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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」 2011年07月

統合失調症は遺伝するのか?part2

 統合失調症者同士で結婚して子どもが統合失調症になった人を知っている。「それ見ろ! 遺伝した」と言われそうだが、この子どもの小さい頃を知っている。統合失調症の母親は、泣きじゃくる赤ん坊を床に投げつけようとして、周りの人たちに止められたことがある。十分な虐待環境である。虐待環境で育つと統合失調症の他にも、元々の複雑性PTSDから発展して、さまざまな精神障害になることが多い。
 複雑性PTSDとはDSMでは俗に、「パーソナリティ障害」などと呼ばれている。また、解離性障害や摂食障害なども、虐待と関連が深い病気と言われている。



統合失調症は遺伝するのか?part1

 最近、ニュースで統合失調症の遺伝子としてDISC1が注目されたが、じつはうつ病にも関係あるとして、統合失調症を引き起こす遺伝子とは特定されなかった。ぼくとしては「ざまあみろ!」である。
 というのも統合失調症発症の遺伝子を突き止める目的って、DNA検査をして「大人なら断種、胎児なら堕ろす」ために使えるからだろうと、ぼくには思えるからだ。それほどまでに人の優生思想と呼ばれる、優秀なものへの憧れは強固だと思う。なでしこジャパンが優勝すれば、誰でも嬉しいと思うし、もちろんぼくもニュースにかじりついていた。でもこれも優秀なものへの憧れ、優生思想だ。遺伝子研究は最先端の技術としてとても流行している。金と人海戦術でいくらでも研究が進められる分野なのだろう。まったくうらやましい。それに比べ万病の元であるPTSDなどは脳に傷が物理的につくものではないだから、脳自体をいくら研究しても、成果は少ないのだろう。今のところ、PTSDの治療分野は医療ではなく、保険の効かないカウンセリング治療の独壇場になっている。



日記が出てきた

 今日はマットグロッソが休みである水曜だ。クリスちゃんは、自分の部屋の押し入れの整理をしていた。すると、大事なものを入れておく引き出しから、昔の大学ノートの日記が出てきた。中学と、卒業できなかった高校時代のものだ。
 パラパラとめくっていたが、イタい言葉の並ぶ中で、特にイタいページが出てきてしまった。中学のバレー部で、失恋した頃のものだ。



死刑でいいですpart3

 犯罪者処遇の関係者の間からは「反省という気持ちがわかりにくい人に、無理に反省を求めるよりも、再犯の防止を優先して、まず更生を」という声が出ている。反省の難しい障害者には、「まず生活の基盤をつくることをすべきだ」という現実的な対応だ。第一歩は障害者手帳をとることだが、現状では知的障害に引っ掛けて「療育手帳」をもらうか、2次障害のうつや統合失調症に引っ掛けて「精神障害者手帳」をもらうかだ。発達障害そのもので「障害者手帳」をもらえる自治体はまだとても少ない。障害者手帳さえもらえれば、生活保護やさまざまな福祉サービスにつながることができるようになるので、少年院や刑務所に入った機会に医師の診断を受けて、取得できるようにしてほしい。



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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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