女の子から嫌われました
豆腐をぶつけて殺してやろうと思ったこともあるし、1階の窓から飛び降りて自殺しようかと思ったこともある。
宇宙の中にたった一人で浮かんでいる地球からの、来るか来ないかわからない微弱な電波を受け取る人工衛星のように寂しかった。人と人とはどこかでつながっているという言葉は、たぶん嘘だと思った。ぶつんぶつんと、中華包丁でぶった切れている。
人を好きになることは素晴らしいって言うような人は、サッカーボールのように蹴られるべきだ。生きていることすらどうでもいいほど投げやりな気持ちになった。ずっと夜明けのように醒めきっていた。今まで生きてきた人生が、すべて旧式トイレの大量の水量ほどにムダなことのように思った。
ぼくは白髪に覆われている老人のしなびたもののように、何の役にも立たない人間だと感じた。そしてぼくは、そこそここころの広い人間ではないかと思ってきたが、何ということでしょう! 本当の自分は風にバタバタなびく古く錆びたトタン板のように薄っぺらなエゴイストだった。
こころがぽっきりと折れてしまっていた。医者に行ってレントゲンを撮ってもらうと、こころが複雑骨折していると言われた。診察室でレントゲン写真を折れている箇所を指されて、「ほら、こんなに折れているでしょう。きれいに治るにはしばらくかかるでしょう」「手術などはできませんから、ぼつぼつリハビリをやってもらいます」と言われた。幸い松葉杖なしに歩ける。年とって骨がもろくなっているのかもしれない。
昔なじみのふーさんが、いつの間にかそばに来ていた。「眠れているか?」
「ええ。不思議と食べるものもそこそこおいしく、よく眠れもします。これは何よりのクスリだと思いますね。友人たちも今までと別にまったく変わらないし、変わらない日常を続けることが、時グスリでしょうね」
ふーさん「怒っていますか?」
「心の底では怒りもあると思いますが、その人は真面目で固く、といえば真っ先に思い出すのは、母です。何度も言ってきましたが、母の行った虐待の結果の空虚感、満たされなさは、波津子との愛情ですっかり満たされたと思っていました。しかし満たされなさは、いつの間にか戻ってきていたのですね」
ふーさん「それで何回も何回もやさしさを求めてしまう」
「しかし子ども時代から続く満たされなさ、癒されたい気持ちは、ぼくが灰になるまでもちつづけるのかもしれません」
ふーさん「永遠に満たされない。空想のマリア様くらいしか癒してはくれない。そういうわけじゃね?」
「孤独感はほとんどないのですけれど、自分の、女性が怖い弱虫毛虫ぶりにはあきれています」
ふーさん「世の男性、みんな女性が怖いものさ。わしだって女房の尻に敷かれっぱなしだし。君は普通じゃよ。さ、飯でも食いにいこうか」
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