夢
ある夢を見た。
ぼくは友人たちと一緒に、東京から松山へ帰る旅をしている。列車を乗り継いで大阪に着き、旅館にみんなで泊まった。ぼくだけが、すきや鍬やたくさんの雑誌を両手いっぱいに抱えていた。
次の日に起きると昼過ぎだった。「みんなで焼肉を食べてから、最終の列車に間に合うように松山に帰ろう」と言った。旅館の若くスマートな男の職員が来て、彼が携帯で父親に連絡を取ってくれた。ぼくが「最終の列車に乗って帰ろうと思う」と言うと、父親の返事を待たずに彼は携帯を切ってしまった。「厳しいなあ!」と思った。値段が高いから飛行機には乗れない、と思った。
友人の同級生たちは先に旅館を出て、出発してしまった。ぼくも雑誌の荷物から読みたいものだけを選んで、残りは置いていくことにした。ひとりの病者の友人(今も実在の人物)だけが、少し荷物を持ってくれて、ぼくはすきや鍬や雑誌を両手いっぱいに持って、旅館を出て焼肉屋に向かった。
もう夕方になっていた。目の前には下り階段があり、踊り場にはロープが張ってあって、不安定なロープに足を乗せて飛ばないと、下には行けない。病者の友人は先にロープを飛んで行ってしまった。ぼくは両手いっぱいの荷物を持ってロープの前で逡巡していると、ぼくの荷物の一つである、ロープに結わえてあった空のビールビンが階下の女性にあたった。
彼女は「痛いっ!」と言って、血も出ているようだ。ぼくを責めてくる様子はなかったが、「責めてこないほうがダメージは大きいな」と感じた。旅館の人の携帯で、あのとき父は、“「最終の列車には間に合わないから、夜のフェリーで帰れ」と言おうとしたんだ”と突然ひらめいた。そして、目が覚めた。
ぼくなりの解釈
ぼくは学生時代に4年間病気入院をして、同級生には置いていかれ、ずいぶん焦りを感じた。しかしムゲンを長くやっているので、病者の友人は荷物を持ってくれた。ぼくの両手いっぱいの荷物は、虐待から病気に至る、こころの荷物だ。「読みたいものだけを選んで、残りは置いていくことにし出発する」というのは、4年間の初めての入院後の、同級生より遅れたことは諦めて、ハンデを負って再出発するということかもしれない。
旅館の他人も、肝心なところでは助けてはくれない。「厳しいなあ!」と思ったのは、バイトをして健常者の冷たさに触れたときに感じたものが出てきたのだろう。「父の元に帰る」とは、「父のような大人になりたかった」ということ。焼肉を食べるとは性を享受することではないのだろうか。階下の女性にビールビンがあたったのは、ぼくが小学生の時に瓦を投げて誤ってケガをさせた女性のことではないかと思う。その時に親は、ぼくを事態に直面させず、相手の親に人形飾りを持って行って、事を済ませた。その時にまったくぼくは怒られなかったことがずーっとトラウマっぽくなっている。
最後に列車や飛行機ではなく、フェリーで帰ることを思いつくことは、「ゆっくりとマイペースで生きるべきだ」と自分で悟ったのであり、大人になるのが遅くなっても、父のようになれることが父の意向に沿ったものでもあった、ということだろう。
主治医の説明
発病して東京から松山に連れて帰られたことの象徴的イメージだ。すきや鍬は労働者としてのアルバイトや農業体験、雑誌は知的体験で、それらが足かせになっている。その足かせを病者の友人が持ってくれる。
病者の友人が「飛んだ」というのは、急激に病気がよくなろうとムリをしたことをイメージさせる。病気という山の頂上からは、ゆっくりとゆっくりと地上という現実に降りていかないと危険だ。
こういうキッチリとした構造をもった夢を見ることは、今は病気がよい証拠だ。病気が悪くなると支離滅裂な夢になる。父に対する「誤解」も最後で解けて、決して妄想化していない。病気が悪いと、携帯を切られた時点で「嫌われている」という妄想に走りがちだ。
生真面目な人の夢で、母親の「嘘をついてまで見栄を張れ」という教育に徹底して逆らったから、嘘をついたら怖い、怯えるという今の性格になったのではないのか。
コメント
夢の種類も色々ですね。
2004年の上半期にすぐに辞めた自衛隊の訓練の夢と、班長の「どう喝」の夢を毎日、見ていました。
テロリストと戦ったりもした。でも、何故か弾が出ず、空砲しか撃てなかった。
家族からは、
「寝ているときに、うなされていたけど、大丈夫?」
と心配されるくらい、大変でした。
今思うと、PTSDみたいなものになっていたんでしょうか。
今は、自衛隊の夢は一切みなくなり、最近見た夢は、住んでいる団地から何かから逃げなくてはならず
結構、高い位置から飛び降りる。でも無事。
という夢です。
なんなんでしょうか。これは。
心に傷があれば、悪夢は必発だと、主治医は言っていました。だから最近悪夢にならないのは、心の傷が癒えたのでは?
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