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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」 2009年09月

ネグレクト(part3)

 なぜAは、両親への復讐に向かわずに、他人に対する「殺人ゲーム」に向かったのか。
 それは「最後の最後まで母の愛情を求めていたから、理解を求めていたから、母には憎しみを向けなかったのではないだろうか」と、『あなたの子どもを加害者にしないために』の著者は言う。どうしても親への反抗ができずに、ヒトラーと同じように「虐待者との同一化」をしてしまった。被虐待者が虐待者になった。



ネグレクト(part2)

 児童虐待には4種類あり、「身体的」「性的」「心理的」「ネグレクト(無視、放置)」がある。ぼくは主に「身体的虐待」「心理的虐待」を母から受けだが、これは「ネグレクト」に比べれば、相手にしてもらえるだけまだましだ。もちろんぼくは、母から極端な関心をもたれても、こころはまったく理解されないことを諦めていた。Aの受けたネグレクトは一見心理的虐待のようだが、心理的無視は相手の存在を認めた上での無視だから、心理的虐待ではない。



ネグレクト(part1)

 『あなたの子どもを加害者にしないために』(中尾英司著、ブッキング)という本を読んだ。

 「酒鬼薔薇聖斗」を覚えているだろうか? 最近少年院から社会に出たと、少し騒がれた。相変わらずモンスター扱いだ。この本はその酒鬼薔薇聖斗、少年Aの育ちについて細かく分析したものだ。この本は10年も前に出版されたが、その後絶版となり、Aと同じ年齢の加藤被告による秋葉原事件などが起こり、一見普通の家庭に育った子どもが犯罪者になることに対する、読み解き、「心の闇」を明らかにしたいと思う、多くの人によって関心が高まった。復刻されるまでは、中古で2万円もの値段で取引されていた本だ。
 結論をいえば、少年Aは生まれついてのモンスターでもなんでもなく、親の育て方がつくったのだと。



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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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