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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

寂しいということ

 病者は家のポストをよく確認する。何も入ってないと寂しさを感じる。正月で休みが続いて、年賀状が1通も届いていないと、社会から完全に見捨てられたように感じる。
 ぼくもせめて年賀状の返事が来ることを期待して、同窓会名簿などを引っ張り出して、過去に親しかった人に出したりしたが、返事が返ってくることはまれだった。それでムゲンのメンバーには、毎年全員に年賀状を出すことにしている。

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 パソコンのメールも同じだ。誰からも1通のメールも届かないと孤独だ。それで目一杯たくさんのメーリングリストやメールマガジンに入ったりする。普通の付き合いがあって、仕事がらみではあっても、友人から連絡がそこそこある健常者には、この寂しさはわからないだろう。
 これら寂しさの人間関係で苦労し過ぎた人もいる。「人が自分に近づくのは利用するためである」と、人の善意や温かさを信じないで、人を疑うことが先にきてしまう人もいる。だから人から親切を受けると「何のために親切をするのだ!」とパニックになって、親切にした人に敵意の妄想を向けることもある。
 同居する親にしか寂しさを訴えられなくなって、親に暴力を振るったりする人もいる。買い物依存やアルコール依存なども、根底にあるのは寂しさだ。これら自分を痛めつける自傷系も、常に寂しさを肌で感じ、見捨てられ不安を抱えている人が多い。

 どうしてそこまで寂しいかといえば、育ってきた環境から、愛されている実感が育たなかったのが大きな原因だ。アダルトチルドレンともいうが、子どもは安心の中で育つべきなのに、緊張した家庭環境の中で育つとこのようになるという。
 ぼくは高校生になって、世間の普通の家族のありさまを初めて見て、「世間とは何て甘いのだろう!」とびっくりした。前提となる安心感なくして、どうして対人関係のスキルを磨いていくことに踏み出せようか。
 しかし、それぞれの家族には、子どもに安心感を与えられないさまざまな事情というものがある。愛に満ち足りていない家庭、子どもを無視したり子どもから収奪しようとする親も多いように思う。偉い人の考えた教育論などは、机上の空論でしかない。理不尽なことだが、こうやって寂しい子どもは再生産され、大きくなってから病者になる者も多いのである。

 アダルトチルドレンとは、アルコール依存症など、子どもの成育に悪影響を与える親の元で育ち、成長してもなお精神的影響を受け続ける人のこと。


コメント


 その寂しさは孤独感とかなのですかね。
 年賀状は来ると嬉しいですよね。私も年賀状が来ると嬉しいです。
 でも、年賀状を作るのは大変です。親しい友人だけなら良いけど、お仕事の仲間とかにも全員出さないとダメだろうし。
 ダメではないのかもしれないけれど、年賀状を待ってる方がいるかもしれないし、向こうが出してるのに、こちらが出してないのもマナー違反な気がしちゃって。
 でも、年賀状は来るとやっぱり嬉しいです。


投稿者: taro | 2007年11月01日 18:04

 いつも、楽しみに読ませて頂いてます。
 緊張した家庭環境の中で寂しい思いをしている子供…もしかしたら、我が家の子供たちもと思ってしまいました。
 子供に、両親の中が悪いのはつらいといわれて…でも、仕方がないのと子供には正直に伝えました。どうしても許せないことがあって…と。
 子供なりに、私の気持ちは察しているようですが、よその家は違うといわれて…
 不仲な両親の元で育つことが、子供の成長にどう影響するのかな…と。
 父親母親それぞれ、子供は好きなのですが。愛情って、もって接していれば伝わるものですか?? 周りからは、子供がかわいそうと責められます。
 家族って難しいですね。


投稿者: マイケル | 2007年11月02日 00:09

taroさん:今年も年賀状の季節ですね。よかったら年賀状出すので、メールで住所教えて下さい。

マイケルさん:愛情は子供に伝わると思うのですが、小さい頃、どこに旅行に行ったとか、あんまり子供は覚えていないですね。
 夫婦の不仲はたとえ別れたとしても、周りからは多分もっと子供がかわいそうって言われるだろうし。でも、子供は信頼していれば、たとえどんな選択を親がしようと本人は大人の事情というものをそのうち理解するものと思っています。家族は難しく、かつ一番大事でもあります。


投稿者: 佐野 | 2007年11月02日 18:28

 私が小さい頃、両親はいつも喧嘩していました。
 母親の祖母に「お母さんを守ってやって」と幼少期に言われ、何も知らない兄と妹はワガママを言いっぱなし。私も甘えたいし、ワガママを言いたいけど、私も言うと母親は参ってしまう…。
 と、ずーっと本当の気持ちを隠し、「お利口な子供」を演じてきました。父からも温かい温もりというのを感じたことがなく、大人になりました。
 その結果、自分を素直に出すということができなくなり、自分の殻から出られなくなりました。大人になればなるほど、社会生活での摩擦が心身とも耐えられず、精神安定剤を服用しなければ日常生活が機能しなくなりました。
 また、父から愛情を受けられなかった分、父親に変わる愛情を求め、結果、不倫しました。それでもいまは不倫も止め、何とか安定した生活をしていますが、子供の頃の屈曲した出来事や思いは、成人になるに従い必ず反映されると思います。
 そして幼少期の両親の喧嘩ほど辛いものはなく、結婚(男性)に対して不信感で一杯で、夢も理想も希望も持てなくなった32歳です。


投稿者: サキ | 2007年11月05日 16:18

 子供に守られなければならないほど、お母さんは弱かったのかもしれません。子供が強がって、いい子を演じても、いつか破綻が来ます。
 ぼくは母との葛藤の解決に40〜50年を要しました。その長い葛藤が自分を大きく育てました。親とは反面教師です。親と全然違う家庭を築こうと、逆の極端に振れた時期もありました。葛藤が鎮まるに連れて、落ち着きがやってきます。
 パートナーは、現実的に一緒に居て楽な人ときっと知り合えると思いますよ。きっと癒される時が来ると思います。男性不信のフェミニストでも結婚している人も多いです。


投稿者: 佐野 | 2007年11月05日 23:10

 佐野さんの言葉もわかります…。

 でも、幼少期の記憶や寂しい思い、喧嘩ばかりの両親なのに夜は夜の生活がありとても不潔に感じたこと、高校生の時先輩にレイプされたこと、ストーカーされたこと、不倫相手との間に出来た胎児を堕胎する手術中、麻酔から一気に目覚めて半狂乱になったこと…その全て自分の未熟さから起こってしまったことだけど、男性=性交・怖い・不潔という思いが頭から離れないです。
 なのに、心の何処かでは安心出来る拠り所を求めているので、人間って矛盾していますよね。機械じゃないからしょうがないけどですね…。

 佐野さんが言うように、いつか心が癒される日がくればいいなと思います。


投稿者: サキ | 2007年11月06日 09:04

 矛盾していない人間はいないし、人間は永遠に未熟です。
 PTSDが強いのですね。思わぬ場面から連想が広がって、フラッシュバック起こしたりしますよね。でも、こうやって話せるようになったことは、随分良くなっているのでは、と思います。これから、もっと良くなっていくと思います。
 大人も子供も、みんな安心を求めるのは当たり前だし、生きる上で基本的な欲望だと思います。みんな何らかの問題を抱えた生身の人間です。今もありのままの自分でいたらいいと思います。


投稿者: 佐野さん | 2007年11月06日 18:34

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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