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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」 2010年02月

シベリア抑留とは何だったのか(part3)

 前回、前々回に続いて、詩人・石原吉郎の話。今回で最後になる。



シベリア抑留とは何だったのか(part2)

 前回に続いて、詩人・石原吉郎の話である。

 石原は、『サンチョ・パンサの帰郷』という詩集でH氏賞(現代詩の新人賞)を受賞した。「サンチョ・パンサ」はドン・キホーテの従者であるが、石原は敗戦国日本をドン・キホーテに見立て、従者石原を引き連れて妄想とともに巨大な敵に突っ込んでいったが、負けて捕われた後、故郷に帰ってきた、というわけだ。
 石原はのちに東京の風景をこう書いている。



シベリア抑留とは何だったのか(part1)

 こういう究極の選択がある。
 救命ボートに5人が乗っているが、どうしても1人救命ボートから降りてもらわないと、全員溺れてしまう。こういうときに、誰が犠牲になるか? 答えは、「善き人」である。



幸子さんと私(part3)

 『幸子さんと私』(中山千夏著、創出版)を読んで思ったことの続き。今回が最後だ。

 昔のことを書いているうちに、新たに思い出したこともある。ぼくと妹がまだ小さい頃、うちにはチイちゃんという歳取ったおばさんがお手伝いさんとして来ていた。ぼくはチイちゃんが家庭の一体の異物のように思えて、無視していた時期があった。今で言う「シカト」だ。妹にも呼びかけて、チイちゃんが来るといつも横を向いて無視した。チイちゃんは「たいそうつらい」と言っていた。
 母はというと、「牛乳が腐っているかどうかわからないから、チイちゃんに飲ませてみよう」というようなスタンスだった。かわいそうなチイちゃんだった。一番下の弟もチイちゃんのことを知っていたから、他人を一切信用しない母の元で、結構長い間働いていたようだ。



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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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