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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

死刑でいいですpart3

 犯罪者処遇の関係者の間からは「反省という気持ちがわかりにくい人に、無理に反省を求めるよりも、再犯の防止を優先して、まず更生を」という声が出ている。反省の難しい障害者には、「まず生活の基盤をつくることをすべきだ」という現実的な対応だ。第一歩は障害者手帳をとることだが、現状では知的障害に引っ掛けて「療育手帳」をもらうか、2次障害のうつや統合失調症に引っ掛けて「精神障害者手帳」をもらうかだ。発達障害そのもので「障害者手帳」をもらえる自治体はまだとても少ない。障害者手帳さえもらえれば、生活保護やさまざまな福祉サービスにつながることができるようになるので、少年院や刑務所に入った機会に医師の診断を受けて、取得できるようにしてほしい。

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 事件を起こし執行猶予になった精神障害者を福祉施設が引き取る話ができ上がっていたのに、その当事者が「障害者なんかと一緒に暮らしたくない!」と拒否したというニュースが長崎であった。孤独と苦労が当たり前である生活を続けてきて、プライドがとても高くなってしまった障害者は、福祉の生温い援助など気持ち悪いのが本音で、素直に身を任せられないのかもしれない。

 ぼくも孤独が長かったからその気持ちはよく分かる。しかし、社会の辛酸をなめる前に、早期診断によって子どものうちに分かるものであれば、福祉との接点を是非もって、「生まれてくるべきではなかった」などという言葉もわき上がってこないような、できるだけ平穏な生活が送れるようになってほしいものだ。ぼくも世間での厳しい孤独のあとに発病して、入院をしたときの病棟で「本当に楽になった」とつくづく思ったことを思い出す。
 母の無償の愛が欲しくて母を殺してしまった。甘えたくて姉妹を殺してしまった。誰よりも愛に飢えていたのに、共同体から追放された。ニュースになり世間中の人みんなから嫌われ、「死ね!」と言われ、特に被害者家族からは「死んでください」と言われた。山地氏だって心の底では「人に好かれたい」し、「好かれることが心地よい」はずだ。どれほどの辛さを感じながら「生まれてくるべきではなかった」と言わざるを得なかったのか。
 ダウン症などいつもニコニコしている障害者はまわりからも愛されやすいけれど、発達障害などでキツめの顔をしていると気づかってもらえないというのも、あるのだろう。赤ちゃんのころから声かけに反応しなかったりして「可愛くない」と母親から放置されたりもする。孤独に育ったせいで、キツめの顔になることも多いのだろう。でも、すべての人間には適材適所、居場所は社会のどこかに必ずあると思いたいものだ。


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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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