本を出版した理由
私は昨年、一昨年と1年に1冊ずつ、自分の障害に関わる本を出版させて頂きました。1冊目は、『私たち、発達障害と生きてます―出会い、そして再生へ』という、さまざまな発達障害をもつ成人当事者たちの手記集でした。
この本を出したことで、発達障害とはいっても、人によってここまで違いがあるんだと思い知らされました。また、登場したのが成人してから発達障害と判明した方たちばかりで、その間に経験された悪戦苦闘の数々に、「よく、生き続けましたね」と思わないわけにはいきませんでした。そして、「成人してから、自分の発達のバランスの悪さに気づくというのは、ここまで、辛いものなのか」と、自分もその一人として改めて痛感しました。
本に関連して、「文字の読み書きが苦手な人が、どうして、本を書けるの?」というご質問を頂く機会があります。
実は、この本を書くにあたってかなり苦労したのは事実です。書くことは、PCのキーボードをタイピングすることで、カバーできましたが、その作成した文章を読み直すことが、非常に困難でした。もちろん、パソコン上なので、文字を拡大したり、音声読み上げソフトを使用したり、代替手段は知っている限り、使用しました。しかし、決して、それによって、「読み書きがスムーズになる」わけではないのです。少しですが、書きやすく、読みやすくなるだけなのです。
早い段階から、教育や福祉面がこうした代替手段をカバーして頂ければ、もっと代替手段は生きてくると思います。そして、同じような人たちのことをカバーして頂ければ、とても生きやすくなると感じています。
今回そんな中で出版できたのは、出版社の編集担当の方に、自分の障害特性をある程度ご理解頂いた上で、適切なアドバイスをして頂いたことが大きかったと思います。
そして、2冊目の本、『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』では、作家さんによる「口述筆記」という形を取らせて頂き、自分の苦しかった過去を語りました。
正直、まだまだ足りないと思っていますが、教育や社会が「発達障害」を見過ごすことで、本人がどれほどの心の傷を負わねばならないのか? ということを、たくさんの人に考えて頂きたかったのです。そのためには、自分の過去を包み隠さず全て明かす必要がある。子どもたちに私と同じような道をたどってほしくありません。悩むなら、自分の生きづらさやバランスの悪さではなく、自分が描く夢に向かって、悩んでほしい、そんな想いで出した本です。
とはいえ、一口にディスレクシアといっても、何に苦しんでいるかは十人十色です。だからこそ、さまざまな人たちとさまざまな話し合いをして、さまざまな生きづらさをもつ子どもたちの未来について考え、本の出版など様々な形で、これからも発信していきたいと思っています。
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