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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

わかるということ

 ここ数日、初の裁判員制度を実施した報道がにぎやかです。従来のプロフェッショナルのみで行われてきた裁判のプロセスに、「市民感覚」を盛り込もうという、戦後の司法改革でも画期的なシステムです。
 「依頼されたら断ることができるのか?」
 「会社を休むのは有休を使うの? それとも給料は保証されるの?」
 「何歳までならいいのか?」
 「判決を出して、後々、被告人の恨みをかうことにはならないの?」
 など、率直な懸念・心配が語られました。
 いずれももっともなことです。プロは仕事ですから、何らかの報酬や給与が保証されています。ところが裁判員は日当5000円程度しかないのですから、このような質問も当たり前。さらにその後の影響を考えると、不安も当然にあるでしょう。
 裁判員を受ける方々は余程暇を持て余しているか、裁判に興味がある人だろうと思われていましたが、昨日、終了した後の記者会見に揃った男性3人、女性3人は、ごくごく普通の市民の方々でした。
 抽選制なのに、来られる方々の多さと熱心さにも驚きました。もちろん最初というのもあるでしょうが、法務省としての社会的な関心づくり(広報活動)は成功したといえるでしょう。

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 裁判員制度が導入されて、何がもっとも変わったか。それは法廷用語といわれています。とにかく専門用語のオンパレードで、「~のように思われる、推測される」といえばよいのを「~のように思慮される」と表現してきたわけですから。通常わたしたちは、音声で「シリョ」と耳に入ったのを、即座に「漢字変換」をして、その意味を理解しています。ところがその漢字が浮かばなければ、いつまでも「?」が耳に貼りついたままですから、それ以降の理解はさらに困難をきわめることになってしまいがちです。
 とすると、これまでの裁判では被告人にとってはチンプンカンプンの専門用語が乱れ飛ぶ裁判だったというわけ。自分が評決される場で、当事者が理解できない言葉が使われてきたことは「当事者不在」であり、とても問題です。

 「検事や弁護士のみなさんのわかりやすく説明しようとする姿勢がうかがえました」とある女性が語っていました。たとえむずかしい用語だとしても、わかりやすく話す「誠意」が、裁判員や法廷のムードを「身近なもの」にしたのでしょう。

 それと、弁護士の方の次のひと言が印象的でした。
 「あのナイフに関する質問は、われわれプロでは考えつかない質問でしたね」
 被告が殺傷に使ったナイフに関する素朴な質問でした。この素朴さが事件の全体像を鋭く裏付けることになりました。
 プロだからこそ専門的に推測し真実に近づくこともできるでしょうが、森を見ることを忘れてしまったりすることもあるのでしょうか。
 今回、意味深いと思ったのは、裁判官・検事・弁護士のみなさんが、市民感覚から浮かび上がる「事件像」に一定の評価をした点です。
 判決や量刑は「過去の判例」にもとづいておこなわれます。それが数十年前のものもあり、当時の社会情勢を考えると、現代にはちょっと通用しない判例もあると聞きます。
 プロだからわかること、市民の目だからみえること…そのバランスのなかで新しい法制度・法体系を「洗い直し」する作業がこの裁判員制度の特徴のひとつといえます。

 医療分野や薬剤の分野でも「わかりやすさ」に努力がされています。ケアマネジメントの領域でも、利用者(家族)に「わかりやすい」ことだけでなく、利用者(家族)にとって「使いやすい」(利用しやすい)システムになっていくことが求められています。
 その間でかけがえのない存在が「ケアマネジャー」なのでしょう。

ムロさんの写メ日記
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先週の土日に終了した第4期研修講師養成講座(初級)のみなさんです。第5期は9月に予定しています(キャンセル待ち)。第6期は12月に実施予定。ケアタウン総合研究所のサイトをご覧ください<(_ _)>

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新宿御苑の事務所の近くの児童公園。昼休み、サラリーマンが黙々と食事をしながら携帯で仕事をされていました

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なつかしい遊具たちです。わびしさとせつなさと~♪ !(^^)!

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これもいいですよねぇ、ロボコンのような遊具に座って、前後に揺れて…ちょっとわびしいですかねぇ(^_^;)

 今週のメールマガジン「元気いっぱい」第189号は「言葉と声」です。ケアタウン総合研究所の公式HPでは、バックナンバーまで見ることができます。


コメント


 先日「おばあちゃんの認知症が気になるから」と、利用者さんと家族が専門医を受診しました。私も先生がどのような説明をされるか気になったので、同伴させていただきました。
 見事な専門用語での説明…家族はハンカチ片手に汗を拭きながら、何をどのように質問したらよいかわからない状態に…
 「そんなに気になるなら、ヘルパーさんにずっとついてもらいなさいよ」と一言…現状難しいことを説明すると「僕は専門医じゃない、精神科医だから」と。
 ケアマネとしてかかる先生の情報収集をあまりしていなかった私のミスでもありますが、なんだかやるせなかった。私の取り方がいけないのでしょうか。
 まだまだ勉強不足ですね(タメ息ー)。


投稿者: あっちゃん | 2009年08月07日 14:14

あっちゃんさんへ

 しっかりと同行受診されているんですね。いいことです。ただし、案の定の不安的中ですね。目の前の医師の説明は…これはひどいですねぇ。それに最後は「専門じゃないから」では、家族は泣きたくなりますよね。

 専門用語というものがいかに利用者(家族)を委縮させるか…その典型のような話題ですね。たしかに医師の情報収集不足もさることながら、この医師のスタンスそのものを問いたくなります(でも精神科医なら、それなりに認知症のことはわかりそうなものですが)。
 その後のご家族の反応はいかがでしたか?
 質問はあらかじめメモするなどの準備があるとよいですね。さすがにいきなりは緊張して難しいですから。


投稿者: たかむろ | 2009年08月14日 11:18

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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