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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」 2010年12月

私に汚い言葉を言って

 パンクロックやデスメタルのコンサートで、「このメス豚ども!」とか舞台からボーカルが叫ぶと、会場は「ウオー!」と男の子や女の子たちの声で盛り上がる。顔をしかめ瞬きを繰り返し、汗を飛び散らせてジャンプやキックしたり、自分の顔やお腹を殴るパンクスもいて、さらに盛り上がる。
 これにはちゃんとした病名がついている。ADHDの中でも「トゥレット症候群」と言う。別名「汚言症」とも言うようだ。文字通り汚い言葉を次々に言うのだ。これがロックの舞台ならいいのだが、日常的にこんな言葉を叫んだらセクハラ汚言通報ものだ。あるいは危ない人として、近づかないだろう。強迫神経症などとも合併するらしい。



映画「葦牙」上映会を終えて

 1年ほど前にこの映画の存在を知ってから準備してきた「葦牙(あしかび)」松山上映会は、85名の観客が見てきてくれて、無事終わった。収支もとんとんで赤字が出なくてよかった。映画の後に児童養護施設三愛園の杉山先生のお話があった。途中少しつまったりしながらも、人柄のよく出たお話でとてもよかった。カンボジア救済の街頭募金を街で見かけて、最終的に500円を募金するのに、募金箱の前を何度も行ったり来たりしたそうだ。
 上映会と講演会が終わってから杉山先生とお話をしたのだが、戦場カメラマンの渡部陽一さんのような話し方ができるようになりたいって言っていた。ご存知の方もいるだろうが、一言一言噛み締めるようなゆっくりした話し方はとても印象的で、声を携帯電話の呼出し音に使っている人もいるらしい。たぶんいっぱいしゃべっても、聞いている人にはなかなか伝わらないことを熟知している人なのではないかと、ぼくは思う。



人生の脇役(part2)

 目の前の水槽では、レッドテールキャットフィッシュがノタノタと泳いでいる。
 「大滝秀治さんって、時代劇やCMにも出ている飄々としたおじいさんの役者さんを知っていますか?」



人生の脇役(part1)

 今日もマットグロッソに来ている。クリスちゃんがひとりでお客用の丸椅子に座って、ぼけ~っと店番をしている。ぼくは突然、水谷豊の歌がひらめいて、ほかに客もいないし大声で歌い出した。



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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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