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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

テポドンなんかで騒いでいる時じゃない(part1)

 テポドン騒動は、発射前にはマスコミで大いに盛り上がって、タカ派に大いに利用された感がある。飛んでしまえば、別に一人の死者も出た訳でもなく、散々不安を煽っておいて、何なんだと思うばかりだ。追い込むための国連決議に反発した北朝鮮は態度をますます硬化させて、日本のタカ派は笑いが止まらない。このままだと「日本も核武装を」と堂々といえる空気に確実になってしまう。

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 そんなことより、毎日日本で100人近くが死んでいる出来事を知っているだろうか? 自殺だ。
 先進国の中では、韓国と日本が断然自殺率が高い。去年韓国はそれまで1位だった日本を抜いて先進国中1位になったが、2013年までに自殺者数20%減を数値目標としている。しかし2位になった日本では対策への動きは鈍い。この不況の決算期、テポドン騒ぎの影で自殺者は確実に増えていると思われる。
 韓国と日本はひきこもり者の多さでも競っている。どちらもともに進学熱が高く激しい受験戦争があり、社会に出れば、新自由主義という弱肉強食の嵐が吹いていることと関係が深いのかもしれない。

 さて、自殺未遂の人は少なくとも、一日100人の自殺者の100倍、一日1万人以上はいるだろう。100倍というのは、一人が目立っているとすれば、それと同じ人間はその100倍はいるだろうという、ぼくの経験則だ。
 一日100人が死亡して、一日1万人が負傷している。これだけの人数が毎日自殺を決行しているということは、まさに内戦状態の国レベルの死者、負傷者だ。自殺に比べれば、テポドンの心配などまるで取るに足らない。
 思うのだが、新聞に「昨日の自殺者」のコーナーを設け、毎日の死者の人数を発表したらどうだろうか? 少しは世論も自殺問題に真剣になるかもしれない。

 義務教育の間に、「自殺を考えた場合はどうしたらいいか?」ということが、授業で話題になることはあるのだろうか? 自殺の動機で一番大きいのは経済問題(端的にいって借金)だし、自殺を考える人の多くが、うつ病にかかっている。学校でカードローンや多重債務のことを教えるだろうか? うつ病の授業はあるのだろうか? ほかにも、自殺に親和的な依存症や統合失調症、PTSD、神経症のことを教えるだろうか? 特に、ギャンブル依存やアルコール依存、薬物依存の問題などは、多重債務にも直結する。父親が自殺で亡くなった母子家庭は、進学もできず生活苦にあえいでいるとも聞く。
 「機会の平等」「誰にでもチャレンジする権利がある」と学校でメリットを教えるなら、逆にリスク、失敗して多額の借金を抱えた、多重債務者のたどっていく道や、抜け出すための相談窓口も同時に教えるべきではないだろうか? 道徳の授業数を増やす? 冗談じゃない。事態はもっと切迫しているのだ。卒業したら学生は、むき出しの資本主義の世の中に放り出される。
 この内戦状態を終結させるためには、多額の税金の投入が必要だろう。ようやく障害者自立支援法でも、自殺対策費が少し盛り込まれるようになった。しかし、障害者の分野内での精神対策の一環では、あまりに規模が小さい。厚労省全体で取り組むべき問題だろう。いや、マスコミを巻き込んで、国民(注)全体で取り組む一大運動にすべきだろう。

注)最近になって、法的にどこの国籍も持てず、「無国籍」ということで、経済的・精神的に追い込まれる「無国籍者」と呼ばれる人たちがいることを知った。

(part2に続く)

コメント


 佐野さんの言う通り、マスコミがテポドン問題に集中してしまいました。私の感想としてはマスコミに先導され、皆が政治・経済のことを一瞬忘れてしまった様に見えます。
 選挙の成り行き、政策の重要性、もしかしてそれらを忘れさせるために報道が騒いだのではないかと思えるくらいです。
 北朝鮮との関係で日本が何が出来るか・6カ国協議でも答えは出ませんでした。
 日本の中の政治はバラバラであり、諸外国に対して発言力が弱くなっていくのが分かります。
 他国が日本に何を求めているのか考えるのに、今が良いチャンスではないでしょうか。
 少し話題がそれたようですが、佐野さんがお話しされた、障害や生活に関する問題もその中に大いに含まれていると思います。

 注にあった無国籍の人は、戦争時代に朝鮮から連れてこられた方々が大勢いらっしゃいます。
 20年ほど前までは保険も年金もなく底辺で生活しておられました。そこで成り上ろうとする人が出てきてもおかしくはないのでしょうか。日本人より最低の場所に住み、学校もなく最低レベルの生活か、力を持つ方へ走るしかなかったと思います。
 現在も入国後の措置があいまいで同じような人が大勢出ているのではないかと考えています。


投稿者: しーる | 2009年04月19日 04:17

 なかなかよく考えてらっしゃるのが、うかがえます。
 無国籍は2国間、3国間での現在でも法律上の不備によって生み出されていると思います。日本に住んでいるのに、どこの国籍もない人もいらっしゃいます。もちろん権利など全く無い状態です。
 日本が唯一の被爆国として、もっともっと世界に訴えていけることはあると思います。日本のイメージは「平和国家」であるということが外国の人の多くに認識されています。人類の理想である「平和」をもっと日本の人は考えていいのでは。もちろん一人一人が、しない為にはどうしたらいいか、PTSDとか戦争の現実を知る必要があると思います。タカ派の人たちだけでは、戦争は引き起こされず、経済が引き起こすものだと思います。


投稿者: 佐野 | 2009年04月20日 23:35

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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