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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

自分らしい夢を描こう

 先週末、横浜と富山に講演に行ってきました。

 横浜市旭区では、地域生活支援フォーラムがあり、サブタイトルが「ぼくたち、わたしたちの夢」で、「D1グランプリ(D=出し物)Inあさひ」という障害のある方たちが様々な出し物(太鼓・ダンス・うた・ピアノなど)を通してグランプリを目指すというイベントもありました。

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 私は審査員を務めさせて頂いたのですが、お一人お一人が、ステージ上で自分のありのままを表現している姿が心に残りました。司会の方が最後に必ず、「あなたの夢はなんですか?」と聞いていたのがとても印象的で、それぞれが答えては拍手が起こりました。皆さんが語っていたのは、他の人と比べてどうこうではなくて、誰にも邪魔できない自分だけの夢です。6組の方々が参加していたのですが、一組一組にその質問が投げかけられるたび、会場で観ている側も同じように問いかけられている気がしました。私も、ステージ上の皆さんが語る夢を聞いて、「自分の夢をこんなに爽快に語れるだろうか?」と考えました。おそらく、色々な不安が出てきて、胸の中にはあっても、表に出すことはなかなかできないと思い、少しうらやましくなりました。とても、大事なことを気づかせていただいた気がします。

 それから、翌日、富山県入善町でのメンタルヘルスフォーラムで講演した後、小矢部市で、障害者の方と高齢者の方がお互いに支えあって小矢部産の大豆・水を使った手作りがんも・巾着・油あげ等の豆腐製品を製造しているお店、斉藤商店の皆さんらによる「コミュニティカフェ・フェスタ第2弾―うつでも夢を トーク&ライブ」に参加してきました。
 会場には、80名ほどの人が集まっていたのですが、まず驚いたのは、小学生から高齢者の方まで、幅広い年齢の方が集まっていたことでした。そこで、皆さん、楽しそうに語り合っていて、私もその空間にいると、とても心地よく感じました。私も皆さんと交流して、色々お話しさせて頂く中で、昨日の横浜の方たちのように、自分の夢があって、それを表現したくてしょうがないという印象を受けました。ただ、現在は、その表現方法を模索している段階の人が多いとも思ったのです。

 この横浜と小矢部での出来事は、とても、繋がりが深いと思います。自分が安心できる場所があり、そして、それを具体的に応援してくれる人がいて初めて、絵空事ではなくて、真実味の帯びた夢になります。
 実は、私の20歳の時の夢は、「高校卒業」でした。当時、それを言うと周りのみんなは笑いました。しかし、3回学校が変わっている私にとっては、十分大きな夢だったのです。通信制高校ではありますが、学校という場所があり、支えてくれる担任の先生(今の私の仕事に即して言えば、学習コーチです)がいて、初めて迷うことなく、夢に向かうことができました。
 やはり、一人でできることは少なすぎます。人の力を借りたり、新しい気づきをもらったりすることで、どこかにそれを達成できそうな道が見えてくるはずなんです。もちろん、そのためには、その道を一歩一歩歩んでいける力をつけておくことも必要です。当然楽しいことばかりじゃないと思います。晴れの日もあれば、雨風の日もあります。でも、そのすべてを受け入れて、自分の土台を築いていくことが大切なのではないでしょうか。

 想いだけではどうにもならないことはたくさんあります。でも、想いがあるからこそ、始まることもたくさんあります。もしかしたら、小さな夢かもしれませんが、その夢を少しずつ叶え、新しい夢をまた叶え、そうして少しずつ、心からの夢に近づいていくのだと思います。

 今回、コミュニティがあることがどれだけ安らぎを与え、純粋無垢に夢を語ることがどれほど、人の心を揺さぶるのか考える時間になりました。今度は、DREAMの“D”で、夢をおおいに語り、それをどう形にしていけるのか、いろいろな人と語り合えたら、新しい発見がさらにあるかもしれません。


コメント


今、講演聞きながら書き込みしてます。
初めての場所で、知らない人ばかりの中で一生懸命話をしてくださってます。
自分のこと振り替えって話すことは、誰だって嫌だし苦手です。
勇気をありがとう。
私も何か、私の高校の生徒の話を聞いてやりたい。
どんな自分でも、自分のこと好きでいるように伝えます。


投稿者: にしばやし かずほ | 2011年02月23日 14:49

にしばやし かずほさんへ

コメント、ありがとうございます。また、講演をお聞きいただき、ありがとうございました。

こちらこそ、聞いてくださる方がいて、初めて、講演は成立します。だから、感謝の想いでいっぱいです。

どんな自分でも、自分のこと好きでいるようにお伝えください。人に何を言われても、かけがえのない世界でただ一人の存在なのですから。


投稿者: 南雲 明彦 | 2011年02月25日 17:59

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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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