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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

連帯保証人(part1)

 「血糖値が高いから〜♪」という、哀愁のあるCMソングを知っているだろうか? 身近な人に聞いてみても、耳について残る曲だという。また「ああ連帯保証人」という曲もあるが、ご存知だろうか? どちらも動画サイトなどにも投稿されているので、見てもらえればと思う。

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 これらを唄っている「ペーソス」という中年3人組のバンドが、エッセイを出した。『血糖値が高いから』(バジリコ)という本だ。
 いかにスケベで酒好きで、いかにしょぼくれた男かと書いてあるページの行間には、人間の悲しさがあふれんばかりに立ち上っている。まさしく「ペーソス(哀愁)」である。

 ギターの岩田次男氏の文章からの引用。

 そういう僕も、みんなと一緒に朝までチンチロリンをやったり、仕事中眠くなったら島本さん(作曲と唄)の事務所に行って寝たりしていました。向上心のない人たちといると、本当に心が安らぐんですね。
 中には、向上心がないどころかケツに火がついたような人もいて、島本さんに借金の保証人になってもらったままトンズラした人も1人や2人ではありません。何百万かの借金を背負ってしまった島本さんは、怒るわけでもなく「向こうにもいろいろ事情があるんだろうから」と、人の借金を払い続けています。「いい人」というとそれまでですが、もっと奥の深い、人間に対する慈愛のような、あるいは諦めのようなものがあると思うのですが、こういう経験がペーソスの歌の元になっているんだと思います。

 この話を読んでぼくは、この人にはかなわないと思った。懐が深い(これはまさしく、日本語における人に対する評価の言葉の中で、褒め言葉の最高ランクにあるとぼくは思っている)。自分に害をなすような人でも身近から遠ざけないで、付き合い続ける、味わいのある人間。悟りの境地にまで達した共依存。
 ぼくなどは連帯保証人なんかに絶対なれないし、トンズラした人がいたら、その人の悪口を言うだろうし、淡々と人の借金を返し続けるなんてことは、できっこない。もうぼくも55歳になって、性格も絶対に変わりっこないけれど、できれば「懐の深い人間」になりたい。火中のクリを平気で拾え、調停をもたらせるようなこともできる人間にあこがれる。

 向上心がなくがんばらなければ、「いい人の病」であるうつ病にもならないから、過労死とも縁がない。深酒のおかげで血糖値が高く、中性脂肪が多くて男の病、前立腺も悪いが、じたばたしないで、唄にして唄っている。災難がくれば逃げ惑い、不幸にあえば泣くしかない。人も自分も許して滅んでいく人間の悲しさを唄っている。
(part2に続く)


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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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