「感情労働」と対人援助職
先日、ケアタウン総合研究所主催の東京セミナーで「対人援助職と感情労働~メンタルケアと仕事モチベーション~」のテーマをとりあげました。
実は数年前から、モチベーションアップについての講演を依頼されることが多くなっています。その頃からでしょうか、「元気が湧いてくる話をお願いします」というお願いがあるのはどうしてなのだろうかと、考え続けてきました。
当時は、モチベーションアップの手法をまずは話していましたが、どうにもしっくりとこない自分がいました。
どうして対人援助や相談援助の仕事が疲れるのか…という疑問が湧いてきたからです。
どのように疲れるのか。それに燃え尽き症候群になるのはなぜ?自問自答はずっと続いてきました。
援助職の方には介護や福祉の仕事に社会的価値を見いだし、情熱を持って関わっている人が多くいます。流通や販売、製造業などに関わる人は、もちろん情熱をもって仕事をする人はいますが、どちらかというと、いわば「生計のため、給料のため」にがんばる人がほとんどではないでしょうか。
その点、介護・福祉の仕事は、社会的意味や社会貢献、ボランティア精神などが「素地」となっている人が多いのです。その人たちが「燃え尽き症候群」になる…これは奇妙です。やりたいことを仕事にできているのに、ストレスがたまるばかり…どうしてなのでしょう?
私の疑問にひとつの「気づき」をもたらしたのが、「感情労働」というキーワードでした。
この用語の提唱者はアメリカの女性社会学者A.R.ホックシールド。1983年に『管理される心-感情が商品になるとき』をアメリカで感情社会学の視点から発表し、日本ではわずか10年前、世界思想社から刊行されました。
彼女は、第3次産業の、特に接客に関わる労働者の「労働の質」を、肉体を主に使う労働(例:農業、漁業、林業、建設業)と頭脳を主に使う労働(例:弁護士、会計士、事務職)とは一線を画すものだと説きました。
「19世紀の工場労働者は肉体を酷使されたが、対人サービス労働に従事する今日の労働者は心を酷使されている」と説き、現代は感情が商品化された時代であり、その人の自我と心を蝕み傷つけると、具体的な例を上げながら分析していきます。
つまり労働には感情を主に使う労働(例:接客、販売、看護)があり、それを「感情労働」と定義づけたのです。
感情労働を分析し解説するために、俳優の演技方法との対比を使い、制服や身振りで行う「表層演技」と、気持ちや心理的作業から行う「深層演技」なる用語を駆使して説明しました。そして組織上の職務や業務、専門職の立場は「感情規則」にしばられており、「望まれる姿」と「あるべき姿」に感情を動員することで、本人の人格と労働が乖離していくプロセスを説いています。
これらを知ることで、感情を使うからこそ「精神的な疲れ方」は尋常ではないことや、特に対人援助職が抱える不全感の深さや燃え尽き症候群の原因が、とてもうまく整理することができます。
興味のある方は手に取られることをお勧めします!(^^)!
ムロさんの写メ日記
これが『管理される心-感情が商品になるとき』の表紙です
長崎駅構内を泳ぐ龍に圧倒されました。デッカイ!(^^)!
新宿西口のホテルヒルトン東京地下にある「ステッキ専門店 チャップリン」です。とにかくオシャレなステッキ(つまり杖)がたくさんあるので、ファッション感覚で選べる品揃えです。利用者や家族の方にご紹介してはいかがでしょうか?
お願いをして店内も撮影をさせてもらいました。店内のステッキ群
帽子も素敵ですね!(^^)!
新宿3丁目のドトールから眼下(大げさですね)を眺めます。
今週のメールマガジン「元気いっぱい」第226号は「ノーと言えない私」です。ケアタウンの公式HPではバックナンバーまで見ることができます。
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