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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

歩み寄りのプロセス。

 先日、日経ビジネスONLINEにこんな記事が掲載されていました。

 ・2010年9月6日(月) 「当事者参加」ができる仕組みを作ろう
 (http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100831/216050/?P=1)

 その中で、「アクセシブルミーティング」という言葉が出てきます。この「アクセシブルミーティング」とは、「誰もが参加しやすい会議」という意味があります。その「誰もが参加しやすい会議のあり方」について定めたガイドラインといった性格をもつ規格となっているのがJIS(日本工業規格)の中にある『高齢者・障害者配慮設計指針-アクセシブルミーティング(規格番号 JISS0042)』です。この規格は、「高齢者及び障害のある人々が参加する会議を行う場合、会議主催者が、安全かつ円滑に会議を運営するための支援機器の利用方法などに関する配慮事項について標準化を行い、生産及び使用の合理化、品質の向上を図るために制定するものである。」とJISC(日本工業標準調査会)のHPに記載されています。

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 ちなみに私も会議に参加する際には、紙ベースで資料をもらわず、先に電子データで資料をもらっておき、音声読み上げソフトや拡大機能を使用しています。主催者の人には私の障害特性を理解していただき、手間を取らせてしまいますが、このような形であれば、ある程度円滑に会議に参加することができます。しかし、これを理解していただいていないと、会議へ参加することができても、議論に参加することができなくなり、ただ、そこにいるだけの存在になってしまいます。これでは、あまり、意味がありません。
 イギリスでは、障害者交通諮問委員会(DPTAC)があります。DPTAC(ディプタック)は、障害者のモビリティに関する政府の交通政策について、諮問を行う機関です。構成員の少なくとも半数以上は障害者が参加しなければならないという規定があります。その機関の諮問書類のアクセシビリティとして、障害者から早急に意見が欲しい場合には点字や拡大文字にするなどの対応が間に合わないこともあるそうです。そこで、最近では学習障害がある人でも理解できるようなEasy Read Versionでも書類を作成することになっているのです。重要なことを簡潔にわかりやすく書くので、役所の担当者でさえ、通常の書類ではなく、まずEasy Read Versionを読む人も多いようです。
  
 また、国連障害者権利条約の第30条の中にもこんな事が書いてあります。
 『第30条 文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加』
1 締約国は、障害者が他の者と平等に文化的な生活に参加する権利を認めるものとし、障害者が次のことを行うことを確保するためのすべての適当な措置をとる。
(a)利用可能な様式を通じて、文化的な作品を享受すること。
(b)利用可能な様式を通じて、テレビジョン番組、映画、演劇その他の文化的な活動を享受すること。
(c)文化的な公演又はサービスが行われる場所(例えば、劇場、博物館、映画館、図書館、観光サービス)へのアクセスを享受し、並びにできる限り自国の文化的に重要な記念物及 び遺跡へのアクセスを享受すること

 もちろん、全ての人に完璧に対応することは難しいかもしれませんが、この条文に書かれていることが実現すれば、障害をもっている人たちが平等に社会参加できる機会が増えていく可能性が高くなります。
 しかし、私が思うのは、障害をもっている人たちは、その恩恵に対して、受けっぱなしではいけない。そして、社会にリクエストするだけでも、また、良くはないと言うことです。当事者は、支援者に依存しすぎるのではなく、逆に自分の主義主張を唱えるだけでなく、お互い歩み寄り、あらゆる状況、課題を想定し、「最適なバランスをとる方法」を考えていくプロセスが必要なのではないかと思います。最適なバランスは、互いのことだけを主張し合うだけで、得られません。
 また、障害のある人が、他の障害のある人や障害のない人のことも考えながら答えを見つけていけると、さまざまな人たちが歩み寄れる共通の課題、話題が増えて、つながりも増えていく。そのつながりこそが新しい視点を生み、誰もが参加しやすい社会をつくることにつながるのだと思うのです。


コメント


 第1回から読ませていただいていますが、初めてコメントします。
 私は、知的・精神障害のある兄弟とともに育った人間ですが、たまたま福祉の仕事に長く関わってきました。
 現代社会は「依存する障害者・依存を助長する福祉専門家」という閉ざされた福祉社会と「自己主張ばかりの障害者・敬遠して遠ざかる一般市民」という一般社会と、いずれも閉鎖的な関係が固定しがちです。
 今回の南雲さんのご意見は、こうした固定的な関係を変えていくヒントではないか、と強く共感しました。
 互いの立場の違いを考え、主張を出し合いながら歩み寄り、バランスを図ること…障害の問題以外でも、人間同士の理解を深めるために不可欠なプロセスだと思います。


投稿者: あが | 2010年09月30日 23:56

あがさんへ

コメント、ありがとうございます。
確かにあまり分けたくはないのですが、障害の世界と一般の社会というのは、壁を感じてしまいます。

ただ、どこかに風穴はきっとあって、歩み寄れるポイントがあるのだと思います。

障害という名前が付いていても、同じ人間であることに何ら変わりはない。そして、みんながみんなを好きにならなくてもいいけれど、しっかりと、その存在を見つけて、見つめてほしいと思っています。


投稿者: 南雲 明彦 | 2010年10月01日 13:22

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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