モニタリングの勘所~変化に気づく~
今回、厚生労働省から示された「ケアプラン有料化」の提案。全国の介護支援専門員にむけて日本介護支援専門員協会が緊急アンケートを行い、反対の意向を示しました。この動きを受け、与党の民主党案では、ケアプランの利用者負担の見送りを決めたようです。
ここで勘違いが起こったのは、ケアプランとメディアが矮小化して打ち出したことです。ケアマネジャーのみなさんが行っているのはケアプランの作成ではなく、居宅介護支援というケアマネジメントです。ケアプランはその一部であり、実際は月1回の訪問(モニタリング)と日々のサービスの調整や事業所への情報提供と共有化を行っています。
せっかくの機会です。利用者(家族)だけでなく、国民のみなさんに、これらの業務内容について知ってもらう絶好の機会ではないのでしょうか? そうすることで、「それだけの業務をやっていて、月○○の報酬では低すぎる」と、介護報酬アップへの後ろ盾を得ることになると思います。
私が6年前に出版した『ケアマネジメントの仕事術』(中央法規)のなかでは、「みなさんの業務の中心はモニタリングです」と述べ、ケアマネジメントサイクルのなかでもっとも多くのページとなりました。
では、モニタリングとはどのような業務を行うのか。理論上の定義はさておき、モニタリングする対象は「利用者・サービス・環境」の3つと私は考えます。家族は環境のなかに入ります。
ではモニタリングする視点は…?
第1は「変化」をモニタリングする。利用者(家族)の心身上の変化を「暮らしの変化」の視点から把握することです。ADLであれば移動・排泄・食事などがあり、IADLならば掃除・洗濯・料理などにどのような影響があるのか。反対に、暮らしの変化から心身上の変化を察知する視点も重要です。
第2は「対応」をモニタリングする。利用者本人がその変化に対して、どのように対応をしているか。なんとか工夫しようとしているのか、なすすべもなくそのままにしているのか、手伝ってもらいたい意思があるのか。
そして第3は「原因」をモニタリングする。対応できないのは、体力の低下(例:低栄養、脱水?)、認知力の低下(例:やったことを忘れる、手順が混乱する?)、意欲の低下(例:やる気がわかない、おっくう?)、それとも身体機能の低下(例:握力が低下して手すりが握れない?)など、原因の手がかりをモニタリングします。
モニタリングの時間はどれくらいを充てていますか? 20分ですか? それとも40分程度ですか? 短いとよくない、長ければいいというわけではありませんが、果たして20分程度で1か月間の状況をモニタリングできるでしょうか?
加えて私は、「これまで」だけでなく「これから」を予知予見して、利用者(家族)と話し合うことをすすめています。終わったことへのモニタリングだけでなく、これから始まる1か月間への「見立てと手立て」を相談することも大切な業務です。
今ならば寒い冬をどう乗り切るか、年末をどう過ごし新年をどう迎えるかが、大切な話題になるはずです。必要ならば、利用者(家族)が抱く不安を各サービス事業所に情報提供することで、ケアチームで支えていく事が可能となります。
利用者(家族)の方々にとって、もっともわかりやすいカタチが「モニタリング」です。いかにモニタリングを中味濃く行えるかがまさに問われていると思います。
ムロさんの写メ日記
岐阜県主任介護支援専門員研修「事例研究及び事例検討」の演習の様子です。机のカタチもさまざま。これは囲み型ですね
こちらは三角形。意外と全体が見やすいんですね。座る位置も毎回変更します
苦労して書き上げた事例提供シートです
三重県精神保健福祉士会の10周年記念研修会。コミュニケーションの技術とファシリテーションの技術を学んだあとに演習です
長崎に向かう機内から眺めた雲海です!(^^)!
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コメント
業務遂行上のスキルの向上はもちろん必要と感じますが、ケアマネジャーとして行き詰るところはやはり「交渉力」でしょうか。
担当者会議でも連絡調整する上でも、人間は十人十色であるように関係者の性格でコーディネイトやファシリテートするのが困難なことも多いです。
きちんとした技術云々の研修は結構受けているはずなのに、現場でそれを生かそうとしない、言ってみれば我の強い、改善しようともしない性格の関係者が多いことも事実です。
そういうことでよく悩みます。
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