働きがいのオーラに包まれて…
この1年間ほど、介護の人材不足がメディアで報じられることがとても多くなっています。
あるテレビ番組です。食事介助する職員と利用者の姿を、ドキュメンタリー調にカメラがとらえます。
「いま、現場の介護崩壊が始まっています」
深刻なナレーションがかぶり、介護現場の悲惨さを視聴者に訴えます。
介護の厳しい現実と社会的なサポートを訴える良心的な番組も、そのインパクトは想像以上です。国会で問題になるくらいに注目を集める一方で、「将来のない大変な仕事ならもうやってられない」「娘は高校の福祉科にいるが、進路は別の就職口を探すように勧めたい」など、介護現場から働く人が「逃げだす」「選ばない」きっかけになっている事態にまで進んでいるといいます。
介護保険制度スタート時、「制度できてサービスなし」という心配が多くされましたが、いまは「事業所できて働く人なし」という現状が定着しようとしています。ケアマネジャーの事業所でも、折り込みチラシに募集広告を入れても「反応なし」のため、相当苦しい運営を強いられていますという嘆きを聞くことが多くなっています。
そこで、次期の介護報酬改定にともない、訪問系ヘルパーや介護職員の「給与アップ」のために介護報酬をあげるべきというムードが与野党やメディアで高まっています。世論に押されて厚労省も重い腰を上げ、ならば報酬アップが現場の給与アップにどのように反映するか調査する予算を計上するという話まで出ています。
さてそこで、です。
「本当に報酬が低い理由だけで辞めてしまうのか」
という疑問が湧いていました。
確かに高い給与水準ではありません。30代の男性が「結婚を機に退職します」という「寿退社?」が増えているように、一家の大黒柱としてはとても支えきれない給与水準だからです。
では、女性が辞めていくのはどうしてでしょうか? もともと決して高くはない給与水準はわかっているはずでは? 他の業界と比べて離職率はどれほどの差があるのでしょうか。
さまざまな私の疑問にある回答を与えてくれたのが、先週の土曜日に開かれた介護労働不足に関するシンポジウムでした。
そこに登場したのが堀田聰子さん(東京大学准教授)でした。堀田さんとは、昨年の全国老施協大会での分科会の講師をお互いが務めたことが縁で親しくなりました。
「離職率では、一般企業と比較するとかなり高いですが、サービス・流通業とほぼ同じ数字です」と、離職率に関して新しい切り口を紹介してくれます。
「そこで、就職した理由について介護労働安定センターなど各種の調査をみると、第一に『給与』を挙げる人はいなくて、『働きがい』を挙げる人が圧倒的でした。これは他の産業ではありえない数字です」
「介護職のやりがい・働きがいには、利用者・入居者の笑顔、仕事を通じての発見・学習・成長、より良いケアに貢献できる手ごたえがあがり、意識の高さをみることができます」
では、入口で「働きがい」を挙げる人が辞める理由はどういうものでしょう。
訪問介護員では、1:自分・家庭の事情、2:給与、3:人間関係。施設介護職員で1:待遇、2:人間関係、3経営者の理念・運営のあり方となっています。この現状をどうみるのか。
「おそらく、低い給与水準でがんばっている方々にとって、待遇や人間関係、運営のあり方などが働きがいに影響があると辞めるのではないか、と思われます」
また、教育訓練や能力開発、仕事ぶりの評価への不満もかなり大きいようです。
そこで、タイトルに挙げたフレーズを堀田さんが最後に言いました。
「働きがい・やりがいを提供できれば防げる離職も多いのではないでしょうか」
この問題提起に、わが意を得たりの気持ちになりました。給与水準の見直しだけでなく、成長する自分を感じられる人材育成や仕事評価・人材配置など、人材マネジメントに問題があることが浮き彫りになったからです。
「働きがいのオーラに包まれて働ける環境づくりに真剣に取り組む時期に来ています」
まったく同感のシンポジウムでした。
ムロさんの写メ日記
愛知県のケアマネさんから届きました。83歳の利用者さん(要介護2)が庭でつくられた水ナスの写真です。う~ん、うまそう!!
新宿駅地下街にある、ペットのためのおしゃれショップ。持ち運びバッグにお散歩カート。まるで赤ちゃん扱いです(これで散歩になるのかなぁ)。少子化のため、育児メーカーも生き残りに必死?です。
西武新宿駅の前で定期的に路上ライブを開いている「coco」(ココ)というシンガー。「ふるさとに暮らすあなたに~♪」なんてちょっとお懐かしのフォーク調だったり。おじさんはこれに泣きます(笑)。
今週のメールマガジン「元気いっぱい」第140号は「日本の適正人口」です。ケアタウン総合研究所の公式HPでも見られます。
※施設向けメルマガ「ケアコム」は第2号を配信しました!
コメント
離職の要因は様々だと思いますが、事業所によって離職の割合が違ってくるというところに、要因は様々だけれども原因はちゃんとある…ということになるのでしょうか。
職員さんが離職された後に、残された方々の仕事の負担も大きく、メンタル面での心配もあります。
離職が全て悪いわけではありませんが、頑張ってみたい、できれば続けていきたいと願っている方々が続けていくことの出来る職場になるといいですよね。
現実は厳しいとは思いますが…「働きがいのオーラにつつまれて」を目指してですね(^^)。
ご無沙汰しています。
(自称)一家の大黒柱としては、給与アップは是非お願いしたい話ですが…確かに私の周りでも離職される方はみえますし、福祉系の学生さんもこの業界に入ることを「迷っている」と言われます。
この人たちを引き留める「やりがい」をお伝えできればと思いますが、私自身もその「やりがい」を探しているところです。でもきっとみつかる、そう信じながらがんばってます。
ご無沙汰しております。
最近、福祉業界から離職する方が増えていますね(T_T)。聞くと、生活していける給料がとれないし、施設だどスタッフの人数ばかり減らされて仕事はきついし、責任ばかり重い、人間関係も悪いと、友人は辞めました。
私はケアマネをしていますが、仕事をしながら研修ばかり多くて大変です。しかし、職場の先輩もいいし相談にはのってくれるし、多少給料は安くても頑張れるかな?
「やりがいのある仕事ですよ」と伝えたい。きっとあなたを待っている人がいますよ。利用者さんからの「ありがとう」の言葉に救われます。
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