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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

連載楽屋話~伝える技術~

 前回に続き「伝える」ことを書きます。今回は月刊『ケアマネジャー』8月号の連載楽屋話です。
「伝える」ことに興味を持ったのは、もともと私自身が、あまり伝えることが上手ではないと、18歳の頃に自覚したからです。当時、私は京都から名古屋の大学に進み、そこでショッキングな出来事に出くわします。
 関西弁ではない、もちろん京都弁ではない言葉を話す人たちです。いわゆる「おみゃ~さんの場合は・・・」と、みゃぁみゃぁと話す名古屋言葉に唖然としたものです。

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 何を言っているのか、ようわからん。それに早口でまくしたてられるとサッパリなのです。それに九州は鹿児島の奴がいたり、北海道からやってきた奴もいて、言葉の意味だけでなくニュアンスが伝わらないのには、最初は辟易としたものです。

 そして、自分の話し好きは自認していましたが、公の、そうですね、30人以上の前で話し始めると頭が真っ白になる自分もいました。100人以上になるともうダメです。あがりっぱなしになり、ただでさえ早口なのに、それが加速し、さらに話の筋立てもバラバラになり、一番まずいのは、声がかすれだすのですね。やがて喉が痛くなり、20分も話すと、声はガラガラという経験を何度もしていました。

 伝えるのがヘタというより、話すのがヘタだったんですね。それから10年近く、大勢の前で話す自分にすっかりと自信をなくしていた時期がありました。しかし、前職時代のことです。ある職能団体の理事などを数年間任される時期があり、アメリカで開催される世界大会に参加することが数年続きました。

 3日間のスケジュールの中で、世界の参加者が持ち時間15~20分でスピーチをするセッションがありました。それも次から次へと話し手が変わり、どのスピーチも圧巻なんです。ひと言でいうなら「ハートをわしづかみ」の印象なのです。それが毎日2時間程度あるのです。
 会場を埋め尽くす8000人近くの人々を前に、スポットライトを浴びながらスピーチする姿はとても存在感がありました。
 静かに話しながら、やがて声が大きくなる抑揚のある話し方。ある時はほほえむように話し、そして腕を大きく開き、笑い、怒り、そして悲しむように話す。時には歌うように語り、聞き手に全身をつかって伝えるパフォーマンス……
「どうしてこんなに感動的に話せるのだろう」と、いつもまぶしく眺めている自分がいました。

 やがて、私も日本の大会で話したり司会をしなければいけない羽目になり、さて、どうしようと悩んでいた時に、心に浮かんだのは、ボストンやシアトル、シカゴ、ニューヨークの大会で目に焼き付いたプレゼンテーターの姿でした。
「そうか、あれをイメージしてやればいいんだ」
 今思えば大それた思い(勘違い)ですが、私の中にすばらしい話し手のイメージはそれしかなかったのです。いわば「ロールモデル」ですね。

 けっして同じように話せているわけではありませんが(向こうは英語。こっちはバリバリの日本語ですから当たり前ですけど(^_^;))、なぜか、それをイメージすることで、ゆっくりと焦らずに落ち着いて話すことができました。
 そのうえ、終了後に「うまかったよ!」とほめられて(お世辞だったんでしょうが!)、私はかすかな自信を持つことができました。

 それから「話すこと」に集中するのでなく、「伝えること」に気持ちを集中できるようになりました。するとうまく話せているかどうかという自意識は消え、伝えたい一心で話せる自分がそこにいました。

 今回の連載は伝える技術のノウハウを書きました。最初に「○○は3つあります」と整理して伝える方法や、聞き手に質問して巻き込む方法などを紹介していますが、その基本は「伝えたい心」があるかどうか。
 でも技術がなければ、自己流だったり自己チュウだったり。なによりバラツキがあり、テーマによってはとても伝わらなかったり。

 そんな苦い体験も含めてみなさんに伝えられればと思いながら、今日も「伝え方」の研修会をやっています。


ムロさんの写メ日記

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愛知県西尾市の研修会。テーマは「相談援助職とメンタルマネジメント」でした

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会場の方に話しかけてみます


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チャレンジシートを書いてもらっている時間中に司会者の方と打ち合わせ


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私の愛用のレッツノート。これで3代目です


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iPad2で、雑誌の紙面を紹介しました


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京都の上賀茂神社の市の様子。プロとアマが入り乱れての市でした


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この座れる場所があるのがいいですね。のんびりしています


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そこで見つけた革製のスマフォのケース。なんとiPad2用の革製ケースもありました。「スマフォは3,800円でiPadは10,000円です、いかがですか?」と声をかけられたのですが……(^_^;)


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コメント


 こんばんは。職場で月刊ケアマネージャーとっています。七人のケアマネジャーで読んでいます。いくつか出し合って会議で話し合いをしています。
 伝える技術はさすがに難しいですね。相手にどんな風に話したら伝わるのかです。理解しているかが心配です。やはりipad2で取り組むとわかりやすいですね。なかなか雑誌の紙面はわかりやすい。伝える心は大事。いつも苦戦の日々ですが頑張ります。これからもご指導をよろしくお願いします。


投稿者: スズ | 2011年08月06日 00:02

スズさんへ

 返信、遅くなりました。
 7人のケアマネさんで回し読みならぬ輪読会などをやると、またメンバーの心も一つになっていいかもしれませんね。

 伝えることは、本当にむずかしいです。正確に話したつもりが、違ったように解釈されていることがあとでわかって冷や汗ものだったりしますよね。

 文章だって、しっかり書いたつもりが、読み直してみると、主語は抜けているし、主観的な書き方だったりで、結構、私も赤面状態のことがあります。

 だから、文章では「見せ合いっこ」を提唱するようになりました。まずは他人に読んでもらって指摘してもらうことで発見できれば御の字ですもんね。

 これだって伝え方の工夫のひとつです。何度も読み返したって、しょせんは自分で発見できることは、わずか。他人に見てらいましょうといっても楽しくは伝わらない。そこで「見せ合いっこ」という、ちょっと子どもじみているけど、お互い様的な印象を醸し出すことを狙って、キャッチコピーのようにしました。

 またスズさんの書き込み、お待ちしています


投稿者: たかむろ | 2011年08月14日 23:18

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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