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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

ぼくは再発したのか!

 ぼくはコンクリートで固められた3畳間くらいの広さの部屋にいる。小さな窓は強化ガラスだ。空気が湿っぽい。とりあえずせんべい布団から起き上がって、部屋の隅の金隠しで放尿する。終わったら水を流してもらうために大声で看護師さんを呼ぶ。なかなか来ない。部屋にはずっとすえたにおいが漂っている。

 ぼくはワーカーだ。3年前に国家試験に合格した。ルーテル作業センタームゲンで働いている。そう、ルーテル作業センタームゲンは奥さんらと19年前に設立したんだ。そうだ、ぼくには奥さんも子どももいる。奥さんの名前は波津子だ。
 ぼくは統合失調症だ。発病は20歳のとき、猛烈な幻聴、幻視の中で病院に入院した。4年間開放病棟に入院した。後半2年間は入院しながら大学に通った。福岡工業大学だ。入院していた病院は九州大学病院。最寄りの駅は鹿児島本線吉塚駅。電車で毎日大学に通っていた。
 大学を無事卒業してから地元松山に帰り、バイトばかりした。そして30歳で魔の再発! 再び九大病院に半年入院。地元松山の病院に転院してから退院した。それからまたバイトした。バイトを続けながらムゲンを設立した。波津子と二人三脚で作業所をやってきたはずだ。記憶がぐるぐる回る。

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 どうしても最近のことが、霧の中にいるようで思い出せない。昨日までは普通にムゲンで働いていたはずなのに。どうしても記憶がつながらない。また再発したのだろうか?
 そのとき保護室の小窓に人の気配。鉄製のドアがガチャガチャと開けられる。男の看護師2人が入って来る。
 「先生の指示で電気ショックすることになりました」
 ぼくの体はみるみる緊張でこわばってくる。腕を後に回して、2人の看護師はぼくを無言で羽交い締めにした。
 「嫌だ! 助けてくれ! ぼくは何ともないんだ! 記憶をなくしたくない!」
 ぼくは両腕を振り払おうと、左右に猛烈に暴れた…。

 いきなり目が覚めた。いつもの自分の部屋だ。見慣れたベッド、広い窓からは朝日が差し込んでいる。時計を見ると9時前。ぼくは大きく安堵した。
 「夢だったのか」。
 ベッド脇のラークを1本取り出し、火をつける。昨日の残りのカフェオレを飲む。ぼくはごそごそと起きて今日もムゲンに行く支度を始める。


コメント


 今日は、僕も悪夢でちょくちょく起きて寝てです。
 ロヒプノールを続けて飲んで急に抜く、と夢ばかり観ます。眠剤で寝てると夢を観ないので、抜いた日にたくさん夢を観るみたいです。
 夢って、観ることに何か意味があって観なくちゃいけないんですね。きっと。
 ブログ、毎回楽しみにしています。祝。


投稿者: sun | 2007年10月01日 13:07

 ブログはじめられたのですねw
 2005年暮れに、ムゲンの掲示板で交流させて貰ってます。意見が互い違いになったり、削られたりもしましたが、それでも受け止めて戴きました…。ありがとうございます…。
 山陰といえばもう一人、統合失調の本を出した著名なあの御方?がいますが、彼女は、佐野史郎(さんー俳優)と、間違えます。今度会ったら、言っておいて下さい…。


投稿者: ハイドラ | 2007年10月01日 20:43

 ぶろぐ設立おめでとうじょ。

 ( ^0^)m。∠※ パぁぁあ~ン

 10日に1度の更新…三日坊主にならないためか。(-。●) ボソッ


投稿者: 揉み爺。 | 2007年10月01日 20:50

 怖い夢をみてしまったのですね。。。
わたしは、悪夢はめったにみませんが、睡眠時間の確保に四苦八苦の毎日です。。。


投稿者: 金太郎の妻 | 2007年10月01日 21:48

 佐野さんとぼくはなぜか共通点が多いと思ったら、電気ショックが今になって、全てを益にとらえられる脳に変えてくれたのでしょうか?お互いに。
 それとも僕もクリスチャンだからでしょうか? この病気になってよかったと思えるようになったのは。
 僕は54才で、入院と施設の連続13年からの退院が決まったときに、この病気の恩恵を知りました。


投稿者: 夢眠 | 2007年10月01日 22:12

 sunさん:夢って記憶の排水路って聞きます。問題が片付きつつあるのかもしれません。
 ハイドラさん:佐野史郎さんと間違えられるなら光栄ですね。
 揉み爺さん:ありがとう。
 金妻さん:夢オチは古典的ですかね。
 夢眠さん:病歴が長いことが特に共通点なのかもしれません。


投稿者: 佐野 | 2007年10月05日 20:13

Hi.
I need your help


投稿者: Objessecefe | 2007年10月17日 22:14

 えっ、日本の方ですよね。病者の方なら、ムゲンのホームページに書き込んでください。
http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/


投稿者: 佐野 | 2007年10月19日 06:39

私、介護歴六年位ですが、癲癇発症して解雇され、今、施設のおそうじおばちゃんしてます。ぶったおれて意識無くしてから死が怖く無くなりました。たいして時給変わらないのに、気を遣いながら介護してるより掃除やってるほうが気が楽です。家では、両親から嫌味の嵐ですが、開き直れば怖いものなし。55才であと何年生きるか面白がってます。


投稿者: のりママ | 2013年08月10日 09:31

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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