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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

結婚帝国―女の岐れ道(part1)

 以前、ギャンブル依存症ファミリーセンターホープヒルのカウンセラー、町田政明先生のブログを読んでいて、「信田さよ子に負けた」という一文が妙に印象に残った。その町田先生のセミナーの中で推薦をしていたのが、『結婚帝国―女の岐れ道』(講談社)だ。

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 この本は、フェミニストで東大教授である上野千鶴子さんと、フェミニストカウンセラーの信田さよ子さんの本音トークバトルをまとめたものだ。面白すぎて、女性が怖くなる。「現実の女性より2次元の女性がいい」と言い切る男性の言うことも、もっともだと認めざるを得ない。以下、本の中から抜粋してみる。

 信田さん「さっき上野さんが『男に選ばれなくても、わたしはわたし』の一言が女には言えないとおっしゃいましたけれど、普通、女として『わたし』というときには、『男に選ばれる』という与件がすでに組みこまれていますね…」
 上野さん「小倉加代子さんは、…思春期とは、女の子が自分の肉体が男性の欲望の対象になり、男性の視線によって値踏みされるということを自覚したときに始まる。それはその子の生理年齢には関係がない。三歳で自覚したら三歳で思春期が始まる、と言っています。…おそろしい世の中ですよね」
 信田さん「とにかく、思春期は父によって開始されるってことね」
 上野さん「娘は三歳で学ぶと思う」
 信田さん「ほんとうにそう思う。三歳くらいの女の子で、しなを作ったりして、男から見れば誘惑してるような女の子がいます。父親がそれを価値あるものとして見るからやるんでしょう」
 上野さん「そうやって、男にとっての自分の価値を意識し始めた娘たちを、母親は、色気づいたとか、盛りがついたとかって感じながら、おぞましいと思うのでしょうね」
 信田さん「性的な欲望の対象になるってイヤじゃないですか」
 上野さん「それをコントロールして、男の鼻面引きずり回す女だっているじゃありませんか。やったことないんですか?」
 信田さん「引きずり回すの? わたしが?」
 上野さん「林真理子の小説を読むと非常によくわかります。女に対して男が与える価値を自覚した上で、それを手玉に取る女。それに対する林真理子の憎悪が、実によく出ていますね。しかも、女の子の中にはそれを無自覚、無意識にやってしまう人も多いですね。相手を挑発し抜いて、その上でイノセンス(無邪気)をパフォーマンスとしてやっている若い女の子はたくさんいますよ。とくに性的抑圧の強い国から来たアジア系の女の子なんて怖いですねえ」
 上野さん「自覚してやってるわけね。で、相手の男がそれにちょろく引っかかるのを見てらっしゃるわけね」
 信田さん「見てる」
 上野さん「安直よねえ」
 信田さん「ほんとに。心の中では『なーんて単純なヤツ』とか言いながら、『ありがとうございますう』とか言えばいい」
 上野さん「シナリオどおりに反応してくれるからね。だから、やっぱりコントロールしてるわけでしょ」
 信田さん「女性はこんなことぐらいでしか、パワー行使できないかもね」
 上野さん「そうです。だから逆に言えば、強者だと思える相手はどのようにもズタズタにできる。後になって気がつきましたが、強者だと思っていた男って、案外もろい、傷つきやすい生き物でした(笑)」

 つい夢中になって長々と引用してしまったけれど、上野節の炸裂だ! 上野さんはすごく難しいことを書くこともあるのだが、話はすごく怖くて素敵だ。だから上野さんのファンをやめられない。
 ぼくも温泉で、男湯に父親が女の子を連れて入っているのを、いつの間にかいやらしい視線になっているのに気づくことがある。怖い怖い。
 それから、『女性って男性より賢い』って若い頃からずーっと思ってきたのだが、この男性のちょろく引っかかる様を女性側から見れば、当然心の底で軽蔑していると思う。あるいは、外面ばかりがよくて家で暴言を吐いたりいばったりする矮小な父親を、娘たちは深く軽蔑していると思う。この男性に対する軽蔑感がぼくから見れば、『女性は賢い』と見えていたのだろう。

 夢ばっかり見ている男性は、いつも現実を生活している女性にはとても太刀打ちできない。ぼくはとっくに女性に白旗をあげて降参している。友人に「男は所詮カマキリよ」という持論を持っている人がいる。交尾のときだけに必要で、終われば女性の栄養源となって食べられてしまう、というわけだ。ぼくもそう思うけれど、世の中には「自分はトラだ、ライオンだ」と死ぬまで思っている男性も多い。まったく幸せなことだなあと思う。
 ぼくが、母がまだ生きているのに、母の耳にも入るだろうに、虐待のことを公開し続けるのは、ぼくのこころの中では母が今も強者だからだ。上野さんの言うように、「強者だと思える相手はどのようにもズタズタにできる」からかもしれない。今の現実の母は、腰の曲がったおばあさんなのに、ぼくはとても残酷なことをやっているのかもしれない。いや、やっているのだろう。

(part2に続く)


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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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