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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

障害と共に生きることはできる

 先日、新潟へ出張がありましたので、実家に宿泊しました。そこで、挨拶回りに、関係者の方をご訪問させていただいたのですが、私が今の活動をはじめてからは初めてお会いする方がいらっしゃいました。本当に久しぶりだというのに、第一声が「最近、色んなところで活動しているみたいだけど、ちゃんとご飯食べてる?」という言葉。安堵を覚えました。やはり、故郷であり、小さな頃から私を知っている人の対応というのは、いつになっても変わらないものです。これって、とても大切なことで、何が起こっても変わらない存在というのは貴重だと、身にしみて感じました。

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 私は、これまで発達障害をもっていることを知らせた瞬間から、相手の態度が変わるのを目の当たりにしてきました。もちろん、配慮をしてくれる、良い意味での対応の変化もありましたが、「障害」と聞いただけで、当たらず障らずの対応になってしまう人もいました。
 「うつ病」の時にも似たようなことがありました。私は、約9年前に「うつ病」と診断を受けました。その事実を精神病院に入院している間に同級生に伝えようと、私の言葉を母に代筆してもらい、担任の先生から、みんなに伝えてもらいました。それまでは、「大丈夫?」という声を沢山もらっていましたが、それ以降は、急に連絡が来なくなりました。しかし、この時のそれは「当たらず障らず」というのではなく、真剣に私の回復を考えてくれた同級生たちの精一杯の思いやりだったのです。それがわかったので、私は苦しい状況の中でも、とても暖かさを感じることができました。
 もし、この時に差別的な対応を取られていたら、苦しさが倍増していたと思いますが、それまでの障害の有無に関わらず、同じ学校で、色々なことを共有できた仲間との時間が、その関係を作り上げてくれたんですよね。

 発達障害支援についてよく言われる「早期発見、早期対応」。それはとても大切だと思いますし、私ももっと早い段階から、何か支援があったらよかった、と思います。しかし半面、自分に障害名、病名がついていなかったからこそ、その場に溶け込めたような気もします。そこで、周りのみんなが、障害名などを気にしていたら、ぎこちない関係になっていて、本音で語り合える仲にはなっていなかった気がします。だから、友だちとの間では、読み書きが苦手でも、「障害」ではなかったんです。

 そうはいっても、学校にいるほとんどの時間は、読み書きに費やされます。その部分で苦痛を感じて、2次障害を起こしてしまったら、大切な仲間とも会えなくなってしまいます。私は、9年前のクリスマスは、病院で過ごしました。みんなと、楽しい時間を共有できない切なさは計りしれません。だから、未然にこうした事態を防ぐ必要があると思います。

 今の私は、こうして、もう一度、立ち上がって、生きることができています。「ディスレクシア」という障害さえも自分の一部だと思って、共に生きることできています。自分の努力で克服できることといえば、実は限られていて、IT機器を駆使して、読み書きを補っている他は、やはり、人の手を借りずして、生きられません。そのような中で、私は、様々な人に手伝ってもらいながら、仕事も自由に円滑に進められるようになってきました。これは、障害者に対しての配慮、というよりは、南雲への配慮、なんですよね。

 南雲のことを、理解しようとしてくれる人がいる。
 南雲のことを、守ろうとしてくれる人がいる。
 南雲のことを、応援してくれている人がいる。

 こんなありがたいことはないんですよね。もちろん、全ての人が自分のことをこのように思ってくれるかといったら、そうではありません。でも、「障害者と支援者」という関係だけではなく、「人と人」という関係で接してくれる人がいてくれることで、初めて、自身の障害、もっといえば、「ありのままの自分」を受け入れ、共に生きていけるんだと思います。


コメント


私も自閉っ子を育てていて、早期発見、早期対応がとても大切だと思いますが・・・
愛情を受けて育った子どもは、多少遠回りをしても人としての道を歩く。そんな気がしています。
「千里の道も一歩から」ひとつひとつ、成功体験を増やしていく。こけてケガをしても、立ち上がればいいんだよね~。

先日ある勉強会で、宇都宮大学の梅永雄二教授にお会いしました。
「定型発達の人は、液体。発達障がいの人は固体。容器に合わせられるか、できないかの違いだけ」
世間という容器が、大きくやわらかな素材に変わっていきますように・・・


投稿者: 大阪のおばはん | 2010年12月23日 22:32

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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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