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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

102歳のツーショット

 これまで出会ったなかで最長命の方は、何歳だったでしょうか。私の今までの記憶ではせいぜい90歳ちょっと。お話をできる90歳代の方はいらっしゃらなかったですね。多くは、特養でした。寝たきりになった方のベッドを「あの人は93歳です」と紹介してもらうのがパターンでした。

 先週、私は今まで出会ったなかで最長命の102歳の百世さんと出会い、会話を交わすことができました。もちろん、普段のままの会話で楽しくもあり、笑いもあり、微笑ましくもあり。
 その場所は愛媛県松山市の宅老所あんきでした。

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 お会いした百世さんと私のツーショットです。


 人間には寿命と呼ばれる「生きる時間」があります。よく平均寿命なる言い方がありますが、あくまでこれは平均値であり期待値です。いわば0歳から死ぬまでの平均した期間です。国際的には日本はぶっちぎりの先進国です。統計的には乳児死亡率が少ないことが影響しているのですが、実際には100歳の方は本当に増えています。

 平均寿命より前に亡くなった人は「短命」といい、原因には病死・事故死がありますが、他殺と自殺もあります。もちろん不審死もあります。平均寿命が長くなると、人生の「ものさし」も変えなくてはいけません。かつては「人生60年」といっていましたが、これからの日本社会はリアルに「人生100年時代」を実現しそうになっています。

 私が京都の出身と百世さんに話すと、「私の娘がなぁ……」とすぐに関連した思い出話をされます。それがまたにこやか。ただ、10分程度後に話の続きを持ちかけると、再び同じ話が……いくども同じ話をしながらも、にこやかな笑顔……。
 これも宅老所あんきのみなさんのケアの細やかさ!と実感しました。

 私は短命という言葉の反語として「長命」という用語を研修などでは、心して使うようにしています。
 長寿社会でなく長命社会。
 長寿ということで長生きすること自体を無責任に「寿」と決めつける感覚にNOと言いたい気持ちがあるからです。長生きすることが目的になったときに、本人(家族)が了解しない、無用で無意味な終わりを決められない「延命治療」が常態化する危険があるからです。
 がんと闘うという言い方がありますが、老いと、認知症とどう闘うのでしょうか? 勇ましい用語で事の本質が隠れてしまうことは、よくあることだからです。

 健康で長命を生きる「アンチエイジング」というアプローチが昨今注目されています。一方で、これは加齢を否定する考え方だという視点から「サクセスフル・エイジング」を唱える人もいます。
 いずれも加齢へのアプローチの多様性ですね。今後は実年齢より「10歳の若さ」を保てるエイジングケアが注目されるでしょう。

 それはさておき、そんな言葉も知らずに102歳を迎えた百世さんの「微笑み」は値千金のゴールドスマイルでした。よく話をされるし、なんとよく食べる!そうです。すごいですねぇ、しっかり食べることができる!!

「天命」とは、天つまり神?が決めた命の期間。夭折した人や惜しまれて亡くなった人の他界(死亡)を天命ということで、残された人びとが納得したのでしょう。
 では百世さんの長命な天命の理由は?
 神が与えた長生きの理由は?

「百世」という名を親からもらった時から決まっていたのでしょう。 そして、その命の輝きを「ほほえみ」で支える宅老所あんきのみなさんの認知症ケアの奥深さがあるから。
「和みの空気」にふれた1日でした。
 


ムロさんの写メ日記

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宅老所「あんき」を主催する中矢暁美さんです


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手作り車いすに座らせてもらいました

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やさしい微笑みをたたえるお地蔵様

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兵庫県猪名川町の研修会。隣の川西市、宝塚市、伊丹市など阪神地区からも参加がありました


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研修会を企画準備した4人です。向かって左から、島村雅さん、中川涼子さん、山本よしえさん、菅野淳子さんです

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猪名川町のマスコットキャラクター「いなぼう」です

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高齢者や児童虐待予防のキャンペーンで作ったそうです

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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