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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

心のユニバーサルデザイン

 今回は、ディスレクシアという障害があると、具体的にどんな場所や事で、不自由さを感じているのか、どんな対処をしているのかを、日々の生活を振り返ってご説明させて頂きたいと思います。
 ただ、これは私と今まで出会ったディスレクシアをもつ人の例で、全ての人達に該当するとは限りません。あくまで一例として参考になさってください。

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 まず、車、オートバイ、自転車などに乗る場面では、空間認知が弱い人にとっては、車間距離が上手く取れず、事故に発展してしまう可能性があります。これは、とても、危険です。そして、標識や看板を瞬時に読むことが難しいため、その情報が意味をなさないケースがあります。もちろん、これは、カーナビゲーションシステムを積んでいれば、音声での誘導が可能なので、問題なくなります。しかし、聴覚過敏がある人にとっては、音声がうまく聞き取れず、これもまた意味をなさないケースもあります。

 そして、スーパーマーケットで買い物をする際には、商品説明文、値段が認識しづらく、間違った計算をしてしまう可能性があります。そこで、支援者がそばにいない状況では、認識しやすい表示のものを手に取るのが無難で、ついつい、そちらを選ぶ傾向が強くなります。

 さらに仕事においては、紙媒体でのやり取りは極力なくす方向で進めてはいますが、個人宛の信書等は、常に紙媒体なので、ストレスが多くなります。そんな時には、ルーペ(拡大鏡)を使用します。

 外食においては、どうしても、お店が限定されてしまいます。それは、メニューが文字ばかりだと、読みにくく、注文しにくいからです。ただ、ファミリーレストランのような所だと、写真付きで、指を差すだけで、店員さんが復唱してくれるので、間違いはなくなります。

 近年は、ユニバーサルデザインの視点で考えられている商品が非常に多いです。例えば、移動の際には、駅での電子マネーの使用が可能になりました。これは、学習障害の中の算数障害の人にとっては、ありがたいツールです。いちいち、計算する必要がないからです。そして、駅の路線図も弱視の人や私たちにも認識しやすいような作りになっています。ただし、これは都心の例で、日本全体はまだまだ発展途上だと思います。

 そして、携帯電話、パソコン等のIT技術の進歩によって、手書き、紙媒体でのやり取りが減り、負担が軽減しています。よく「携帯電話の文字は見えるの?」と聞かれることが多いのですが、そのままの状態では読みにくい携帯電話は沢山あります。しかし、文字の拡大機能や見やすいフォントを使っているものもあるので、自分の特性に合わせて選べばストレスはかなり軽減されます。

 このように、最先端の技術を用いることにより、快適な環境ができてくるのは間違いありません。しかし、それが全てではなく、一つのツールです。最も大切なことは、「心のユニバーサルデザイン」であることは、絶対に忘れてはならないことだと思います。ここでのデザインするものは、「人生」です。文化、言語、国籍の違い、老若男女といった差異、障害、能力の違いに関わらず、助け合っていけたらいいなと思います。


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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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