災害クライシス
一昨日、山口県防府市での集中豪雨。土石流に1階部分が埋まった特養ライフケア高砂のTV映像に固まってしまった人は多いのではないでしょうか。ご覧になった方々はどのような印象を持たれましたか?
メルマガでは「ケアマネジャーのキャリアアップ」のテーマで書く予定でしたが、今回はこの事故をうけて、水害や地震など災害時にいかに在宅や施設の高齢者を守ればよいか、その事前準備をみなさんと考えてみたいと思います。
雨の降りがひどいので早めに始まった夕食。その時、突然鉄砲水とともに土石流が流れ込んできたといいます。実は、もともと山口県からも防災危険指定区域となっていたエリアに特養は建っていました。特養など老人施設は一般の家屋が建てられない「調整区域」に建設されることが多く、どうしてわざわざそのような場所に建てたのかということも今後問題視されるでしょう。
災害には、河川の氾濫による水害、地震による建物の倒壊、火事による火災などがあります。十数年前の長崎県雲仙岳の噴火以来、「土石流」という名称が知られるようになりました。豪雨や地震、噴火で生じる土石流は建物や河川、道路、樹木を壊し埋め尽くすほどの「甚大な被害」をもたらします。
このような被害に特に遭いそうな家屋は、場所が河川の近く、崖下や高台、埋め立てした場所などで、一定の予測を立てることが可能といわれます。また「谷あい」という立地も山間部の雨が流れ込みやすく危険です。ブナや栗など紅葉する広葉樹は保水能力に長けていますが、戦後、林野行政で植林が進められた「杉」などの針葉樹林では地面は固くなり保水能力は低く、降った雨はそのまま川に流れ込むといわれています。今回の施設の後ろ側の山林も杉でした。
砂防ダムや堤防の建設など大掛かりなことは国・県の仕事ですが、まず皆さんができることは、利用者(家族)の方が普段、どの部屋をよく使い、どの部屋に寝ているか、その「間取り」をイラスト化しておくことです。
「どの部屋にいるかのおおよその目安があるだけで救助活動や消火活動はかなり違います」
流されたり埋め尽くされると、まずは救助のスコップやパワーショベルをどこから入れるかが肝心といいます。救出活動では、本人がいる場所に最短で近づくことが最大の課題です。消火活動では、水圧で窓や壁を壊して消火にあたることもあります。
つまり、家の「間取りマップ」が災害クライシス(危機)では、救出活動の「生命線」を握るといいます。
今回、特養ライフケア高砂が大きく報道されていますが、その周辺の家屋もずいぶんと被害を受け、行方不明の方も多く出ています。その際、逃げ遅れるのは、やはり高齢者や障がい者の方々です。
水害や崖崩れの心配は比較的ないような家屋でも、失火や不審火による「火災」の危険はあります。
危機はいつもそばにあります。
今回の悲しい事故を他山の石とせず、来月のモニタリング訪問時に全員の方の「間取りマップ」(手書きで十分!)を作成し、ケアプランといっしょにファイリングしておきましょう。
できれば周辺の簡単な地図も書いてあると、さらにグッドです。
ムロさんの写メ日記
防府市特養「ライフケア高砂」の惨状を伝える朝日新聞(7月22日付け)紙面(撮影:高室)
新潟県山古志村。河川の土砂に埋まった家(新潟県中越地震から1年後。撮影:高室)
今週のメールマガジン「元気いっぱい」第186号は「地元学発見!」です。ケアタウン総合研究所の公式HPではバックナンバーまで見ることができます。
コメント
なんとも痛ましい出来事に、辛い思いでニュースを見ていました。
決して他人事ではなく、いつ自分たちが住んでいる街にも災害が起こるかわからない…と改めて強く感じました。
この度の災害は、いろいろな問題を多くはらんでいると思いますが、今まず自分に出来ることとして考えると、間取りは本当に大切ですね。
災害の時間帯によっては、居間におらるか寝室か台所かおおよその目どもたちますよね。
いつも、万が一を予測し備えられるような仕事をしていきたいです。
最後になりましたが、このたびの災害でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りしますとともに、一日も早い復旧を心より願っています…。
桃太郎さんへ
レスポンス、ありがとうございます。
天災はいつやってくるかわからない恐怖がありますが、今年に入って一人暮らし高齢者の家を狙った放火事件が増えているようです。
高齢者の方の自宅での生活を支えるためには、悪質な訪問販売や失火・家電事故など、介護保険ではフォローできない部分があります。
「いつやってきてもおかしくない」「誰が被害にあってもおかしくない」のが人災です。地域の「人災マップ」などを作ってみるのも一案かもしれませんね。
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