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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

「歩み寄る」ということ

 11月7日(日)に徳島県立総合教育センターで、特別支援教育講演会を行ってきました。とくしま教育の日(教育週間)実施事業ということで、講演以外にも、高校生産業教育展やわくわくキッズフェスティバルが開催されていました。その後、四国放送から、取材を受けました。放送予定日は、12月4日(土)午後3時~3時30分となっております。徳島にお住まいの方は、ご覧いただければ、幸いです。内容は、発達障害の解説、発達障害の事例紹介、徳島県内の支援、療育体制の現状についてとのことです。

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 ささやかではありますが、自分の経験してきたこと、想いを伝える場を用意してくださる主催者の方がいて、お越しくださる方がいらっしゃるからこそ、講演というのは成立します。本当に感謝しています。
 ただ、もし、私の講演スタイルについて、何か制約を設けられてしまったら、講演で話すということは成立しません。例えば、私は、話の内容を箇条書きのメモにして、用意はしていきますが、それ以外は基本的にマイク1本のみで講演します。内容自体は、聴講者の人たちの様子を確認しながら、求められている内容を自分なりに察知して、変えたりします。
 しかし、もし、原稿を作成し、読み上げるという制約があれば、ディスレクシア(読字障害)の私には講演が難しくなります。今は、このスタイルを理解してもらっていますが、講演を始めた当時は、理解してもらえず、苦戦しました。「原稿が読めないのをわかっていて、あえて、読ませるのだろうか」と、悲しさや悔しさを覚えました。その理由として、「ほとんどの講師の方は、原稿を作成していました」という理由で、私にも同じようなやり方を要求してきたのです。

 しかし、普段、「読む」という行為は、みなさんが当たり前にやっていることなので、悪気がなくても、ついそう言ってしまうのは、しょうがないことだと思います。しかし、いつものやり方を押しつけられて、辛い思いをしている人がいることをわかっていただきたいのです。そして、そんな時は相手を傷つけないように自分のやりやすい方法を伝えるように努力します。特に、否定語を使用すると、相手が責められていると解釈する可能性があるので、注意が必要です。例えば、下記の2つの文章は、どちらが聞こえがよいでしょうか。

1、「原稿を読めないので、違う方法でお話したいのですが、いかがでしょうか?」
2、「原稿をそのまま読むより、違う方法でお話しした方が相手に伝わると思うのですが、いかがでしょうか?」

 私は、いつも2の表現方法をしています。これが良いか良くないかは、最終的には相手によると思いますが、2の方が相手の提案を否定することなく、こちらの提案を伝えることができます。おそらく、講演で「いかに読むことが難しいか?」を聴いてくれれば、相手は最初のお願いが、私には困難だったことに気づくかもしれません。大切なことは、「最初から全てを理解してもらえないことは当然のこと」という意識と、「伝わるために、自分自身も表現方法を工夫する」という意識を持つことだと思います。そして、相手にもその姿勢を気づいてもらって、発達障害についての知識があれば、別の方法を考えつくことができます。これこそが、「歩み寄り」になるのではないでしょうか。

 どんな人にも適切な教育、支援ができるのが一番なのでしょうが、少なくとも、この人は対応が難しそうだから関わりたくない、という意識は減らしていけたらな、と思います。そして、相手のことを知ろうとする想像力が必要不可欠です。

 発達障害は、本人を責めても何も始まりません。だからこそ、わからないから避けるのではなくて、まずは、とくに大げさに構えることなく、本人自身の努力を認めてあげて、それを生かす方法を探ってもらえればと思っています。そして、わからないからこそ、新しい視点が生まれ、その人の本当の困難さ、魅力に気づくことになるはずです。


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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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