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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

「障害」の表記について

 第5回障がい者制度改革推進会議(平成22年3月19日)の中で、「障害」の表記に関する議論がされました。そこでは、委員の人それぞれに、考え方の違いがあり、改めて、この議論の意味について、考えさせられました。

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 私も、話題のツイッターで『「障害」の表記について、どう思うか?』と皆さんに問いかけてみました。『「害」をひらがなにするべき』『「害」を「碍」にするべき』「今のままでいい」等、様々な意見が出されました。それは、第5回障がい者制度改革推進会議と同じ状況でした。また、以前アメリカの一部にならって「チャレンジド」と呼ぶことも提案されたりしました。

 「精神分裂病」が「統合失調症」と表記が変わり、「痴呆症」が「認知症」へと表記が変更されたのは、記憶に新しいことです。確かに過度な誤解を招かないためには、この変更はよかったのではないかと思います。ただ、「障害」と付く言葉は数が多いが故に、その言葉をすべて新しい表記にするとなると、収集がつかなくなる恐れがあります。「障害者」を「障害のある人」や「障害をもつ人」という表現にすることを提案する方もいますが、これについても、色々な意見があると思います。そして、こういう議論こそが、色々な人に、考えてもらうきっかけになると言う人もいます。

 しかし、このような議論ははたしてどのくらい幅広くなされているのでしょうか。おそらく、そんなにされていないと思います。なぜなら、障害をもっている人と接したことがない(と思っている)人が多数だからです。そして、そのような人々は「自分には関係のないこと」と考えているのではないでしょうか。

 では、仮に、私のように「発達障害」の人間が、言い方を変えて「チャレンジド」という説明をしたとします。おそらく、何も知らない人からは、さっぱり意味がわからないのではないでしょうか。

 私はどの表現方法をとっても、人それぞれの考え方があるのでいいのではないかと思います。ここで大切なことは、「障害はその人の一部分であって、その人の全てではない」というベースを忘れずにいてくれれば、それでいいのではないかと思うのです。同じ障害をもって生まれても、特性は同じでも違う人間なのです。

 私は、「学習障害」をもって生まれたことで、様々な障壁とぶつかりました。しかし、自分がこの障害を持っていることがわかったことで、その障害特性に合わせて、支援を求める、自分自身で支援をするということが明確になったので、少し生きやすくなったのは事実です。
 そして、この障害をもったことで、人とは少し違う視点をもてたことは誇りにさえ思います。だから、堂々と自分の障害のことを伝えたいのです。だけど、普段障害をもつ人と触れたことのない人の場合、「障害」という言葉を聞いただけで、リアクションに困ってしまうことが多々あります。
 しかし、よく考えてみれば、「趣味」というカテゴリーで考えたときに、周りの人には理解されにくいものを趣味としている人がたくさんいます。だけど、その人たちにとっては、周りの人たちがどう思っても、関係無いのです。なぜなら、それが好きだからです。

 表記の議論ももちろん、大切です。しかし、本人たちが自分を好きになれる環境を作ることが最も重要なのではないのかと思います。「障害があるから、自分を好きになろう」ではなく、「ありのままの自分を好きになろう」。これこそが、色々な壁を取り払っていく、きっかけになるのだと思います。


コメント


「障害」の表記について、私は自閉っこを育てていますが。わが子の説明時には、「障がい」を使っています。
「障がい」という響きには、嫌悪感を持ちますが、今の日本の現状では、障がい児にしないと、必要な支援も、学校で学ぶという権利も保障されていないからです。
南雲さんの「ありのままの自分を好きになろう」
本当に、わが子にもそう思ってほしい。
その為にも、障がい者・児への偏見がひとつでも減ることを、切に願っております。
そして、学校では、特別扱いではなく、個人にあった指導計画が正しい形で、実施あれることを、希望します!決して、障害者は社会の「おにもつ」ではありません。日本に生まれた、大切な命です。健やかに育つことを信じています。


投稿者: 大阪のおばはん | 2010年09月17日 10:12

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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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