介護保険制度見直しと両論併記
平成24年度の介護保険制度の改正のことです。これは、だれがその「素案」をつくるのか、みなさんも興味あるところだと思います。
素案そのものは、厚生労働省の老健局が中心となって作成され、国会に提出され、さらに議論がなされるという段取りとなります。その前に「広く国民の意見」(パブリックコメント)をくみ取り、「関係各団体」や「識者」の議論を経るための場として「審議会」を設け、その部会でさらに突っ込んだ論議をするという流れで進んでいます。
この「審議会」という仕組み。私の記憶が正しければ、中曽根内閣の時に、文部省(現文科省)が教育改革を進めるために、外付けで「中央教育審議会」という、省でもない、といって民でもない「曖昧な議論」の場を作ったことが始まりだったと思います。これが別名「中教審」という言い方でメディアが一斉に報じたものでした。
注意したいのは、このネーミングです。審議しているのだから決めたわけではない。話し合いをしているだけで、決定しているわけではない。「協議会」とせず「審議会」としたところに命名の妙があります。つまり、協議というお話し合いではないよ、決定のその手前までの議論はしますよ、あとは国会でよろしくねと暗に示しているのです。
そうなると、中教審でどのような議論がされたかで先々がおおよそ決まる、結果的に「決まってしまう」いう流れができあがりました。まさに「パブリックなリレーション形成」(社会全体の合意形成)としては実にうまい手法として日本に定着したのではないでしょうか。
では、介護保険制度ではどうか…
社会保障審議会もいくつかの部会にわかれていて、話し合われたのは介護保険部会。今年の5月から13回にわたって審議が行われ、その最終結果が11月25日にリリースされました。
今回の特徴は「制度発足丸10年」の節目にあたること。制度の定着度、負担と給付、サービスと人材、そして地域におけるケアシステムなどが広く話し合われました。
単身・重度の要介護者等への対応から要支援・軽度の要介護者へのサービス、地域支援事業、住まいの整備、施設サービスから認知症を有する人への対応、家族支援などを取り上げています。
ケアマネジャーのみなさんにとって気になる、ケアプランとケアマネジメントの質の向上、利用者負担の導入、施設ケアマネジャーの役割についても具体的に踏み込んだ言及がされています。
細かい紹介は避けますが、今回の「意見のまとめ」は、なにかわかったような1つの文章にまとめ上げてしまうのでなく、賛成・反対などそれぞれについて「両論併記」をしたことです。語尾に「~を配慮すべきとの意見があった」「~は重要といえる」などの表記を行い、今後の議論(国会など)で何を配慮し議論しなければならないのかを印象づけているのでしょう。
それと、削除する文章は削るのではなく、残したまま「形式的なサービスではなく…」と横棒を引いて示すことにより、何が削られたかがわかるようになっています。これは評価できますね。
削除・加筆・訂正した文章は赤字になっているので、これもわかりやすい。審議会の討議資料でこのようになっているのを目にしたことはありますが、公開する文書でこのような「ナマな形式」はめずらしいと思います。
以下に抜粋した部分をご紹介します。
(利用者負担の導入)
○これに対し利用者負担の導入については、ケアマネジャーによるケアプランの作成等のサービスは、介護保険制度の根幹であり、制度の基本を揺るがしかねないこと、利用者負担の導入は必要なサービス利用の抑制により、重度化につながりかねないことなど、利用者や事業者への影響を危惧する強い意見があった。さらに、セルフケアプランが増加すれば、市町村の事務処理負担が増大することなどから、利用者や事業者への影響を考慮しつつ、慎重に対応すべきであるとの強い意見指摘があった。
いちど、下記のアドレス(第37回社会保障審議会介護保険部会資料)にアクセスをされて、「見直しに関する意見(素案)」や他の各委員の提出資料などをじっくりと読み、ご自身で判断されることをお勧めします。日本介護支援専門員協会が行った「利用者負担アンケート」もとても参考になると思います。
第37回社会保障審議会介護保険部会資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000x93i.html
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