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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

利用者(家族)の「意向」

 ケアプラン点検支援マニュアルやケアプラン作成の研修会では、まず最初にいくつかのケアプランの例を見てもらうことにしています。その例は、実際のケアプランに記載されている文章や、みなさんが参考にされているケアプランに関する本からの紹介です。
 どうしてそうするのか。
「ケアプランがなかなかうまく書けないんです」
「自分が書いていて言うのも変かもしれませんが、ケアプランに納得がいかない時があります」
「利用者さんや家族さんもわかっているのかなと不安になることも度々です」
 このような声をきくので、ならば実際にどうなっているのか見てみましょうと、いくつか実例を紹介して、いろいろ気づいてもらいます。

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 次に、研修用に持参してもらったケアプラン(個人情報を削除したもの)をご自分でチェックしてもらいます。この時に必ず起こるのが……どよめきです。そして……「私、やっています」「この○○のフレーズ、よく使っています」という感想が会場のあちらこちらで起こることに……

 今回はとくに「利用者(家族)の意向」欄についてご紹介します。
 まず多いのは「いつまでも自宅で健康に暮らし続けたい」という黄金のフレーズ。ケアマネジャーには金科玉条のように尊ばれているのかなと思うほど、よく出会います。
 私は、「この健康に暮らす」の具体的な中味を書かないと、あまりにも抽象的ですとズバリと指摘します。

 次にたくさん見るのが「デイサービスは楽しい」というもの。せめて、食事・会話・アクティビティ(カラオケ、習字、囲碁、折り紙など)など、具体的に書いてもらいたいもの。あれば、サービスを提供するスタッフやヘルパーさんはどれほどがんばりが報われるでしょう。ちなみにこれは「感想」であって意向ではありません。

 次に多いのは「訪問看護の方がいろいろやってくれて助かっています」というもの。これは感謝の言葉です。これ自体は悪くはないのですが、いろいろやってくれる中味を書くことで、「訪問看護は~までやってくれているんだ」と理解できます。しかしこれも意向ではありません。

「息子には悪いと思っています」「家族に申し訳ない」というフレーズ。これも多いですね。これはお詫びの言葉。何が悪いのか、どうして申し訳ないのか。具体的な記述はありません。

「○○ができないので情けない」というフレーズも。これは懺悔(ざんげ)の言葉です。情けない気持ちのなかで、「今後はどうされたいのか」が肝心です。それが書いていない。

 つまりは、感謝・お詫び・懺悔のフレーズのオンパレード。どうしてこういうことが起こるのでしょうか。たしかに利用者の方はそのように話されていると思います。相談援助職として大切なのは、「では、これからどのようにされたいと思われますか?」というもう一歩先の質問です。
 
 感想・感謝・お詫び・懺悔で書かれることは、すべて「これまで」のことばかり。意向とは「これから」のことです。これから1年間(なかには2年間?)をどうして暮らしていきたいか、1年後にどうなっていたいか。それが「意向」なのです。

 感想・感謝・お詫び・懺悔の気持ちを書くことは否定しません。それも利用者(家族)の言葉ですから。そこで終わるのでなく「これからに関する質問」ができるかどうか。それが肝心なのです。
 尋ねてみることで利用者(家族)の「思わぬ意欲や期待」、そして「不安・焦り・とまどい」を知り、その原因や要因となっていることをいっしょに考え、どうすればよいかを話し合い、それをしっかりとケアプランに反映させましょう。

 まずはケアマネジャーのみなさん、ぜひとも「利用者(家族)の意向」欄を自分でご覧になってみて下さい。

 そしてこのブログをご覧になった通所介護や訪問介護の事業所の方は、連携する居宅介護支援事業所のケアプランを「逆チェック」してみてはいかがでしょうか?


ムロさんの写メ日記

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埼玉県の社会福祉法人名栗園での「合同職員研修会」です。テーマは「職場の連携にいかすコミュニケーション術」です

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夕方5時からのスタートで、終了は8時30分。眠る人もいなくて?、しっかりと充実した研修会でした


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石川県介護支援専門員協会能登支部の研修会の様子です

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当日は、愛知県岡崎市!から中央法規出版の営業の尾崎さんが600㎞を飛ばして販売にこられていてびっくりでした


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懇親会のあった和倉温泉の旅館「能州いろは」さんの前で。向かって左から北山達朗さん、高名祐美さん、谷口広之さん、高橋昭二さんです

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お向かいには、あの日本で最高のおもてなしと名高い旅館「加賀屋」


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特別に案内をしてもらい、おもてなしの講師もつとめる仲居のリーダーさん(お名前を失念。すみません)とツーショット


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金沢駅から七尾駅に向かう車窓からの水田風景

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翌朝に案内をしてもらった輪島の朝市の様子。80歳以上の女性の方々が元気に野菜や漬物、山菜などを売っていました

今週のメールマガジン「元気いっぱい」第238号は「老人力は未知の力」です。ケアタウンの公式HPではバックナンバーまで見ることができます。  


コメント


ケアマネージャーのケアプランに関して、わかったようで何か違う。そんな作業的な悩みがなかなか抜けない今日この頃ですが。

5月末に自分の母親を自宅で看取りました。73歳で乳がんから、脊椎、肺に転移し覚悟の看取りでした。

その時にお願いしたケアプランの説明を受けた時に気がつきました。何を組んだかを沢山説明されるより、自分の(母親の)気持ちをどこまで一緒になって考えてくれているんだろうと。

おかげさまで、おむつ交換や食事介助に終始するヘルパーでなく、手を握って顔をみて最後までみんなで大事にしている雰囲気で旅立つことができ、本当にありがたいと思いました。


投稿者: 秋田のタカ | 2010年07月28日 14:48

秋田のタカさんへ

 メール、ありがとうございます。ケアプランの表記については、「なにか変だな」と思われているケアマネジャーの方が多すぎるように思います。
 それはワンパターン化?していることへの高い問題意識か、利用者(家族)の意向を十分に文字化できていないことへの「振り返り」か「ジレンマ」か。

 いずれにしても「納得いかない」感覚は大切です。「まあ、こんなもんかな」と思ってしまう感覚のほうがかなり問題ですからね。

 この5月にお母さんを亡くされたとのこと。たくさんの説明より一緒に考えてくれる「寄り添いの姿勢」がとても大事との記述、私も共感します。

 今回のお母さんのことを通して、より深みのある相談援助者となられること、期待しています。


投稿者: たかむろ | 2010年07月29日 16:44

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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