人は死ぬ前に何を思うのだろうpart1
地球に対して独立戦争を仕掛けた、宇宙コロニーのジオン公国には、独立という「正義」があった。もちろん地球連邦軍にも防衛という「正義」があった。ガンダムの戦争は正義と正義のぶつかり合いだった。しかしながらジオン公国は独裁国家であり戦争手段を選ばなかったために、作品ではジオン公国は「悪」役であり、地球連邦軍のモビルスーツであるガンダムと母艦のホワイトベースがヒーローとなった。ジオン公国は第二次世界大戦のナチスドイツや日本をイメージさせている。実際ジオンの旗や軍服はナチスドイツそっくりである。
ファーストガンダムなどで描かれた最大の戦争「1年戦争」の個別の戦いが『ガンダムイグルー』で描かれている。オデッサ作戦といって、ジオン公国の地球上の最大拠点であるオデッサに、地球連邦軍は大規模な攻撃を仕掛け、地球連邦軍が勝利するととによって、ジオン軍は伸びきった補給路のために敗退していく。第二次世界大戦のナチスに対するノルマンディー作戦や、日本に対するミッドウェイ海戦のような、戦いの転換点だった。
追い込まれたジオン軍は最新のモビルスーツの量産もままならず、急造パーツの旧式兵器や学徒兵を最前線に投入していく。学徒兵の中に、女性のキャデラック大尉の弟がいて、戦果を挙げて帰還する途中、味方の同士討ちであっという間に、戦死する。しきりに「国のお役に立てたか?」気にしていた弟の死を目前で見た姉は、泣き崩れるしかなかった。戦いはいつ終わるとも知れなくても、人の生死を分けるのはほんの偶然の一瞬だ。死をもって国のお役に立てたのか?……。
モビルスーツという科学の粋を集めた最新兵器スーパーロボットも、車やバイクのように性能には限界があり、限界を超えると、空中分解してしまう作り物として描かれる。最強のガンダムでさえ、そうなのだ。その事実は、ジオンで量産されガンダムと戦ったザクとの、ジオン国内の開発競争中、大爆発を起こして開発中止された、ズダというモビルスーツによって描かれる。新兵器開発が間に合わず、開発放棄されていたズダの試作品も実戦投入された。
ジオンの拠点アバオアクーから停戦命令がでて、敗走を始めるジオン軍だが、ズダに乗って出撃したジオンの技術大隊の中尉は、自分が死ぬときまでデータを残そうとする技術屋だったが、「ぼくのことを目に焼き付けておいてください」と言い残して、死地におもむいた。誰かの記憶に、生きていた証を残したいというのが、最後の望みだった。誰かの記憶に、生きていた証を……。
闘いの最後に撤退しようとしていた母艦は、壊滅したと思われていた生き残りの部隊に遭遇した。そこに死んだと思われていた技術中尉が別のモビルスーツの手の中で拾われていたというところで、話は閉じられている。不覚にも感動してしまった。
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