映画「葦牙」上映会を終えて
1年ほど前にこの映画の存在を知ってから準備してきた「葦牙(あしかび)」松山上映会は、85名の観客が見てきてくれて、無事終わった。収支もとんとんで赤字が出なくてよかった。映画の後に児童養護施設三愛園の杉山先生のお話があった。途中少しつまったりしながらも、人柄のよく出たお話でとてもよかった。カンボジア救済の街頭募金を街で見かけて、最終的に500円を募金するのに、募金箱の前を何度も行ったり来たりしたそうだ。
上映会と講演会が終わってから杉山先生とお話をしたのだが、戦場カメラマンの渡部陽一さんのような話し方ができるようになりたいって言っていた。ご存知の方もいるだろうが、一言一言噛み締めるようなゆっくりした話し方はとても印象的で、声を携帯電話の呼出し音に使っている人もいるらしい。たぶんいっぱいしゃべっても、聞いている人にはなかなか伝わらないことを熟知している人なのではないかと、ぼくは思う。
さて映画の内容だが、冒頭で子ども同士のケンカのシーンが出てくるのだけれど、暴れて追い回す子どもが職員と対面し、怒って言い訳をするときの目がとても寂しそうだった。
小さな女の子が電話で、「いつ退園できるの?」「一緒に遊んでほしい」と、自分を虐待した親に一生懸命懇願する姿は、とてもいじらしかった。
年に1回の施設みんなの前での文章の発表会で、1か月間かけて職員と対話しながら書いた子どもの文章も、すごく正直に書けていた。自分の中の親と向き合い生い立ちの整理をしないと、大人に向かう一歩を踏み出せないことは、誰もがみんな一緒だと思った。
上映会の後にアンケートを集めたので、一部を紹介したい。
*虐待が子どもに及ぼす影響の大きさを感じた。
*事実を素直に伝えていると感じた。
*怖い思いをしているのにそれでも嫌いになれないという子ども
の気持ちが切ないです。
*愛着と暴力が併存しているところが、何とも言えなかった。
*自分のつらい過去をきちんと受け止め、自分自身を肯定でき
るようサポートされていた。
*考えるととても深く、意味ある映画だった。
*もっと多くの職員を配置しなければ。
*活動を通じて、着実に子どものこころが成長していることにホ
ッとした。
*親と電話して「疲れた……」とつぶやいていた女の子が印象
的でした。つらいのは自分のはずなのに、親を気遣う優しい子
なのに、親から十分な愛情を注いでもらえないことをもどかしく
思いました。
*生まれ変わるカリキュラムがしっかりしているなと思いました。
*虐待にあった子どもが、自分たちが大人になったときには明る
い家庭をつくりたいと言っていたのが印象でした。
*児童養護施設を知るきっかけになりました。
*中学生高校生まで、施設のよい環境の中で育てられた賜物で
すね。
*杉山先生の卒園後の話が参考になった。
*生活の場面を見ると、どこの施設も同じだなあと思いました。
*愛情に飢えた子どもたちの生活をこのような形で見ることがで
き、感動しました。
*身の切られる思いで見ました。
*施設の大変な部分がよく伝わりました。
*子ども、親たちが自分の心情を率直にあれだけ語れたのは、
すばらしいと思った。
読者の皆さんの地元で上映会があれば、ぜひ足を運んでほしい映画だと思います。
コメント
民法の親権制度の見直しを進めていた法制審議会専門部会で、児童虐待防止のため、親権を2年間停止できる制度の新設を求めた答申案がまとまりましたね。
来年の2011年2月の法制審総会で了承を得た上で、法相に答申を提出し同年の通常国会に同法改正案をぶつける方針のようです。
背景には、これまで児童虐待のケースでは、親の親権が邪魔をして、虐待されている子どもを救済できなかったことを受けての「親権停止」なんでしょうね。
今まで踏み込めなかった児童虐待対応への権限が強くなることは喜ばしいと感じています。
それは知らなかったです。
でも成立すれば、児相の強力な武器になりますね。
ぼくも子どもの頃にもし児相が介入していたら、果たして、母子分離はできただろうか?ぼくは「母と別れるのは嫌だ」と泣いて嫌がったような気がする。子どもって虐待する親でも親ですから。このアンビバレント。大人からみれば、分離がいいのは分かっているのに。
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