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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」 2009年03月

肉体労働をしていた(part1)

 再発した30歳の時に、ぼくはプログラマーをしていたが、その前には無農薬野菜の農家の手伝い、さらにその前は肉体労働を半年間やっていた。現在では日雇い派遣の定番のひとつである土木作業員だ。
 実は発病前の18、19歳の頃にもやっていたのだが、現場の廃材の後片づけが中心で、建設の現場にかかわることはなかった。当時は高田馬場駅前に朝5時とかに集合して、手配師が示す現場に、その場で「5名まで!」などと言われてトラックに乗り込んだり、地下鉄の運賃をもらって、現場まで行ったりしていた。体力のなかった当時のぼくにはきつく、技術も身に付かないバイトだった。



アダルトチルドレン(part2)

 不幸な子どもが大人になって、自己に直面して自己改革することなく子どもを育てると、また「できれば親にならないほうがいい」親になってしまう。こうしてアダルトチルドレンは、またその子をアダルトチルドレンにしてしまうことも多い。弱者の親がさらに自分の子どもを虐待し追い込む。
 大人のいじめもそうだ。職場が過酷なほど、いじめが発生する。知人に、保育園での職員からのいじめで仕事を辞めざるを得なかった保母さんがいるが、辞めたらとても元気になった。しかし、家庭での虐待の場合は、なかなか逃げることができない。



アダルトチルドレン(part1)

 今となっては、90年代に大流行だった「自分探し」や「アダルトチルドレン」の議論が懐かしくなってしまったけれど、今の若者はもっと厳しく、生活していくのに精一杯というところに追い込まれている。
 雨宮処凛さんは、「以前は『機能不全家族』いうことで、若者の怒りが親ばかりに向かったが、今はネットカフェ難民問題などで、怒りが社会に向かっている」と言っていた。昨年は、小林多喜二の『蟹工船』ブームで、共産党への入党者が年間1万人増えたそうだ。



いいワーカー(part2)

 仕事のかかわりのなかで、病者の怒りに触れ、身に覚えのないような「こっぴどい悪口」を言われることもある。「知的」なワーカーはそれを近づき過ぎと感じ、抱え込みとして距離を取る。それがぼくには「良い子」のようで物足りなく感じる。
 もちろん去る者は追わず、来る者は拒まずが原則(現実には手に負えないと敗北を認めて拒む場合もある)なのだが、人の人生を抱え込むことは楽しいし満足感がある。必要とされると共依存的なAC(アダルトチルドレン)の喜びがあるからだ。もちろんぼくがACなのだが、これは広く福祉業界に存在する感性ではないだろうか。



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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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