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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

介護職員の定着化と“働きやすさ”

施設の人材マネジメントの話をする手前、人材育成の本はちょくちょく手に取っています。

新書の場合、つい10年前は「3年で辞める若者たち」という本が売れたのに、今は「会社は辞めるな」という本が読まれています。

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また、世の中が景気がよいと、転職してステップアップや起業本(これからアンタも社長さん)がもてはやされますが、いったん景気が下降気味になると、社内人脈の活かし方や正社員のめざし方などの本が注目されることになります。


さて、この介護業界ですが、「転職の割合が高い」というもっぱらの評価です。その理由としては、「賃金」と「人間関係」が筆頭に挙げられています。

まあ人間関係は、どこの分野でも似たり寄ったりでしょう。
では、賃金はどうかというと、賃金の上昇が、職員の定着化に効果があると言われますが、それだって、介護報酬が上がれば何とかなるなら、いずこの職場もアップするわけであり、「どこの職場も賃金は同程度」であれば、職員の流動化は起こるわけです。

そこで思うのは……小生は20代の時に数社の転職を経験し、30代になったときに「とりあえず10年はここにいよう」と働いてきた身なんですね、実は。ちょっと変わり種な働き方(詳細については省きます(^_^;))をしてきた身として、いつもこう思うのです。

――本当に給料が低いから定着しないのか?


研修などで、このような問いかけをすることがあります。
「A施設は、地域では給料がかなり高めですが、管理者は現場を見ずにほったらかしです。B施設は、お世辞にも給料は高くなく、正直低めなのですが、管理者も汗をかき、現場が働きやすい環境づくりにがんばっています。さて、あなたはどちらで働きたいですか?」

いささか、あざとい質問ですが、多くの方は「B施設がよい」と手をあげます。
そりゃそうですよね。現場丸投げほど、働いていて疎外感を感じることはありませんからね。


私は、介護・福祉の現場に対し、「働く人が大切にされているだろうか?」という基本的な疑問を持っています。

私の仮説(ちょっと一方的かもしれませんが)は、「働く人が大切にされていない」です。
むしろ「介護は心だ、やさしさだ」「福祉は愛だ、奉仕の精神だ」と唱えている理事長ほど、私はちょっと引いた?目で見るようにしています。
本当に本心からそう思っているのかな? 職員まで一様に思っているのかな? だったら介護の仕事は無償の愛でやれということかな? と……。

なぜか。

そのような、一見美しい標語を唱えながら、職員たちには温かい言葉をかけずに、現場の職員のつらさに耳を傾けることがあまりにされていない実態があると感じるからです。

しかし、給料だって出すのには限度がある。ならば働きやすい職場とは何でしょうか?
職場の人間関係? これも人の出入りがあれば、そのバランスはすぐに変わっていきます。


考えるヒントは、「休める空間づくり」です。

わかりやすい例を一つ。
築15年以上の施設などでは仕方ありませんが、比較的新しいはずの施設の休憩室が、どうしてこんなに狭いのだろう? などという疑問を感じることがあります。

もちろん、国の基準は満たしているのは十分承知しています。
しかし、感情労働でヘトヘトの職員の皆さんが、入居の利用者さんから離れて「ホッとリラックスできる空間」が、ほとんど用意されていないことに、驚きを覚えるのです。

これは先進的なケアを実践している施設でも似たり寄ったりで……(>_<)。


そんななか、私が「さすが!」と思ったのは、愛知県名古屋市の某社会福祉法人です。そこは7つほどの施設を持っており、いいなと思ったのは一昨年に建ったユニット型特養を見学した時のこと。

広いリラックスルームに休憩室。もちろん自販機があり、目の先には広いお庭が。利用者さんの視線もないので、ゆっくりと気分転換ができます。観葉植物も目に鮮やかでした。

また、岐阜県にある未来工業という会社の創業者・山田昭男さんは超ユニーク。
「ほうれんそう」は禁止、面接は現場任せ、70歳定年制とすべて型破りですが、不景気でも業績は右肩上がり。
「日本一社員が幸せな会社」としても有名になっています。

その山田さんのアイデアの1つが、「5人集まれば、クラブ活動費月1万円の補助。審査なし」。
人生を楽しめ、幸せを感じてがんばってくれ、ということでしょう。
「働きやすさ」は「人間関係づくり」にあり、を実感するエピソードです。


もちろん、休憩室など、いまさら建ってしまっているものについては、どうしようもないという声もあるでしょう。
しかし、私は、働く人を大切にする環境づくりへの努力によって、改善される職場のストレスはあると考えています。


【ムロさんの写メ日記】

新潟県の社会福祉協議会福祉人材センター主催の研修「伝える力~あなたの話し方はどうして伝わらない~」です。2日間の研修でした。

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コメント


はじめまして。

介護職を、させていただいています。まだ駆け出しですが毎日あくせくしております。

わが社のケアマネジャーはっきりいって、あぐらかいています。現場には足をはこばない、ねぎらいの言葉もなし。貴方たち、いい加減にっと毎日思います。逆に言えば反面教師(笑)なんでしょうけど。あんなケアマネにはなりたくないです。


投稿者: ゆきんこ | 2012年09月25日 21:08

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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著者:高室成幸
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発行:中央法規出版
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