貧困
厚労省は、年末までに3万人が失業するといっている。下請けまで含めれば、10万人が失業するともいわれている。今年を締めくくるブログはこの話題しかないのが残念だ。
今のこの、若者だけではなく中高年にも広がる貧困の原因をつくったのは「自己責任」のかけ声とともに、小泉―ブッシュの進めた規制緩和であることは、今ではマスコミでも広くいわれている。しかし当時は、マスコミも改革一色で、「NO!」をいう少数派はマスコミにはほとんど取り上げられることはなかった。障害者自立支援法案の反対に、障害者を中心に3万人が立ち上がっても、マスコミの扱いは小さかった。
今の若者には仕事がない。解雇されて、会社の社宅も追われて住むところもないと、毎日のように報道されている。これからは、親は自分の子どもに安定した幸福へのルートを示すことはできないだろうし、親になる人ももっと減っていくのだろう。もちろん立場の弱い外国人や障害者は優先的に首を切られる。
この冬を乗り越えるのは、首を切られた派遣社員にとっては命をかけた闘いになるだろう。からだの弱い人は医師に「働けない」という診断書を書いてもらって、生活保護にチャレンジしてほしい。病気でなくても困窮者を救うのが生活保護だから。ぜひ専門家を見つけて一緒に行ってほしい。一人で行っても追い返されるのがオチだ。申請してから保護が決定するまで2週間かかるから、何とかしのいでほしい。受給者の増大など知ったこっちゃない。命がかかっている。
住むところがないと生活保護の申請もかなわずに、ネットカフェ難民やマック難民となり、段ボールハウスのホームレスまで地続きだ。ネットカフェならまだ横になれる椅子があるが、マックではテーブルに突っ伏して寝るしかない。ネットカフェも一泊1500円くらいかかるので、スルーしていきなりの野宿者が、それも若者の野宿者が急増していると聞く。
住民票と保証人がいないと就職もリスキーなところしかないし、仕事や生活保護で入金のあてがないと、アパートに入りたくても不動産屋も相手にしてはくれない。
非正規の人たちはほとんど社会保険に入っていない。健康保険は掛け金が高いから、結局保険証を持てていない人が増えている。若者のクルマ離れから、運転免許も持っていなければ、病院にかかれないだけでなく、保険証は唯一の身分を証明するものだ。住むところを失った人を待っているのは敷金礼金なしのゼロゼロ物件だが、一日でも支払いが遅れると自分の住居から強制的に閉め出され、違約金が発生する。手持ちがなければサラ金が待っている。保険証がなければ、サラ金すら貸してはくれない。でも安心、派遣会社の発行するIDカードでサラ金を利用できる。
地方では仕事がなく都会に出てきている人たちは、実家の田舎に戻る金もない。帰れるのは実家が金をもっている場合だけだ。年末の休みから正月明けまでの1週間、役所も会社も事業所もすべて閉まってしまう。その間に亡くなってしまう人も出てくるかもしれない。責任者出てこい!
昔も若者は貧乏だった。今なら引越し屋に金を出して引越すけれど、昔は金がないから、知り合いに頼んで飯をおごって手伝ってもらったりしていた。知り合いも貧乏だから、気安く引き受けてくれたものだ。貧乏は、飯をおごるだけで困っている時に知り合いが手伝ってくれるという生活の知恵がつく。今の若者はどうか知らないが、引越し屋にやってもらうことが多いのではないだろうか?
もちろん貧乏など嫌に決まっている。働くことに追われ、貧乏暇なしという言葉もある。しかし貧乏は助け合わないと暮らしていけないといういい面だってある。共同体の基礎だ。
年齢制限でリストラ後に再就職できない中高年も多いだろう。大抵の仕事は年齢制限40~45歳までだ。どんな大会社の元管理職でも、若者に混じってガードマンや清掃作業しか就労先などない。
職業訓練校は限られたメニューしかないけれど、あらゆる業種における職人を養成する、細かく多彩なメニューが用意されるべきだろう。例えば、スイスなどで時計職人や楽器職人の学校で跡継ぎを目指す若者が学んでいるような。
農業や漁業、福祉分野では、人手が足りない。政府が援助することで、雇用の創出ができるはずだ。しかし政府のやることには時間がかかるから、今は働ければ何でもやるしかないだろう。
非正規労働の首を切るばかりの企業だが、「どうしても派遣は必要だ」というなら、社会保障(雇用保険などのセーフティネット)、正社員との同一賃金、職業訓練を企業の責任で実現することが急務だろう。それらを求めて、裁判に訴える人も出てくるだろう。100年に一度といわれている恐慌は長続きしそうだから、政府がビジョンを示して労使の議論こそが求められている。
連日解雇の話ばかりのなかで、居酒屋チェーンや九州のタクシー会社が、それぞれ500人の新規採用を発表したのは、ほっとするニュースだった。
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