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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」 2011年03月

孤独を生ききるpart3

 ぼくも3月21日で57歳になった。ぼくが「自分が老いたなぁ~」と一番感じるときは、人の名前を思い出せないときだ。ムゲンに毎日のように来ている人の名前をとっさに思い出せないほど、記憶力がなくなってきている。ありがちな単語がどうしても出てこないこともある。あと階段を下りるときに、膝関節が痛くなるときもある。テレビCMでおなじみのヒアルロン酸が失われてきているのかもしれない。
 そして人との会話で一体感をもてないときや、人から拒否されたあとで、怒りとないまぜの醒めた気持ちで、ひしひしと寂しさに襲われることもある。若いときのように、孤独がこころの傷になることも少なく、あまり後も引かないのも、人間関係が比較的安定していることと、歳をとってこころの壁が厚くなってきているのかもしれない。あるいは孤独をこころにもち距離をとることによって、こころの傷になるのを防いでいるのかもしれない。むかしは人に言われたことで傷ついて、言った人としばしば縁を切ってきたものだ。



孤独を生ききるpart2

 昨年末に瀬戸内寂聴の「孤独を生ききる」という本を暇ひまに読んでいった。「だれもが、寂しくない人などはいない」というお話だ。

 中島みゆきで、「恋が終わって、立ち去る方は美しいけれども、とり残される方は恋焦がれて泣き狂う」という歌があったと思う。ケロロ軍曹ではこうだ。
 ケロロ軍曹「ジョリリ先輩!? 恋って何でありますか??」
 ジョリリ「恋っていうのは、つまりこういうことだ。池の鯉とは~別物だ!」
 ケロロ軍曹「???」



巨大地震、みなさん大丈夫ですか?

 3月11日の朝、リリー賞の授賞式に審査員として、出席するために、飛行機で東京に行った。東京駅側のビルが会場だった。今年の受賞はグループが岡山マインド「こころ」さんが、個人は榎田伸也さんが受賞した。岡山マインド「こころ」さんは、ビールの醸造機をいれて、当事者のビール職人を養成することが評価された。榎田さんは、いろはカルタとJRの障害者割引の運動を続けていることが評価された。
 リリー賞授賞式は午後の1時間で終わり、続いて研修会が始まった。その途中だ。1分以上にわたって、ぐらぐらとビルが揺れた。窓の外では、線路上にJRの電車が停車していた。これはただ事ではないと思って、一緒に来ていた波津子と荷物をまとめて、会場を後にした。会場では研修会が再開されていた。



孤独を生ききるpart1

 昨年のぼくはしょっちゅうひどい孤独に襲われていたと思う。孤独が感情の中で一番辛いと昔から思ってきた。心の傷の後遺症もツラいが、傷が癒されてもなお最後に残るものは、深い孤独に違いないだろう。不安が一番辛いと言う人もいるけれど、孤独の結果かもしれないと思う。



ホントウのものとニセモノpart5

 ばび「さてヒトの社会にホントウに正しいことなんか、どこにもないというのがぼくの自論です。比較して、より正しいかどうかです。少しでもましかどうかということですね」



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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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