ページの先頭です。

ホーム >> 福祉専門職サポーターズ >> プロフェッショナルブログ
南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

本当の“平等”とはなんなのか

 先日、性同一性障害(以下、GID)をもつ人とお会いしてきました。その人は、学歴は有名私立大学卒業で、就職難とはいえ、仕事の能力としては申し分なかったのですが、この障害をもっていることで、偏見の目で見られ、就職ができないという事態に陥ってしまいました。現在は飲食店の店長をしており、お客さんやスタッフの理解もあり、余計なストレスがほとんど無い状態で社会生活をしています。

続きを読む

 GIDについては、2003年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行されました。その第3条には「家庭裁判所は、性同一性障害者であって各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる」とあります。詳細は、厚生労働省HP(http://www.mhlw.go.jp/general/seido/syakai/sei32/index.html)をご覧ください。
 この法律により、今までの第2次性徴発来後からの違和感を取り払うことができ、安心して、生活を送ることが可能になってきているようです。

 9月20日のFNNスーパーニュースでも、GIDの現役大学生を取材し、GIDを打ち明けた時の両親の反応や現在の心境を語っていました。日本で始めてGIDを公表し区議選に立候補した政治家の人も取材に応じていて、これから社会に出て行くGIDの学生たちへ向けてメッセージも送っていました。また、最近では、小中学校などでもGIDの生徒が異性として通学することを認められており、GIDは徐々に認識されつつあります(東京新聞、朝日新聞)。2010年9月3日の毎日新聞「記者の目:性分化疾患と性同一性障害」(http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20100903k0000m070125000c.html)という記事の中で印象的だったのは、取材を断った家族の「取材に応じられるのは壁を乗り越えられた人たちだけ。声を上げられない人が大勢いる」という言葉でした。これは、発達障害にも同じことが言えるのかもしれません。ただ、声を上げたくても、上げられない人たちもたくさんいます。まだまだ、学校や社会での認知が進んでおらず、気軽に自身の障害について、語ることができません。これは、本当に悔しいことです。

 もちろん、性同一性障害と発達障害は、違うものです。しかし、マイノリティという部分では同じだと思っています。「社会的な平等」を獲得するという視点で言うと、GIDの人たちの活動に見習う部分はたくさんあるのだと思います。法律制定やマスメディアへの登場にしても、当事者たちが積極的に関わっているのがよくわかります。発達障害についても、たとえ時間がかかっても、当事者たちが積極的に世の中の差別や偏見を取り払う活動ができるようになっていけたらいいなと思います。

 そもそも「平等」とは、なんなのでしょうか。学校で言えば、形だけ周りのみんなと同じように勉強できることが「平等な教育の権利」を得ることになるのでしょうか。もちろん、周囲の理解や教育的支援を得られれば、本人たちはかなり楽になる部分があると思います。ただ、「どうしても、できない」という部分もたくさんあると思います。そんな時にサイズの違う物を同じ箱に無理矢理入れようとせずに、それぞれに合った箱を用意するのも手だと思うのです。サイズや形は違っても、箱であることに変わりはありません。このような認識が広がることで、子どもたちはスタートラインに立つことができるようになるのだと思います。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

コメントを投稿する




ページトップへ
プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
メニュー
バックナンバー
その他のブログ

文字の拡大
災害情報
おすすめコンテンツ
福祉資格受験サポーターズ 3福祉士・ケアマネジャー 受験対策講座・今日の一問一答 実施中
福祉専門職サポーターズ 和田行男の「婆さんとともに」
家庭介護サポーターズ 野田明宏の「俺流オトコの介護」
アクティブシニアサポーターズ 立川談慶の「談論慶発」
アクティブシニアサポーターズ 金哲彦の「50代からのジョギング入門」
誰でもできるらくらく相続シミュレーション
e-books