマネジャーの質問力』
著者:高室成幸
定価:¥2,100(税込)
発行:中央法規出版
ご注文はe-booksから
3172.jpg


bn_caretown.jpg
メニュー
バックナンバー
その他のブログ

文字の拡大
災害情報
おすすめコンテンツ
福祉資格受験サポーターズ 3福祉士・ケアマネジャー 受験対策講座・今日の一問一答 実施中
福祉専門職サポーターズ 和田行男の「婆さんとともに」
家庭介護サポーターズ 野田明宏の「俺流オトコの介護」
アクティブシニアサポーターズ 立川談慶の「談論慶発」
アクティブシニアサポーターズ 金哲彦の「50代からのジョギング入門」
誰でもできるらくらく相続シミュレーション
e-books