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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

ささやかな祈りと黙とう

 1年ぶりの3月11日でした。
 そして、東日本大震災から365日ぶりの今日です。
 もう1年……。
 まだ1年……。
 それぞれに言い方はあるでしょう。
 これから続く遠い復興への道のりに思いをはせると、「まだまだ1年」なのかもしれません。

 東日本大震災の地震と津波は、街を壊し、押し流しました。
 そして福島原発を壊し、放射能汚染という「想定外」の尋常でない被害は、今も福島の人たち苦しめています。

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 3月11日午後2時46分……。
 被災地だけでなく、日本国中で「黙とう」が一斉に行われました。
 だれが強制したわけではなく、どこからか呼びかけがあったわけではありません。私たちができる「ささやかな祈り」にも似た「1分間の黙とう」は、格差社会という今の時代を生きる私たちに、ひとつになれる「ささやかな誇り」となったように思います。

 被災地や避難地から届く当事者となった方々の言葉の重さ……。

 生き残った自分を責める日々から、歩みだすことを決めたことを、不慣れなインタビューにもていねいに言葉を探るように語る被災された方々……。
 痛みに耐え、つらさに耐えることだけでなく、生きていること・生かされている喜びに感謝できる言葉が、とても深く伝わってきます。

 南三陸町の菅野医師(32歳)がNHKのインタビューで語っていました。
「目の前に支えるべき人がいるから、私も支えられました」
 私が一人だったら絶望していたと思います、とも。

 真っ暗な病院で次々に亡くなっていく人たち……しかしパニックになることなく残された患者さんを、わずかな医療機器と薬で治療しつづけたことへの質問でした。

 かつてアメリカの黒人解放運動に立ったキング牧師は、1963年のワシントン大行進で次のような演説をしました。その1節です。

「I still have a dream. It is a dream deeply rooted in
the American dream.」
(訳:それでも私には夢がある。それはアメリカの夢に深く根ざした夢なのである)

 アメリカを「日本」と読み換えてみるとどうでしょう。
 日本人に深く根ざした夢(誇り)が、東日本大震災と福島原発事故を乗り越える「糧(かて)」になるのではと、私は願います。

 戦後の日本が変わる「潮目」の2年目に寄せて……。


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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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