マイナスをプラスへ変えよう
先日、ユニバーサルデザインを推進している企業の代表の方とお会いしてきました。その会話の中で印象に残ったのが、「障害があっても、たくさんの選択肢の中から、選べる社会がいい」という言葉でした。私もこれには、深く共感しました。もちろん、障害の程度や種別によって、職業は、選べるものと選べないものがあるかもしれません。さらに得意なもの、不得意なもの、それぞれ、みんなが何かしら、持っていると思います。その中で、自分自身が幸福感、達成感を持ってできる仕事を見つけられたら、本当に心から笑って、生きていける。経営学や組織論で「ダイバーシティ(多様性)・マネジメント」という言葉が注目を集めていますが、多様な人を受け入れ、異質なものを逆に力に変えられる社会こそが、今後必要になってくるのだと思います。
ただ、どうしても、「異質」な人によるそれまでと異なる行動や発想などに気を取られてしまい、違和感を覚えてしまうことも少なくないのが日本の現状です。
その中で、仕事の能力以外に何が必要になってくるかというと、「愛される人間であること」が大切だと思います。例えば、笑顔が素敵だったり、可愛らしかったりすると、行動や発想を受け入れようという動きが出てくるのではないでしょうか。これは、生まれ持ったものというよりは、小さい頃からの癖みたいなものが、にじみ出るのだと思います。
しかし現実には、自分の子どもであっても、子育てが大変で、愛せなくなるということが起こっています。
先日、1月30日付のasahi.comにこんな記事が出ていました。
「息子の障害悩んだ末に 殺人容疑の母、支援団体にも相談」(http://www.asahi.com/national/update/0129/TKY201101290355.html)
もし、発達障害の診断後、すぐに支援が入ったり、 支援場所を紹介されたり、 保育園との連携がはかれたり、または、 医療につながっていたとしたら、違う選択肢を選んでいたのかもしれません。このような事態に陥る前に、何かできることがあるのではないのか、と考えさせられました。つまり、子どもは地域一体で育てるという発想にならないと、その子ども自身が愛される、愛されない以前の問題になってくるのだと思います。
また成人の人たちにも、さまざまな悩みが出てきます。もちろん、人間である以上悩みはつきものですが、障害のある人の悩みは、私が体験したように深刻な悩みなのです。ここで、幼少期、学齢期に手厚い支援を受けていると、その体験が基盤となって安定・安心して、社会生活を営むことにつながってきます。その基盤がないと、不安定で、苦しい状況が続いてしまうかもしれません。
さて、先日、ワタミ株式会社の代表取締役会長である、渡邉美樹さんと、「誰でも手話リンガル」(明治書院)*1を執筆された松森果林さんとの対談の模様が、渡邉さんのオフィシャルブログ*2に掲載されていました。私も、松森さんとはお会いしたことがあり、ちょうど、その時は、東京湾大華火祭の日。高層マンションから、松森さん達と食事をしながら、眺めていました。その時には、私は手話ができませんので、いわゆる「口話」でお話しさせて頂くことができました。その時の、花火の眩しさにも似た、満面の笑みと、前向きな姿勢、活動に、私も心を打たれ、勇気や希望を頂いたのです。しかし、松森さんは、中途障害で、片方ずつ、耳が聞こえなくなったことで、深く傷ついた時期があったそうです。でも、それを力に変えて、現在は、出版、講演活動、ユニバーサルデザインコンサルタントとしてご活躍の傍ら、11歳の男の子のお母さんでもあります。
『私の強みは「聞こえないこと」』
松森さんは、こんな風に自身の障害を力に変えることができるという証明をしてくれています。心から見習いたいと思いますし、渡邉さんが「夢に日付を!」と、おっしゃっているように希望を持ち、夢をもち、志をもちながら、自分の人生を歩んでいく。そんな光の強い人に、他の人は集まり、力を貸してくれるのだと思います。
*1「誰でも手話リンガル」(明治書院)http://www.meijishoin.co.jp/search/?BOOK_ID=MBB000470
*2「夢に日付を!」 Powered by Ameba(http://ameblo.jp/watanabemiki/entry-10782454687.html)
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