送電線をスマートグリッドに
今年の流行語大賞は「風評被害」と「ただちに健康に影響はない」で決まりだと思うのだが、実際には現実を批判しないような、当たり障りにないものが選ばれるだろうと思う。思えば、マスコミが何でもかんでも「風評被害」と呼ぶことで、「実害」が隠されてしまっている。「ただちに影響がない」ことで、5年後10年後の被害が忘れ去られている。あまりに酷い現実は、「見なかったことにして、安心しよう!」。これが今の政府、マスコミ、東電の基本姿勢ですか?
しかし、この期に及んでやっと出て来た菅総理の言葉。「原発拡大政策を白紙に戻す」と宣言した。はじめの一歩だ。もちろんボクシングのアニメの話ではない。あ、アニオタ君しか知らないか。
さて再生可能エネルギーだが、なぜ日本では広がらないのだろう? ヨーロッパもアメリカもスマートグリッドと呼ばれる電力網に、公共事業として取り組んでいる。日本とは異なった電力網である。日本は一部自由化されたものの、電力を売ることができるのは、全国の電力10社に独占されている。だから政府も容赦なく銀行は潰すのに、電力会社には気を使っている。浜岡原発を止めるのに、政府が命令しても中部電力がなかなか受け入れを決めないので、与謝野さんが「中部電力さんには財政支援いたしますから」と言ってから、中部電力は「受け入れる」と言った。政府は「原発は迷惑施設だから止めろ!」だけでいいのに。政府は七重の膝を八重に折り状態である。独占企業だから政府より頭が高い。
さて太陽光発電や風力発電の普及に欠かせないのが、スマートグリッドの送電網である。いまの日本では大規模発電所から一方的に放射線状に各消費者に送られている。これでは誰もが発電に参加できるというわけにはいかない。せいぜいバックアップ用だ。スマートグリッドとは電線網が網の目のようにお互いに結んでいて、無数の小規模発電所がぶら下がっている。どの網目のだれもが発電して売っても買ってもいいことになっている。インターネットのようなイメージだ。たとえば風の強い地方や、太陽が照っている地方から、風の止んだあるいは雨の降っている地方に電気が送られる。そして各個人が我が家のメーターを見ながら節電ができる。経済成長万能の時代は終わり、これからは電力の地産地消に各人、各会社で参加できる。繁栄の夢を見ている人はまだまだ多いけれど、この国は老いに入っているので、もう落ち着くべきだろう。
さてこれがヨーロッパやアメリカで注目されていて、日本では注目されないのはどうしてだろう? それは原発を始めとする大規模発電所からの日本の送電網の完成度だ。どこで停電が起こっても、24時間常に見張っていて、即座に迂回する送電網ができて、停電を解消できる。おかげで先進国の中でもきわめて停電が少ない。それでスマートグリッド送電網に作り替える動機が乏しいし、第一いまある電力会社は既得権を失い凋落する。それで、電力会社はマスコミを使って電力不足キャンペーンをやっているというわけだ。
しかしこれは哲学の問題だ。電力余りの社会から、節電で自然エネルギーを増やしていく国民の決意の問題だ。今が絶好のチャンスだ。
なぜなら東電は政府に莫大な借金を負うことになる。そこで政府は借金のカタに、送電網を取り上げればいいのだ。そしてまずは東京から、スマートグリッド網に公共工事で作り替えるのだ。これは田中優さんという、反原発の立場でNPOなどやっている、物書きさんが言い出した、なかなか見事な作戦だ。当然だが東電は電力網の売却に、難色を示している。何もウラン。
とまあ、将来の電力事情などと比較的楽観的な話だったけれど、実はこの国、東電と心中してしまうのではないかとぼくは密かに心配している。原発被害は今後サクサクと順調に増え続ける。6か月や9か月で収まる訳がない。すでに原子力保安院も土壌汚染がチェルノブイリを超えたと認めているし、メルトダウンしていたので、燃料が取り出せないで、永遠に放射能を出し続ける可能性も高い。被曝の上限があるので、10年単位でかかる復旧に従事する作業員がいなくなると言われている。政府の被害保障は上限を定めないらしいから、原発の底なしの水漏れのように、国家財政が破産をしてしまうのではないのだろうか? 転ぶにしても弱者には厳しい将来になりそうだ。
コメント
本当ですね。
泣きたくなってきました。
チェルノブイリも何万人と言う人が必要だったらしいですね。
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