心のつらさ~虐待防止? 予防?
メルマガ「元気いっぱい」285号には、先週開催された第10回ケアマネジメント学会のことを書くとお知らせしましたが、それは次週にします。
実は昨日、2人の保健師さんが新宿御苑の事務所にやってこられました。神奈川県横須賀市で10月に行う予定の「高齢者虐待」研修会の打ち合わせです。狭いながらの事務所で、まずは名刺交換です。
「今回、横須賀市さんは、どうして私に虐待テーマの研修を依頼されたのですか? なにかご覧になりましたか?」
「2年前、神奈川県主催の虐待研修をされたときに、わが横須賀市の保健師が参加をしていました。とてもわかりやすい研修だったので、今回お願いしたいと思いました」
横須賀市は虐待対応では厚生労働省のモデル事業にも積極的に取り組み、その実践が全国的に注目されている自治体です。
「実は昨年度から、虐待相談窓口の名称を変えたんです。それまでは『介護者のメンタルヘルス相談』という名称でした。すると、どうしても精神疾患の相談窓口と思われる方が多いのがわかりました。そこで『高齢者・介護者のためのこころの相談』としました。すると、相談が2倍に増えたんです」
さらに、虐待事例を担当する2人の名刺には「家族支援担当」と刷り込まれていました。市民や生活者の立場に立った配慮はすばらしいと伝えました。
実は横須賀市では、午前中は市民向けの虐待向け研修を行い、午後はケアマネジャーなど専門職向けの研修を依頼されています。つまりダブルヘッダーですね。
午前中の研修テーマは「オトコの介護・オンナの介護」。虐待を性差から考えようという内容です。
私は打ち合わせを進めながら、4年前にはじめて虐待研修の依頼を受けた時のことを思い出していました。
「どうして虐待という用語を使うのだろう。言われた当事者は、そんなつもりはないと反論することは多いだろう。それに虐待防止では、虐待が起こることを前提にしている印象になるし。ましてや虐待発見というと、見つからないように、わからないように、虐待行為を隠すことになる。すると、隠す側と発見する側のいたちごっこになってしまって、解決にはならない…どうするか」
そこで私は「虐待+予防」というコンセプトにすることにしました。介護を続けていると、ときには虐待的な感情や行為を起こしそうになることもある。でもだれもが、そうなってしまう自分になりたくないはず…ならばガマンすることでなく「予防」することで、そんな感情や行為を緩和することができるのではないか。メタボも高血圧も防止でなく予防を唱えているのだから…それに予防の話なら、その当事者であっても聞く耳はもてるのではないか。
打ち合わせのなかで、家族社会学から虐待について話したいと希望を伝えました。その理由は、虐待は「家族関係」のみにおいて象徴的に起こる事象だからです。厳密な意味では同居する他人等で起こることもありますが、ここではあえて限定します。
家族だったら、どうして虐待にいたるのか。家族だとどうして腹が立つのか、家族だとどうして手を簡単に上げてしまうのか。
「家族という感情」の危うさを明らかにしない限り、虐待の世界を語ることはできないですねと話しました。
それと性差です。虐待者のトップが息子、次が夫という実態。世間では「鬼嫁」がブームですが、嫁が虐待するケースはかなり低い。婿はさらに低い。それは横須賀市の調査でも同じようでした。
「ですから虐待を語るとき、介護の切り口だけでなく『性差の切り口』からも紐解かないとその全体像も浮かび上がってきません」と。そんな話をしていると、あっという間に1時間が経過していました。
今週の金曜日は、新潟市で高齢者虐待をテーマにした地域包括支援センター職員対象の研修会です。そこでも横須賀市の実践を紹介したいと思った打ち合わせでした。
ムロさんの写メ日記
青森県十和田市の研修会です。テーマは「対人援助に活かす質問力」でした
静岡県共同作業所・わの管理職研修会です。テーマは、ファシリテーションです。参加者のなかに聴覚障がい者の方が3人参加され、手話のボランティアさんが3人
研修会の様子です
研修会テーブルの上のペットボトル。おなじみの光景です
ケアタウン東京スクールに来た徳丸さんの携帯。85歳のお父さんに携帯メールのやり方を教えたら、なんと今年の正月におめでとうメールが届いたそうです
拡大した画面。絵文字まで入っています。すごいですねぇ
長崎の雲です
長崎の雲の上の空です
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